最悪だ。
この知将古市が風邪を引くなんて。

まぁ休日だったのが救いだが。
俺が学校を休めば100%男鹿は学校をサボってまで俺のところに来る。
そんな面倒くさい事態は避けたい。

しかし今日は休日。
俺が風邪を引いても男鹿にはバレない。
はずだった。


「な・ん・で!お前がここに居るのかな~?」
「お前風邪なんだってな!」
呑気な笑顔を潰したくなるが俺じゃムリなのが悔しい。

「なんで居んだって聞いてるんだけど?」
「お前のお袋に看病頼まれたから?」
「はぁ?」
「なんか出掛けるらしくてな。古市1人じゃ心配だからって」

いやいやいや!
小学生のガキじゃねぇんだから!むしろ男鹿がいるほうが心配だろ!?
何考えてんだよ、母さん!

「ほら、寝とけって!」
ベッドに投げられる。

病人に対してその態度はなんだ!だいたい男鹿に看病なんて出来るわけ……な、い?


男鹿の顔が超どアップ。

「ちっ、近っ!!!!っだ!!?」
壁側に一気後退すると思い切り頭を壁にぶつけた。

「熱測ってやっただけじゃねーか。んなビビんなよ」
「あ………熱、ね」

押し付けられたおでこに熱が集まる。
触れたところが熱い。

「い、今時おでことおでこくっ付けて測るとかねーだろ」
「んー?そうか?」
「そーだよ」

そんな恥ずかしいコト。
お前ぐらいだよ……なんの恥ずかしげもなくすんのなんか。

「ま、熱あるみたいだし寝とけ」
「…………お前は?」
「ここに居るけど」

古市に毛布をかけながらいつも通り、てきとうに答える。
ベッドに転がる古市を見てふと思い出した。

「そういや古市、薬は?」
「……………」

目を反らす。
つまり、飲んでいないということだ。

「勝手に漁るぞ。探してくっから待ってろ」
「おぅ」

下に降りていく男鹿を見ながら、いつもより何故かドキドキした。多分、優しいから。
看病されるのも悪くないかもしれない。
いつもとは少し違う男鹿。

「…………ぁ」
階段を上がってくる音がする。

「ほら、水まで持ってきてやったんだ。飲め」
「…………」

薬はよりによって俺が嫌いな漢方薬だった。
最悪。

「他には無かったのかよ」
「多分」
「…………飲みたくない」
「飲め」

上体を起こされ、薬と水を突き付けられる。
男鹿には逆らえない。
どうせ嫌がっても無理やり飲まされるんだ。

「ん………く」

苦い。
マジ最悪。

飲み干すと、男鹿は古市の手からコップと薬の袋を受け取って机の上に置いた。
それから古市が転ぶベッドに乗り上げる。

「ちょ、男鹿?」
男鹿はなんの前振れもなく古市に唇を重ねた。

「っ、…………な、に」
喋りかけようとした空間に舌が入り込む。

「んっ、ん……………ふ」
長く貪られるのかと身構えたが、すぐに離れた。

「口直し、な」
「……ばっかじゃねーの」

憎まれ口も照れ隠しなのが分かっているため、男鹿の機嫌が良い。むかつく。

「古市」

軽く抱き締める。
古市は抵抗しない。

「早く治せ。お前が学校来ねーとつまんねぇだろ」

それ、明日までにってことか。
ムリじゃね?

「東条とかいんじゃん」
別に俺が居なくたって。


「アホか、お前がいるから何してる時でも楽しいんだろが」


「古市が居ねぇんじゃ、学校行く意味なんかねーよ」


「それにな、お前と一緒じゃねーと俺、ムリ」


そんな恥ずかしいことを淡々と言われるこっちの身にもなれ!

でも、そんなことを言われるのが嫌じゃない。


「も、明日までに治すから……やめろ。………恥ずかしい」
「早く治せよ。心配する」
「デーモンのくせに」

「何言ってんだ。紳士だろ」

「…………」

否定出来ないのが悔しい。
そうだよ、お前はめちゃくちゃ紳士だ。
かなり天然だけど。


「手、繋げ」
俺の精一杯の素直。
それなのに、お前は。

「それだけでいいのか?今なら添い寝サービスもつくけど」

「……………////」

古市は無言で身体を奥に詰めた。空けられたスペースに男鹿が入る。

「あっ………」
「手だけとか、せこいこと言ってんな」

ベッドの中でも軽く古市の身体に腕を回して引き寄せる。

「……………ありがと」
「…………もう寝ろ」


「……………ん、おやすみ」


古市はすぐに眠りに落ちた。
男鹿も規則的な寝息につられて寝入る。






次の日、男鹿のおかげか知らないが古市の風邪はきれいさっぱり治っていた。

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