*高校卒業捏造






石矢魔高校卒業式。
不良といえどもやはりこの高校に相当思い入れがあるのか、号泣している奴は少なくない。
珍しく何事もなく卒業式を終えて男鹿と古市も賑わう校庭を見渡した。

「なんかさ…………あっという間だったな」
「ん?」

何がだ?と首を傾げる男鹿に古市は呆れたように笑う。

「高校生活短かったなって」
「……そー、かもな」


高校に入ったばかりの春、川から流れてきたベル坊を拾ってヒルダさんが来て。
実は二人とも悪魔で。
男鹿はいつの間にか魔王の親にならないといけなくなって。
ベル坊を人に押し付けようとしながらも色んなこと教えて随分父親らしくなった。
今はもう二人は魔界に帰ってしまったけど、あの怒濤の日々は忘れようにも忘れられない。


「な、ちょっと校内見て回んね?」
「おう」

高校生活最後の締めくくりとして一度改めて見たくなった。
この学校の中に詰まった思い出を。
二人は一緒に歩きながら特に話すこともなく、ただ中をじっくりと眺めて回る。
壁に描かれた不良らしいラクガキやキズも今では愛しく感じた。

一通り校舎を回った後二人の足は自然と同じ場所に進められ階段を上がっていく。


「――――――………やっぱここだよな」


教室のドアよりも少し重い鉄の扉をギ、と開けば青空が広がり気持ちの良い風が吹いている。
屋上はよく二人が好んで来た場所であり、男鹿がベル坊のことを打ち明けた最初の場。
男鹿はフェンスにもたれ、古市はフェンスに腕を組んで上から皆を眺めた。

「お前がここでベル坊のこと初めて喋ったときマジでビックリした」
「そーか」
「あーあ、あのせいで俺まで巻き込まれるし命まで狙われるしでマジ悲惨だったわ」
「お前を巻き込まなきゃ誰巻き添えにすんだ」

「お前、マジ最悪………っ……」

いつもの調子で思い出話をしていたはずの古市の声は段々と小さくなり、心なしか震えているような気がする。
男鹿が古市の顔を覗きこもうとすると、古市は顔を見られまいと男鹿の肩口に顔を埋め、学ランをギュ、と握った。
古市のこの状況を珍しく察した男鹿はきっと家族ですら見たことのない、穏やかな笑みを浮かべて古市の肩に腕を回した。

「なーに泣いてんだ」
「……うっせ……っ、………俺はお前とは違って感情豊かだから…………うっ………、こーいうのには弱いんだっつの!」


三年間過ごしてきた思い出の詰まった校舎を眺めて頭の中で思ったことは、何だかんだ言っても楽しかったこと。
確かに色々ゴタゴタはあったし、危険な目にもたくさんあってきた。

だけどやっぱり楽しかった。


高校受験の時、受かっていた第一志望高に男鹿のせいで行けなくなった。
その時は煮え切らない気持ちとまた男鹿と一緒に通えるという気持ちが攻めぎあっていた。
確かに有名な進学校に行った方が将来のためにはなる。
でも三年間ここで過ごしてきて思った。

石矢魔で良かったって。



「男鹿………俺、石矢魔来て良かった」

「………………古市、」

男鹿は古市の肩に腕を回したまま何を思ったのかそっと耳元に口を寄せて囁いた。




「好きだ」


と。


「…………っ!?……っ…………っ!!??」
古市は突然の告白に男鹿を見上げ、口をパクパクと開けたり閉じたりを繰り返し、瞳を目一杯開く。

「……………!」
男鹿の穏やかな嬉しそうな顔に、古市はさらに溢れる涙を抑えるように口を噛み締めた。
それでも涙は止まらずに頬を伝い、服に染みを広げていく。
堪らずにまた男鹿の肩口に顔を押し付けると今度は抱き締められた。

「お前最悪………、ほんっと性格悪ぃ」
「…………」
「フツー、人が涙腺緩んでるときに……そーいうこと言うか………っ?」

耳まで真っ赤に染め上げている古市を愛しげに見詰める。


「しか、もっ………、全然脈絡もないしっ、マジありえねぇ…………!」
「なんかムショーに言いたくなったんだから仕方ねぇだろ」
「意味、わかんねぇからソレ………」

声と同じくらい体も震えていて鼓動が服越しに伝わってきそうだ。

「古市は?」
「な、なに」
「返事、欲しいんだけど」

そう言うと古市はさらに赤くなったが、本当に小さな声で応えてくれた。





お前が俺を好きなのに

俺がお前を好きじゃないわけないだろ





肩口に湿った感触を感じながら、古市をさらに強く抱き締めた。

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私の学校の卒業式(私は在校生でした)の長い話聞いてた最中にずっと考えてたものです
卒業ネタ美味しいです。
卒業式で初めてくっつく男鹿古も愛しくて困ります。
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