『ここじゃなきゃいや』
前見たドラマでそんなことをヒロインの少女が言っていた。
デートの帰りに人通りが少なくなった道を通る。
そして彼氏の方からその少女に向かって言う。
『帰り、俺ん家来ねぇ?』
『何で?』
『や、その………キスしたい』
『………ふーん』
彼氏の様子を見るに、キスだけで終わるとは思えなかった。
下心が見える彼氏に少女が言った言葉がこれだ。
『別にいいけど、ここじゃなきゃいや』
『……………………分かった』
下心を察知した彼女に気付いた彼氏は無理矢理というわけにもいかず、諦めてそこでキスだけして家に帰った。
俺はそれを見たとき勘の鋭い彼女を持つと大変だな、というぐらいだった。
しかし俺は今それと同じ状況に立たされている。
残念ながらポジションはあの可愛らしい少女側だ。
まぁ、違うところがあるとすればデートの帰り道ではなく学校帰りで、男同士っていうとこだ。
「なぁ、俺ん家来ねーの?」
「………………」
お前いっつも所構わずキスしてくるクセに今更気にすんの不自然すぎんだろ。
ヤりてんなら素直にそう言えよ。
ま、言われても絶対しねーけど。
でももし俺があの少女のようなことを言ったらどうだろうか。
俺はそれを実行に移した。
「なあ、」
男鹿がまた声をかけてくる。
「……………別にいいけど」
「ここじゃなきゃいや」
「!」
「…………………」
反応がない。
あれ?
そういえばアレは彼女も彼氏も勘が働く、頭の良いカップルの話だったような…………
え。
つーことはまさか………っ?
「おっ、男鹿!ち、違うぞ!?」
男鹿の顔を見ると、無駄に爽やかなイイ笑顔をしていた。
「いいぞ、古市!よし、今すぐヤるぞ!」
ジリジリとにじり寄ってくる男鹿に後退する。
「ちげーしっ!つーかキスはどうした!何でいきなりヤることになってんだよ!?」
壁に追い詰められた。
逃げ場がない。
「おっ、男鹿!止めっ……ふっ、!?」
唇が触れると同時に舌が入りこんでくる。
「ん゛っん~~~~~~っっ!!」
男鹿の胸を叩いて抵抗するが男鹿にとっては古市の抵抗なんて可愛いものでしかない。
「んっ、まじで、……待てっ!」
顔を反らして男鹿から逃れる。
「んだよ」
あぁ………、これはもう出遅れだ。
眼がいつもねアホっぽい眼じゃない。
明らかにそういうときのソレだ。
「やっぱ………家、行く」
「それなら最初っから素直に来いよ」
「………………」
殺してやろうかコイツ。
まぁ外でっていうのは免れたから、目を瞑ってやろう。
そして男鹿家に到着した後は文字通り古市は体を張ることになるのだが。
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