別に殴るつもりはなかった。
ただカッとなって、自分だけが責められるのが妙に腹が立ったんだ。
…………なんて犯罪者の言い訳みたいに言っても仕方ない。
それに



『俺は東条さんが好きだ………っ』



とか。
言った自分が一番驚いているし、男鹿も信じられないという顔をしていた。

……………俺本当は東条さんのことどう思ってんだろな………
好きか嫌いかなら断然好きだ。だけどそれが恋かと言われると………悩む。
でも東条さんに抱き締められたとき、胸が………心臓が痛かった。
それを言うなら男鹿のときだって心臓が破裂するくらいにドキドキしたけど。


……………やっぱり好きなのかもしれない。

二人、が。



「…………男鹿より俺のが最低じゃん」

俺が殴られりゃ良かったのに。…………もう誰か殴ってくんないかな、マジで。
つーか『友達』が女の子と付き合うのに文句言えねぇよ。
世間ではそれが一般なんだから。それに言う権利だってねーし。
しかも

『俺達はただの友達だろ………?なら口出しすんな』

って言って自分で後悔してんのが一番腹立つ。

「そーだよ…………俺が男鹿に文句言っていいわけねーじゃんか」

いやでもさ、自分だけが一方的に悪いみたいに言われたら誰だって腹ぐらい立つだろ。
つかこんなことでぐだぐだしてるのも正直もう疲れた。
それに………………


「ダメだダメだ!!」

思い出すな俺!!!
どんだけあいつがこっちが勘違いしそうなことしてても男鹿は邦枝先輩と…………!
………邦枝先輩と……………くっついたんだし………



「あーあ…………俺なんでこんなトコいるんだろ」

周りを見渡しても広がるのは緑だけだ。
あとは無駄に図体のデカイおっさんに、色気もクソもないちびっこ悪魔。
いや、最近俺に対してツンデレだから可愛いげはあるんだけど………、俺的にはやっぱ色気が欲しいかなって。
可愛いんだけどなぁ………

「な、何よ」
「んー、別に?早く家に帰りたいつーか帰せ」
「いけませんぞ古市殿。このままでは…………」
「分かってるって!悪魔にやられんだろ?でももういいよ………俺弱いし」

どーせ修行したって強くならないんだから。
それにあの後すぐにおっさんに転送されたから、男鹿と喧嘩してから一回も会えてなくて気まずいまま来た。
正直修行どころじゃない。


「アランドロン、ラミア、帰るぞ 」
「…………でも」
「俺は大丈夫だから気にすんな」

頭を撫でると触らないでよと払い除けられたが、まぁいつも通りの反応。






古市はアランドロンに転送するように言い、戻ってくると、石矢魔の皆が集まっているところを発見した。
皆の視線の先には自分が勝手に作り出した『悪魔野学園』がそこにある。

マジでか。


その後はもう散々だった。
悪魔に遭遇するわ石矢魔の連中に襲われるわで最悪過ぎるし、皆喧嘩強いから俺黙って見てただけだし。
邦枝先輩は良いタイミングで来てくれて悪魔を引き付けてくれたけど、俺的には複雑だし。
まぁ、結局学校は取られたままではあるが聖石矢魔に帰るまで誰も死なずにすんだから、それは良しとしよう。

………それは良しとしても、良しと出来ないこともあった。




「男鹿っ!!ヒルダさんが拐われたって本当かっ!」
「古市」


男鹿の胸ぐらを掴んで責めたら、学校を取られたままだってとこを突かれてさらに言い返した。
ラミアは責任感じて泣き出すし…………ってそりゃそうだよな。
敬愛してたヒルダさんが拐われたってんだから…………

こんな小さいのに頑張ってんだよこいつは。

そう思ったら、男として泣いてる女の子を放っては置けない。
男鹿も何か思ったのかラミアに言おうとすると、ベル坊に先を越された。

「いつもなら真っ先に泣き出してるやつが………」
「――――だな」

「こいつの言う通りだラミア」




「俺達がなんとかする」
「泣くな!!」




ラミアにそう言い放った後、皆の元へ行くときに男鹿と喧嘩していたことを思い出した。
さっきは喧嘩したことなど忘れて、お前が俺を……お前の隣に立つ存在だと肩を並べてくれたことに切なくなる。
対等な存在。
男鹿が許す対等な存在はもう俺以外の人にもいる。

「………………」

早乙女先生が皆をしごくと言っていたが、きっとこういう中で男鹿と他の人達との絆が生まれていく。
それを素直に喜べないのは俺の根性が曲がっているからか………。
皆が盛り上がる中、古市は夜空を見上げ視線を星の彼方に送り泣きそうになった。


「何で………泣きそうになるとあの人の顔を思い浮かべるんだ」

屈託のない笑顔で俺を見てくれる……………東条さん。
男鹿を見るのが切なくて堪らなくなるとき、無性にあなたに会いたくなるのはどうしてなんですか…………?
俺は慰めて欲しいのか、はたまた違う何かを求めているのか自分で明確な答えは出せないけど、東条さんなら俺を満たしてくれる。
そう………感じる。




次の日の昼頃まで特訓は続いていたらしいのだが、ラミアに港まで呼び出しをくらった。
どうやら男鹿をまた修行に連れていくらしいが、男鹿は気を失っているから荷物を代わりにまとめてやって欲しいとのこと。
また修行か…………、と溜め息を吐きながら港まで自転車を飛ばしたら嫌な光景を見てしまった。

港にはデカイ船が付いてて、その入り口付近にラミアと………邦枝先輩がいる。
つまり男鹿と一緒に邦枝先輩も行くということ………それがまた俺をイラつかせた。


「邦枝先輩も一緒…………に修行ですか」
「え、えぇ」
「それがどうかしたの古市」
「何でもない」

なんで邦枝先輩が男鹿と一緒に行くのが当たり前みたいな顔してんだ。
男鹿の隣はずっと俺だったのに。急に横から来て取るなよ。
俺だって一緒に行きたい。

………男鹿の隣で肩を並べることを許されたのは邦枝先輩も同じってこと?
あぁ、嫌だ。




「……………俺も

俺も一緒に行っていいですか」




「…………駄目よ。古市君はここに残って」
「………………そう、ですか」

結構勇気出したのに拒否、ね。


「……俺は邪魔ですか」
「え?」

「俺がいると二人の邪魔になるからですか?そりゃそうですよね、男鹿と邦枝先輩が二人っきりになれるとか滅多にないことだし?誰もいないときにそういうことしとかないとこの先邪魔されそうですもんね」

「ちょっと古市君っ?何言って………」

「邦枝先輩は結局男鹿のこと独占したいんでしょう!?だから前の修行のときも………っ!」


パシン、と乾いた音が響いた。
頬が痛い。

「いい加減にしなさい!」
「………………」


もっと怒って下さい。俺が傷付くように。
そんな顔しないで下さいよ、俺を傷付けることは別にいけないことじゃないんだから。
男鹿を傷付けた分だけ俺も傷付けたい。でも、ちょっと効きすぎたかな。

「あ、ちょっと古市!!!」

胸が痛くて、泣きそうになるから、泣いてしまわないように自転車を必死に漕いで、呼び止めるラミアの声を無視した。





「……………はっ………はっ」

家に着いて自分のベッドに倒れこんだ。
自分の言ったことに自分で傷付いて、視界が歪んでだんだんと涙が滲んでくる。
男鹿と邦枝先輩がまた一緒だという事実が俺を苦しめる。


「最近弱ってたから……かな………

…………涙が止まんねぇ」

目が熱い。頭も痛い。


「少し、寝よ…………」


寝て、起きて目が覚めたら忘れたい。









「…………………ん」

目が自然に開いた。 時計に視線を移すと針は7時を指している。
6時間近く寝ていたようだ。

しばらく頭がぼー…………と視線が中をさ迷うがふと何で寝たんだっけ?と思考を巡らせた。
あぁ…………邦枝先輩に叩かれたんだっけ………?
それはどうして…………


「あぁ…………俺が………あんなこと言った、から」

じんわりと目尻が熱くなる。




「……東条さん……………もう嫌だ」

男鹿なんかより東条さんと一緒にいれば、こんな気持ちになんなくてすんだ?
俺は東条先輩を選べば解放されるのか?
この不安定ですぐに堕ちてしまいそうな気持ちの連鎖から逃げ出せるのか………?
それなら



東条さんは俺が好き。
俺も東条さんが好き。



もうそれだけでいい。他の事実はいらない。



あの日と同じように俺の足は東条さんの家に向かっていて………
行く最中何度も二人のことを思い出しては涙が頬をボロボロと伝い、服に染みを作っていく。

早く東条さんに会いたい。
『好きだ』と言って欲しい。






ピンポーン
チャイムを鳴らすと東条が気だるそうに出てきたが古市の姿を見て驚く。


「はーい…………って古市じゃねぇか。………どうした?」
「……………………」

返答がないため取り合えず部屋に入れて話を聞こうとしたら、古市に遮られた。
肩に古市の細い腕が当てられ、背伸びをしてそのままキスされた。


「……古市?」
「……………………です」
「あ?」

よく聞き取れなかったと言うと、古市は顔を上げて今度ははっきりと言った。





「東条さんが好きです」





色素の薄い瞳が涙を溢れさせ、東条の体に自身の体を寄せた。




「抱いてください」



―――――――――――――――――――――――――――――――

古市が何かもうただの酷い子です。
人間ならではの矛盾を表現しようとしまし・・・・・・あ、嘘ですごめんなさい何も考えずに書いたらこうなった。
次回が最終話?東古がにゃんにゃん・・・・・・するかm
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