*一応付き合ってないおがふる
「……………」
きっとこれも悪魔達の仕業なんだろう。
さっきまで俺と喋っていた男鹿が姿を消し、小さい男鹿が現れたのは。
教室の皆目が点になり固まっているのは当然の反応であり、かくいう俺も一瞬思考が停止した程だ。
まぁ、悪魔の仕業と考えれば納得は出来たのだが。体が小さくなっただけなら特に支障はないだろう。
「ここ、どこだ?」
眉を歪めただ何処にというわけでもなくガンを飛ばす男鹿はまさに中学時代のそれにそっくりで。
まさか、と思った。
「えーっと……もしかして体が小さくなっただけじゃなくて……」
昔の男鹿と今の男鹿が入れ替わってる!!?
古市は信じられないと男鹿を見つめたが、確かに纏っている雰囲気があの頃の男鹿なのだ。
学校内には先生から上級生の不良、周囲の怖がる生徒達と、男鹿には敵だらけで心休まる場所がなく、外に出れば他校生に絡まれる。
安心して警戒心を解くことが出来たのは古市という幼馴染みの前だけだった、あの頃。
おそらく中学入りたてのはずだ。明らかに今も警戒しているし……まぁそりゃそうだけど……!
古市が一人悶々と頭を抱えていると男鹿は辺りを見回し、直ぐ目の前にいる銀髪の男を見つめた。
「お前、古市の兄貴かなんかか?」
「え……」
「古市に似てる」
「似てるっつーか………あのさ男鹿、信じらんねーかもしんねーけど……」
何らかの形で未来に来てしまったことと、男鹿の言う古市と自分は同一人物であることを説明した。
「古市?」
「そ。正真正銘、古市貴之だ。信じたくなきゃ信じなくていい」
「……………古市、か」
男鹿は古市に手を伸ばし一度抱き締めた後、手を取って頬を擦り寄せた。
古市にはその動作にどんな意味が込められているのか分からなかったが、男鹿には古市の存在を確認するには十分だった。
匂い、感触、体温、声。
古市だ。
「古市」
「男鹿?」
中一の男鹿は今よりずっと小さく、今の古市の肩を過ぎる程しかない。
目付きは悪いものの今よりも大きな目とまだ丸い輪郭に幼さが見て取れる。
安心させるように男鹿の髪を撫でていると二人の世界を引き裂くように声が掛かった。
「ふ、ふふ、古市君!こここれって………!!」
「あぁ、多分原因はヒルダさんだと思います」
「へ、へぇ……!やっぱりね!?」
ちゅ、中学の男鹿!!??なんかちょっと可愛いかも……!!
でも、なんだか……今と違って空気が痛い気がするけど……気のせいかしら。
「古市、高校でも一緒なんだな」
「腐れ縁ってやつな」
古市が呆れたように笑うと男鹿は少しだけ顔を歪めたがそれに古市が気づくことはなかった。
後ろから肩を掴まれ視界に入らなかったのだ。
「よ、古市。これ男鹿の弟かなんかか?」
「あー、まぁ……そんなとこッスかね」
問いかける姫川に説明も面倒くさく適当に流す。
少し肩を掴まれ話しただけだったというのに、言葉を交わした次の瞬間には姫川は教室の後ろまで弾き飛ばされていた。
机は綺麗に左右に弾かれ、倒れて道を作り、不良達は呆気に取られている。
誰も言葉が出なかった。姫川は古市に何もしていないし、気に障るようなことも言っていない。
古市は犯人と思われる人物に目をやる。
「……男鹿、なんで殴った?先輩は何もしてないだろ」
「古市に触りやがった」
「触っただけだろ?」
「古市に触っていいのは俺だけだ」
「……男鹿、『俺』と何かあったか?」
男鹿を落ち着かせるために頭を撫でてやると、古市に促されるまま椅子に座った。
周りの人に謝罪するように軽く会釈し、男鹿の話を聞くことにした。
過剰過ぎる男鹿の反応からして中一の自分と何かあったことは明らかだ。
だが男鹿は中々話してくれようとはせず、ただ古市の顔を時折見ては目を反らすを繰り返す。
邦枝を含めたクラスメイトも二人を黙って見守る。
「な、男鹿。言いたくないならいいけど、周りに当たんなっていつも言ってたよな?」
「………………」
「だからいつも喧嘩は売られた時だけで、自分から殴るのはしなかったんだろ?」
「………………」
「俺との約束、何で破ったか教えて欲しいんだ」
説教ではなく優しく説く古市の責めない眼差しに男鹿は顔の緊張を緩めた。
中性的な声が心臓までゆっくりと浸透し、心地好くて古市の説教ならいつまでも聞いていたくなる。
男鹿は気まずそうに古市に目を止めたかと思うと、とんでもないことを言ってくれた。
「古市、は……俺のこと好きか?」
「え、……え!?や、好きって!そんな!なんでそんなこと………っ!」
質問の意図が分からず何と答えるべきか思考していると、男鹿があまりに情けない顔をするから、古市はバツが悪くなる。
そうだった。この頃の男鹿は『古市』のすること一つ一つに一喜一憂していた。
後から思い返せばかなり執着されていた気がするが、当時の自分はそれに気付いていない。
きっとこの質問は男鹿にとって重要で大事なものなのだろう。
「………好きだよ」
照れ臭いが言葉に出せば男鹿は嬉しそうに目を細めて古市を見る。
そして古市は付け加えた。
「ダチなんだから当たり前だろ」
「…俺も……古市が好きだ。だから………」
「?」
小首を傾げる古市に話した。
中学の古市と何があったか。
「俺はただ古市に『俺とばっかいなくても他の奴のとこいけばいーじゃん』って言っただけだ」
「うん」
「古市が俺とばっか居ても怪我するだけだから、そう言った。そしたら古市の奴、いきなりキレてそっからずっと俺を無視してやがる」
男鹿が言いたいことは分かる。
大切だからこそ改めて選んで欲しくて、笑い飛ばして自分を選んでくれることを信じて聞いた。
ただ確かめたかっただけなのに相手は怒り始めてケンカになって訳分かんないままこっちに来た。
「男鹿は何で相手が怒ってるか、分かるか?」
「……分かんねー」
「それを教えんのはフェアじゃないから言わないけど、一つだけヒント」
「?」
柔らかい猫っ毛を指に絡めた。
「男鹿のこと、好きだからだ」
「???」
「好きだから怒ったんだ」
そう笑った古市に男鹿はまた訳が分からなくなる。
好きなら自分を選べば良かった話で、怒らせる理由がないと。
「帰ったら俺に謝って素直な気持ち、言ってやれよ。それで仲直り出来っから」
「……本当か?」
「おう」
二人のやり取りを黙って見ていた面々は感嘆の息ばかりを洩らした。
今より遥かに鋭く、自分でも感情を抑制出来ないような男鹿をいとも簡単に宥める古市に対して。
周囲に敵意を剥き出しにしていても古市の前ではああも柔らかい空気になれるのかと。
男鹿にとって安心して自身を出せれるのは古市の前だけで、古市だけが特別。
元々分かっていたことだがこうもあからさまにされると、見ている側としては何となく申し訳なくなる。
「なんか……俺の知ってる古市は可愛いけど、デケー古市は綺麗だな」
「そーか?」
「……古市」
「え、ちょっ……………」
男鹿がニッと笑い、胸ぐらを掴まれたかと思うと急に引き寄せられ互いの顔が近くなる。
反射的に男鹿の口を手で塞ぐが、勢いに押されるまま自分の手の甲にキスしていた。
これも一種の間接キスになるのだろうか。教室の空気が凍っているのは気のせいだと思いたい。
その時、手に生暖かいぬるりとした感触が滑った。
「んなっ、な、ななな……舐め!?」
古市が急な出来事に対応しきれてないのを良いことに、舌を手の平に這わせる。
口を離し、嫌な笑みを浮かべる男を殴ってやりたい。
慌てて引っ込められた手首を掴み、引くと今度は手の平に自ら口を寄せた。
「……っ…………!!」
古市の顔はみるみる温度を上昇させ、何か言ってやろうと口を開いた瞬間だった。
目の前に居た小さな男鹿の姿はなくなり、代わりに元の男鹿が至近距離で現れた。
「う、うわああああああああ!!!!」
そして気が付くと驚きとさっきまで手にキスされていた気恥ずかしさで、目の前の男を殴っていた。
あぁ、だからほら、明らかに怒ってるよ。
「ふっるーいっちくーん?いきなり何してくれちゃってんのかな?」
「ははは……………つい、な」
「ついじゃねーよ、ついじゃ」
「いだだだだだだだっっ!!!!」
古市の顔を思いきり引っ張る男鹿は怒りながらもどこかご機嫌だ。
ようやく離されると頬は赤く腫れ、ジンジンと痛い。
その様子を嬉々と眺め、今度は逆に捻った部位を親指の腹で撫で始めた。
「?なんか気持ち悪ぃぞ、お前」
「ほほーう。古市君はまた捻られたいのかな」
「いや、遠慮しとくわ。……つーかさ、もしかして向こうの俺と会った?」
もしや、と聞くと男鹿は驚いた顔をしたが得意気にニヤつく。
なんだその顔は。
「中学の古市はめちゃくちゃ可愛かったぞ」
「男鹿は全く可愛くなかったけどな!つーか何であんな………ただのマセガキじゃねーか」
「は?なにお前何かされたわけ?」
「や、別にされたっつーか何つーか……ってお前にはカンケーねぇだろ」
「ふーん?お前そんなこと言っていいわけ?」
「な、何が?」
男鹿はまた嫌な笑みを浮かべ目を細めると古市の耳に唇を寄せ、低く囁いた。
「本当は俺のこと大好きなくせに」
「っっ!!!」
顔を耳まで赤く染め、男鹿の顔を見ると楽しそうにニヤニヤと笑っている。
恥ずかしい、恥ずかしい。明らかに過去の自分が知らずに余計なことを言ってしまった以外考えられない。
何を余計なことを言ってくれたんだ!!
自分で言うのもアレだがさっき小さい男鹿に言われたことを、恥ずかしさを誤魔化すため突きつける。
「お、お前だって俺のこと好きなくせに!!」
俺ばっか恥ずかしいとかやってられっか!と言ってやったのに、当の男鹿は照れるでもなくあっさりと言ってのけた。
「そんなん、今更だろ」
「……っ……っ」
本当に当たり前のように、似合わないくらい優しい顔で言われ、嬉しくない訳がない。
でも素直にはいそーですかと言えるわけもなくて。
嬉しいのと恥ずかしいので頭が埋められていても素直になれない。
「ばっ……バーカ!!男鹿バーカ!!お前なんか大嫌いだバカヤロー!!!!」
真っ赤になって廊下に走り去っていく古市の姿にまた愛しくなるが、戻ってきた後また言ってやろう。
未来永劫、世界で一番好きだ、と。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
本誌のおがふるに焚きつけられたとしか言えません。
本誌のおがふるとは全く関係ないんですがね;書いてて楽しすぎました!!
中学生がショタというのかと言われればきっと言わないんでしょうが、
中学一年のおがふるなんてショタですよ。
男鹿sideに続きます
「……………」
きっとこれも悪魔達の仕業なんだろう。
さっきまで俺と喋っていた男鹿が姿を消し、小さい男鹿が現れたのは。
教室の皆目が点になり固まっているのは当然の反応であり、かくいう俺も一瞬思考が停止した程だ。
まぁ、悪魔の仕業と考えれば納得は出来たのだが。体が小さくなっただけなら特に支障はないだろう。
「ここ、どこだ?」
眉を歪めただ何処にというわけでもなくガンを飛ばす男鹿はまさに中学時代のそれにそっくりで。
まさか、と思った。
「えーっと……もしかして体が小さくなっただけじゃなくて……」
昔の男鹿と今の男鹿が入れ替わってる!!?
古市は信じられないと男鹿を見つめたが、確かに纏っている雰囲気があの頃の男鹿なのだ。
学校内には先生から上級生の不良、周囲の怖がる生徒達と、男鹿には敵だらけで心休まる場所がなく、外に出れば他校生に絡まれる。
安心して警戒心を解くことが出来たのは古市という幼馴染みの前だけだった、あの頃。
おそらく中学入りたてのはずだ。明らかに今も警戒しているし……まぁそりゃそうだけど……!
古市が一人悶々と頭を抱えていると男鹿は辺りを見回し、直ぐ目の前にいる銀髪の男を見つめた。
「お前、古市の兄貴かなんかか?」
「え……」
「古市に似てる」
「似てるっつーか………あのさ男鹿、信じらんねーかもしんねーけど……」
何らかの形で未来に来てしまったことと、男鹿の言う古市と自分は同一人物であることを説明した。
「古市?」
「そ。正真正銘、古市貴之だ。信じたくなきゃ信じなくていい」
「……………古市、か」
男鹿は古市に手を伸ばし一度抱き締めた後、手を取って頬を擦り寄せた。
古市にはその動作にどんな意味が込められているのか分からなかったが、男鹿には古市の存在を確認するには十分だった。
匂い、感触、体温、声。
古市だ。
「古市」
「男鹿?」
中一の男鹿は今よりずっと小さく、今の古市の肩を過ぎる程しかない。
目付きは悪いものの今よりも大きな目とまだ丸い輪郭に幼さが見て取れる。
安心させるように男鹿の髪を撫でていると二人の世界を引き裂くように声が掛かった。
「ふ、ふふ、古市君!こここれって………!!」
「あぁ、多分原因はヒルダさんだと思います」
「へ、へぇ……!やっぱりね!?」
ちゅ、中学の男鹿!!??なんかちょっと可愛いかも……!!
でも、なんだか……今と違って空気が痛い気がするけど……気のせいかしら。
「古市、高校でも一緒なんだな」
「腐れ縁ってやつな」
古市が呆れたように笑うと男鹿は少しだけ顔を歪めたがそれに古市が気づくことはなかった。
後ろから肩を掴まれ視界に入らなかったのだ。
「よ、古市。これ男鹿の弟かなんかか?」
「あー、まぁ……そんなとこッスかね」
問いかける姫川に説明も面倒くさく適当に流す。
少し肩を掴まれ話しただけだったというのに、言葉を交わした次の瞬間には姫川は教室の後ろまで弾き飛ばされていた。
机は綺麗に左右に弾かれ、倒れて道を作り、不良達は呆気に取られている。
誰も言葉が出なかった。姫川は古市に何もしていないし、気に障るようなことも言っていない。
古市は犯人と思われる人物に目をやる。
「……男鹿、なんで殴った?先輩は何もしてないだろ」
「古市に触りやがった」
「触っただけだろ?」
「古市に触っていいのは俺だけだ」
「……男鹿、『俺』と何かあったか?」
男鹿を落ち着かせるために頭を撫でてやると、古市に促されるまま椅子に座った。
周りの人に謝罪するように軽く会釈し、男鹿の話を聞くことにした。
過剰過ぎる男鹿の反応からして中一の自分と何かあったことは明らかだ。
だが男鹿は中々話してくれようとはせず、ただ古市の顔を時折見ては目を反らすを繰り返す。
邦枝を含めたクラスメイトも二人を黙って見守る。
「な、男鹿。言いたくないならいいけど、周りに当たんなっていつも言ってたよな?」
「………………」
「だからいつも喧嘩は売られた時だけで、自分から殴るのはしなかったんだろ?」
「………………」
「俺との約束、何で破ったか教えて欲しいんだ」
説教ではなく優しく説く古市の責めない眼差しに男鹿は顔の緊張を緩めた。
中性的な声が心臓までゆっくりと浸透し、心地好くて古市の説教ならいつまでも聞いていたくなる。
男鹿は気まずそうに古市に目を止めたかと思うと、とんでもないことを言ってくれた。
「古市、は……俺のこと好きか?」
「え、……え!?や、好きって!そんな!なんでそんなこと………っ!」
質問の意図が分からず何と答えるべきか思考していると、男鹿があまりに情けない顔をするから、古市はバツが悪くなる。
そうだった。この頃の男鹿は『古市』のすること一つ一つに一喜一憂していた。
後から思い返せばかなり執着されていた気がするが、当時の自分はそれに気付いていない。
きっとこの質問は男鹿にとって重要で大事なものなのだろう。
「………好きだよ」
照れ臭いが言葉に出せば男鹿は嬉しそうに目を細めて古市を見る。
そして古市は付け加えた。
「ダチなんだから当たり前だろ」
「…俺も……古市が好きだ。だから………」
「?」
小首を傾げる古市に話した。
中学の古市と何があったか。
「俺はただ古市に『俺とばっかいなくても他の奴のとこいけばいーじゃん』って言っただけだ」
「うん」
「古市が俺とばっか居ても怪我するだけだから、そう言った。そしたら古市の奴、いきなりキレてそっからずっと俺を無視してやがる」
男鹿が言いたいことは分かる。
大切だからこそ改めて選んで欲しくて、笑い飛ばして自分を選んでくれることを信じて聞いた。
ただ確かめたかっただけなのに相手は怒り始めてケンカになって訳分かんないままこっちに来た。
「男鹿は何で相手が怒ってるか、分かるか?」
「……分かんねー」
「それを教えんのはフェアじゃないから言わないけど、一つだけヒント」
「?」
柔らかい猫っ毛を指に絡めた。
「男鹿のこと、好きだからだ」
「???」
「好きだから怒ったんだ」
そう笑った古市に男鹿はまた訳が分からなくなる。
好きなら自分を選べば良かった話で、怒らせる理由がないと。
「帰ったら俺に謝って素直な気持ち、言ってやれよ。それで仲直り出来っから」
「……本当か?」
「おう」
二人のやり取りを黙って見ていた面々は感嘆の息ばかりを洩らした。
今より遥かに鋭く、自分でも感情を抑制出来ないような男鹿をいとも簡単に宥める古市に対して。
周囲に敵意を剥き出しにしていても古市の前ではああも柔らかい空気になれるのかと。
男鹿にとって安心して自身を出せれるのは古市の前だけで、古市だけが特別。
元々分かっていたことだがこうもあからさまにされると、見ている側としては何となく申し訳なくなる。
「なんか……俺の知ってる古市は可愛いけど、デケー古市は綺麗だな」
「そーか?」
「……古市」
「え、ちょっ……………」
男鹿がニッと笑い、胸ぐらを掴まれたかと思うと急に引き寄せられ互いの顔が近くなる。
反射的に男鹿の口を手で塞ぐが、勢いに押されるまま自分の手の甲にキスしていた。
これも一種の間接キスになるのだろうか。教室の空気が凍っているのは気のせいだと思いたい。
その時、手に生暖かいぬるりとした感触が滑った。
「んなっ、な、ななな……舐め!?」
古市が急な出来事に対応しきれてないのを良いことに、舌を手の平に這わせる。
口を離し、嫌な笑みを浮かべる男を殴ってやりたい。
慌てて引っ込められた手首を掴み、引くと今度は手の平に自ら口を寄せた。
「……っ…………!!」
古市の顔はみるみる温度を上昇させ、何か言ってやろうと口を開いた瞬間だった。
目の前に居た小さな男鹿の姿はなくなり、代わりに元の男鹿が至近距離で現れた。
「う、うわああああああああ!!!!」
そして気が付くと驚きとさっきまで手にキスされていた気恥ずかしさで、目の前の男を殴っていた。
あぁ、だからほら、明らかに怒ってるよ。
「ふっるーいっちくーん?いきなり何してくれちゃってんのかな?」
「ははは……………つい、な」
「ついじゃねーよ、ついじゃ」
「いだだだだだだだっっ!!!!」
古市の顔を思いきり引っ張る男鹿は怒りながらもどこかご機嫌だ。
ようやく離されると頬は赤く腫れ、ジンジンと痛い。
その様子を嬉々と眺め、今度は逆に捻った部位を親指の腹で撫で始めた。
「?なんか気持ち悪ぃぞ、お前」
「ほほーう。古市君はまた捻られたいのかな」
「いや、遠慮しとくわ。……つーかさ、もしかして向こうの俺と会った?」
もしや、と聞くと男鹿は驚いた顔をしたが得意気にニヤつく。
なんだその顔は。
「中学の古市はめちゃくちゃ可愛かったぞ」
「男鹿は全く可愛くなかったけどな!つーか何であんな………ただのマセガキじゃねーか」
「は?なにお前何かされたわけ?」
「や、別にされたっつーか何つーか……ってお前にはカンケーねぇだろ」
「ふーん?お前そんなこと言っていいわけ?」
「な、何が?」
男鹿はまた嫌な笑みを浮かべ目を細めると古市の耳に唇を寄せ、低く囁いた。
「本当は俺のこと大好きなくせに」
「っっ!!!」
顔を耳まで赤く染め、男鹿の顔を見ると楽しそうにニヤニヤと笑っている。
恥ずかしい、恥ずかしい。明らかに過去の自分が知らずに余計なことを言ってしまった以外考えられない。
何を余計なことを言ってくれたんだ!!
自分で言うのもアレだがさっき小さい男鹿に言われたことを、恥ずかしさを誤魔化すため突きつける。
「お、お前だって俺のこと好きなくせに!!」
俺ばっか恥ずかしいとかやってられっか!と言ってやったのに、当の男鹿は照れるでもなくあっさりと言ってのけた。
「そんなん、今更だろ」
「……っ……っ」
本当に当たり前のように、似合わないくらい優しい顔で言われ、嬉しくない訳がない。
でも素直にはいそーですかと言えるわけもなくて。
嬉しいのと恥ずかしいので頭が埋められていても素直になれない。
「ばっ……バーカ!!男鹿バーカ!!お前なんか大嫌いだバカヤロー!!!!」
真っ赤になって廊下に走り去っていく古市の姿にまた愛しくなるが、戻ってきた後また言ってやろう。
未来永劫、世界で一番好きだ、と。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
本誌のおがふるに焚きつけられたとしか言えません。
本誌のおがふるとは全く関係ないんですがね;書いてて楽しすぎました!!
中学生がショタというのかと言われればきっと言わないんでしょうが、
中学一年のおがふるなんてショタですよ。
男鹿sideに続きます
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