俺は伊月くんが好きだ。一目惚れに近いかもしれない。
伊月くんは男にしては美人で優しくてちょっと残念なとこもあるけどそれも愛しい。
そんな彼を相手に望みはないと思いつつアプローチを試みようとしたが、その瞬間から全てが崩れ去っていった。
「どうしたんですか?森山さん」
「どうしたも何も………っ」
顔の近さに体を離そうとするが、伊月と壁に挟まれ逃げることは出来ない。
どうしてこんなことになってしまったのか自分でも分からなかった。
一月前は自分が彼を口説こうとしていたはずなのに。気がついたらこうなっていた。
とりあえず分かっているのは伊月くんも自分を好きだということだけだが、それ自体予想外過ぎてどう接していいのか分からないのだ。
「森山さん?顔赤いですよ」
「いっ、伊月くん!」
「なんですか」
「その………頼むから離れてくれ……」
俯くと身長差のせいで伊月に赤く染まった顔を下から見られてしまうため、横に逸らすこと以外で顔を隠す術がない。
そんな必死な森山を宥めるように伊月は森山の髪を撫でた。
「伊月、くん」
「森山さん可愛いです」
「俺は可愛くないよ………」
可愛いのは伊月くんだ。そう言おうとしたのに言葉にならなかった。
可愛いと思っていたのに可愛さとはまた別のところでドキドキしている自分がいて。
「可愛いです」
「だから可愛くないって………」
「でも森山さん、俺のこと好きですよね?」
「なっ………!」
ぶわっと赤くなった顔を誤魔化す言い訳も思いつかず、否定の言葉も出てこなかった。
だって俺が伊月くんを好きなのは本当だったから。
好きな相手に壁に押し付けられ、男前に微笑まれたら誰だって挙動不審にもなるだろう。
あんなに綺麗だと思ってた彼がこんなに格好良いだなんて思いもしなかった。
「俺は森山さんのこと好きです」
「…………っ……」
鼓動が脈打つ。うるさい。伊月くんが好きだ。
少し下から見つめてくるグレーの入った瞳に射抜かれる。
「キスしてもいいですか」
「…………ダメ、だよ」
「どうして?」
「………その、慣れてないんだ。……こういうの」
今まで何度も女の子をナンパしてきたしその度に振られてたけど。
「こんな風にされたこと今までなくて、だから………格好悪いけど、恥ずかしくて………」
そうしどろもどろに伝えた森山に伊月は気の抜けたように笑った。
零れるような笑顔に一瞬釘付けにされたが、なんとなくバカにされたような気がしてつい口が出てしまった。
「し、仕方ないだろっ………好きな子に迫られたのこれが初めてだし、そもそも両想いになったのすらこれが初め、て…………あ、」
言い訳にすらなっていない自分の言葉の意味に更に熱が顔に集まるのを感じた。
伊月は目を見開いた後柔らかく笑みを浮かべ、森山をゆっくり抱き締める。
七㎝の差があるため視線の先には森山の肩口がある。
そこに頭をグリグリと押しつけながらより体を密着させた。
「森山さん、好きです」
「…………~~~っほんとはっ!俺の方が先にそれ言うつもりだったんだからな!」
「はい」
「あ、あと!こんな風に抱き締めて迫るのも俺だった!」
「はい」
嬉しそうに返事をする伊月くんはやっぱり可愛くて、綺麗で男前で。
胸が苦しいのに嬉しくて。
「あとキスも、俺からする予定だった」
「……………はい」
「…………う~~……」
涙が零れそうだと目を閉じると、ふいに唇に押し付けられた柔らかい感触。
咄嗟に目を開けるとさっきよりほんの少し赤くなった伊月くんが居て、胸が熱くなった。
「森山さん」
「………ん……伊月、くん」
触れた唇が熱を持っていてそれが心地良い。
好きだ。
最初は一目惚れだったかもしれない。
けど美人な見た目とは裏腹な実は強引で格好良いとこも、嬉しそうな可愛い笑顔も全部好きなんだ。
「伊月くんが好きです、付き合って下さい」
真っ赤な顔で告げた森山に伊月はふわりと笑顔を浮かべその顔に口付けた。
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元々森月が好きだったんですけど、よくよく考えたら森山さんのが受けじゃね?ってことに気付きました。
よしたかわいい感じを出したかったですけど難しかったです。
伊月くんもイケメン過ぎました(笑)
でも楽しかったです。
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