男鹿に押し倒されて頭の中が真っ白になってる。
見下ろしてくる真剣で焦っているような表情に古市は動けない。

「なぁ……古市、ダメか?」
「……………」

この意味が分からないわけじゃない。でも、言葉が出てこない。
今まで触れ合うだけのキスも深く混じり合わせるキスだって何度もしてきた。
付き合い始めて半年、キスしかしてこなかったが、やはりそれ以上のことだって視野にいれていた。
おそらく自分が女役であるということも。自身の心の準備だってしてきた………はずだった。
なのに今、現実に直面して動けない。怖い。

「古市」
「お、が」

男鹿が古市にキスしようと顔を近付けると古市は強く瞼を閉じた。
明らかに怯えている古市に男鹿は困惑し、抱き締めた。

「……すまん」
「………………」
「でも、したい」
「そ、なこと………言われても…」

耳元で熱の籠った声で訴えられ、古市はどうすればいいか分からない。

「イヤか?」
「……イヤじゃないけど、怖い」
「絶対優しくする」
「そういう問題じゃないっつか………えと」
「なに」


男鹿は分かってない。同性と身体を繋げるってことはキスとは全く別次元の問題だ。
確かに男鹿と身体を繋げたいって気持ちがないわけじゃない。
でも男として女役に回るのはそれなりの勇気がいる。今は………まだ怖い。
だから


「ごめん。まだ………その」
「………そーか」
「…………」

そっと古市の上から下りた男鹿は隣に転び、古市を抱き込んだ。

「…………寝るか」
「………ごめん」

申し訳なくて、自分が情けなくなる。
それでも自分の意思を尊重してくれた男鹿にまたときめいているのが本当に嫌だ。

「なーに泣いてんだ」
「泣いてねぇ」
「んじゃ涙目」
「…………………」
「悪かったっつの。焦りすぎた」

古市を安心させるように軽くキスを落とした。


男鹿は悪くない、何も。俺が意気地無しだから。
男鹿だって淡白であるとはいえ性欲くらいあるし、好きな奴が傍にいるってのに欲情しない方が変だ。
それを分かっていても一歩踏み出せない。





【数週間後】


「なんか………おかしい、よな」


最近男鹿が何もしてこない。
キスくらいはするがここ数週間触れ合うだけのキスしかしてない。
いつもなら部屋で二人きりになった途端深く深く重ねる唇も久しくない。
体をまさぐってくることもなくなって、あんなに怖かったのに今は少し寂しい。
身体を繋げるのは怖い、でも男鹿に触れられていたい。
そんなの言えるわけないし、どう考えても俺のエゴだ。


「古市?すげー顔してんぞ」
「あー…………いや、ほっとけ」
「つか顔赤ぇ」

顔に男鹿の大きな手が触れた瞬間、瞳が揺れた。
色めいた薄い瞳に胸が熱くなり、咄嗟に手を離して少し距離を取ろうとしたのに古市は自らその手を掴んだ。
驚いている男鹿に抱きつけば、勿論嫌がるわけでもなく緩く抱き返した行動に安心する。

「なぁ……何で最近触んねーの。ヤれないからもう俺のこと興味なくなった……?」

それを肯定してしまえば古市と付き合っていたのは正しく『体目当て』になってしまう。
男鹿がそんな奴じゃないことは知っているが、古市は男鹿の今の正直な気持ちが知りたい。

「お前が……怖いっつーから………」
「?」
「古市に触って俺だけヤりたくなって、理性利かなくなって襲ったらどーすんだ」
「それは………頑張る」
「俺に勝てるわけねーだろ。言っとくけどマス掻き合いっことかねーから」

つかマス掻くだけで終われる自信がねぇ。
古市に触られてるってだけで下半身に直撃だっつーのに……どう考えても気持ち良さそーな古市見たら押し倒すに決まってら。
それをコイツは全く分かってねぇし無自覚だし、だから極力キス以外で触んねーようにしてんのに。
マジ分かってねぇ。


「そりゃ分かってるけど………」
「いや分かってねーよ」
「俺だって男だしその気持ちは分からんでもない」
「………ふーん」

男鹿の態度に殴ってやりたくなる所を耐え、代わりに耳にキスしてやった。
男鹿こそ何も分かってない。急に態度変えられて不安になってる俺のこと、何も。

「怖いのは当たり前だろ。………でも、お前に触られないのは……寂しいんだから仕方ねーじゃん」
「…………古市、お前普段絶対そういうこと言わねぇくせに……」


しかもこの状況で言われても何も出来ねーって……………!!
どんな地獄だよ!!
古市に触りたい、触って、この腕で抱きたい。
お互いの熱を分かち合いたい。

気が付けば手は勝手に細い肩を掴んでいて、ベッドに押し倒していた。
古市の身体が緊張しているのが分かる。
けど、抵抗するでもなく大人しく男鹿に組み敷かれている事実を受け入れる姿に怒りが芽生える。

「……男鹿?…………っ!」
「………………」

片手で細い両手をまとめ古市の頭上に縫い付け、動きを封じた。
ほら、こんな簡単に捕まえられんのに逃げれるわけないだろ……バカ古市。

「両手で片手の俺に敵わねぇのに、いざってときどーすんだ」

真上から見下ろしてくる、明らかに怒っている男鹿を見上げながら、何故か古市は鼓動が高鳴る。
今にも襲いかかりそうな瞳に何かを期待してしまう。


「今なら俺…………男鹿になら抱かれてもいいとか……思っちまった」
「は?」


顔が引きつる。
こいつはバカか、バカなのか!!?お前今抵抗出来ねんだぞ!?
嫌がってももう後戻りとか出来ねんだぞ!?


「あーでもうん。やっぱ怖い」


どっちだあああああああああ!!!!!!!


「古市……テメェいつからそんな小悪魔になりやがった……!」
「は?」

散々振り回しやがって悪魔よりひでぇ小悪魔っつか魔性の男だな!
んで俺は結局手ぇ出せねっていうな!!
断じてヘタレじゃねぇけど、でも古市が嫌がってんのに無理矢理するわけにはいかねーし。

「そんな目で見上げてくんな……!」
「お前さっきから意味分かんねー………。んで?結局ヤんの?」

「ヤんねーよ!!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

力的な意味では主導権男鹿にあるっぽいけど、実際は無自覚小悪魔ちゃんな古市が持ってる話。
お互い知らない内に主導権が古市に渡っているといいなww
正直古市はヤる時は男鹿よりも男前な気がする。
そしていかにもヤる未満な高校生な感じの初々しい男鹿古が大好きです。
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