※前回の続きです
※R-15
虹村さんが我慢しなくなってから数日。
三ヶ月付き合っても片手で足りる程しかキスをしてなかったはずだったが、あれから頻度も増して数日で両手を越えてしまった。
部活という団体で行動をしているため外で人目がなく二人きりの場面はあまりない。
しかしたまに訪れるその時は飽きもせずひたすら唇を重ねた。
虹村は灰崎に対する遠慮や我慢が減り恋人らしい行為が増え充足感に満ちているせいか、逆に灰崎ばかりを目で追うことが減った。
恋人としての本当の余裕が出てきたのだろう。
そして灰崎はといえば……
「ヤバい」
そう一言練習中に呟いたのを黒子は聞き 逃さなかった。
無表情の下に好奇心と期待を膨らませて声を掛ける。
「何がどうヤバいんですか」
「うおっ………なんだ、テツヤか。つか聞いてたのかよ」
「ばっちり聞いてました」
さぁ話せと言わんばかりに目を爛々と輝かせている黒子に溜め息を吐く。やっかいな奴に聞かれちまった。
一度興味を持つと聞くまで解放しようとしないため、黒子や赤司に自分のシークレットを嗅ぎ付けられるのだけは避けなければならない。
それに今二人は虹村と灰崎が付き合っているという最大の秘密を共有しており、灰崎関連の情報は二人の間では筒抜けだ。
正直最悪なコンビだが秘密は守る。多少の羞恥には目を瞑って話した方が精神的には楽だ。
「まー………その、虹村さんのことで、な」
「でしょうね」
「何でちょっと嬉しそうなんだよ」
「いえ、虹村さんの話になると灰崎君が急に可愛く見えるのでつい笑えました」
「ブッ飛ばすぞ」
握り拳を見せつけると暴力反対です虹村さんに言いつけます、そう逆に脅しにかかる黒子に迷わず拳を下ろした。
力は入れていなかったが多少は痛かったのか、黒子は頭を抑えて灰崎を恨めしそうに見た。
勿論灰崎がそんなことを気にするはずもないが。
「…………で、何ですか」
「……………」
「あの、灰崎君?」
本題に入ろうと真面目に聞いてみたが返事はない。
灰崎の方を見ると口元を手の甲で押さえて目を背けている。
心 なしか顔が赤いような気もして余計に気になるが、この様子からして簡単には口を割らないだろう。
黒子は長期戦だと踏み、灰崎に提案した。
「ここでは人目も気になると思いますし、部活が終わったらマジバでも行きませんか?」
「……………」
「言っておきますが君に拒否権はありません」
「なら聞くんじゃねーよ……」
「では赤司君に伝えておきますね」
「おい、なんでそこで赤司だよ」
「何でって………赤司君だけ仲間外れにしたら可哀想じゃないですか」
「…………最悪だ……」
項垂れる灰崎を他所に黒子は無表情だが意気揚々と赤司の所に行ってしまった。
何故自分の恋愛事情を人に言わなければならないのか、最悪過ぎる。
だがここでヘコんでいても仕方ないのは分かっている。あの二人に問い詰められたならば逃げ場なんてない。
諦めて話をするしかないのだ。
「さて、話してもらおうかな」
「僕達は準備出来てますからいつでもどうぞ」
「…………………」
マジバに着くなり席を取っていろと命じられ仕方なく奥側のあまり人目につかない場所を陣取ったのはいい。
しかし、注文から帰ってきた二人が抱えている品の量に唖然とした。
しかめ二人の後ろには店員がさらに商品を抱えて持ってきてくれている。
おそらく赤司がメニューの端から端まで、とか言ったんだろうが流石に引く。ドン引きだ。
「お前等な………、どんだけココに居座る気だよ」
つかどっちも小食のクセにこんなに頼むんじゃねーよ。食べるの誰だと思ってんだ。
「そんなことはいいから早く話してくれないか。じゃないと脱ぐぞ」
「そうですよ、いいんですか?皆の赤司君の裸体が晒されても」
「心底どーでもいいわ!」
睨み付ける灰崎にノリが悪いとでも言いたげな目をする二人に脱力した。
やっぱり逃げれば良かったと今更後悔が募る。
目の前に積まれているハンバーガーの山に手を伸ばし、一つを一気に胃に押し込んだ。
こんな状況でも腹が減れば美味いと感じるんだな、としみじみ思った。
「虹村さんが前に俺を見てたのは知ってるよな」
「はい。最近はあまりそう言った様子は無さそうでしたけど」
「むしろ見てないな」
流石人間観察に於いては天下一のコンビなだけはある。
周囲からしたらたまったもんじゃないが。
無言で居ると早く続きを言えと促され、死にそうな顔で灰崎は答えた。
「そうだよ、最近はあんまこっち見ねぇし………妙に落ち着いてやがるっつか……なんか、すげー…………」
そこまで言って口を開けたまま目を背けた灰崎の顔は微かに赤く色付いていた。
それを赤司達が見逃すはずがないが、敢えてつっこまずに灰崎が言うのを待った。
普段とのギャップにブルブルと体を震わせながら。
何故この場に虹村が居ないのか、と言いたい程に愛しく思える。
こっちにようやく視線を戻した灰崎に微笑めば、至極言いづらそうに口を開いた。
「…………カッコいいんだよ、あの人。だから…………今は俺のが、なんか………」
見ちまってる。
そう言って俯いた顔は恥ずかしさのせいか、さっきよりも赤が増している。
黒子は手を伸ばし、灰崎の頭を撫でた。
勿論他意はない。
ただ可愛いと思ってしまった、それだけだ。
撫でられた方は不快そうな顔をしていたが、黒子はクスリと笑った。
「虹村さんも君と同じような気持ちで見ていたんだと思います」
「そうか………?」
「はい。だから、いいんじゃないですか?見ていても」
「というか普通に喜ぶだろ、虹村さんなら」
二人がまさかまともな事を言ってくれるとは思っていなかったため正直驚いた。
そのおかげで気が幾分か緩んだのか、灰崎はハンバーガーを更に何個か腹に詰めて話し出した。
「虹村さん、前に話した時………言ったんだ、我慢しなくていいんだなって」
「何ですかその美味しい展開、聞いてません」
「後で話してやるから話の腰を折るな黒子」
「いや、つかセイジューローは何で知ってんだよ。話してねーだろうが」
「俺に知らない事なんてない」
自慢げに鼻を鳴らす赤司に青くなればいいのか、あんな痴態を知られていたことに赤くなればいいのか。
そして無駄に食い付く黒子にツッコめばいいのか。
コイツ等に相談したのはやはり間違いだったようだ。
「まぁ、そう言われたもののあの日から俺の方見ねぇし………なんもしてこねーし」
キスはされるようになったが、それ以上の行為はされていない。
『エロいことも我慢しない』そう言われ期待しなかったと言えば嘘になる。
伊達に女遊びをしていた訳じゃない。
自分が受け身という予想は出来ているが、俺だって男だ。
好きな奴とやらしい事をしたいと思うのは普通だろ。
あの人で抜いたことだってあるし、むしろ最近はあの人がどんな風に触れてくるのか、どんな顔をするのか、そんなことばかり考えている。
そのせいで視線ばかりがあの人を追ってしまう。
そういった旨を伝えると赤司と黒子の震えは増し、机をバシバシと叩き出した。
その意味がよく分かっていない灰崎はいつものことだと特に気にする様子はない。
「あの人………別に今は我慢とかしてるように見えねーから、多分満足してんだと思う。でもよ、俺はちげーっつか………」
もっと触りたいし、触られたい。
虹村さんは違うんだろうか。
好かれているのは分かるからそれを不満に思いたくない。
でも、キスだけじゃ足りない。
灰崎が眉間に皺を寄せ、口を閉ざすと赤司と黒子はやけにニヤけた顔で手持ちの携帯を差し出してきた。
「………?」
首を傾げ、画面を覗いてその意味を知った途端に死にたくなると同時にこんな奴らに相談したことを本気で後悔する。
本能的に早くこの場から離れようと立ち上がった瞬間、通路側から肩を掴まれた。
振り向きたくない。
が、肩を掴む方からのオーラについ首が動いてしまった。
そこには赤司と通話中になっているであろう携帯を握りしめ、楽しそうに口角を上げる虹村の姿があった。
「はーいざーきくーん」
「に、じ……むら、さっ………!」
体が硬直し、肩に腕を回されても動かない灰崎を余所に虹村は赤司達に礼を言うと灰崎の腕を引いたままマジバを出た。
赤司達がヒラヒラと手を振るのが視界に入った気がしたがそれ所じゃない。
あの会話をまさか全部聞かれていたのか。
そんなことを本人に聞くわけにも行かず、羞恥心でブルブルと震えた。
虹村は黙ったままの灰崎をチラ、と見ると引いていた腕を離し、手に握り直して歩く。
「………俺ん家、来るか」
「は………」
「嫌かよ」
「……嫌じゃ、ねぇ……スけど………」
灰崎がその言葉の意味をどう取っていいのか考えあぐねているといつの間にか大通りを抜け、裏路地に入っていた。
人気がないのを確認して虹村が立ち止まると、灰崎も虹村の背にぶつかりそうになりながら止まった。
どうしたんだ?と振り返った虹村を見つめると、いきなり抱きしめられる。
「あ、え?と………虹村、さん?」
いくら人気がないとは言え、この人が外でこんな風に接してくるのは珍しい。
何処か切羽詰まったような虹村に灰崎は訳も分からないまま、腕を回し返す。
そうすると僅かに虹村の腕に力が籠もるのを感じ、顔が熱くなる。
虹村は灰崎の耳元で熱っぽく囁いた。
「灰崎」
「…………はい」
「キスしていいか」
「………!」
「キスだけ、な?後は家帰ってからするから………キスだけ」
心臓が跳ねると同時に呟いた言葉は肯定だった。
「………………はい……」
いつもより甘くて乱暴なキスに身を震わせ、力が入らないまま虹村の家に連れて行かれた。
玄関に入り靴を脱ぐなり虹村の自室に引っ張られ、あっという間にベッドに押し倒され唇に噛みつくようなキスをされた。
ここまで余裕のない虹村は今まで見たことがない。
だがそれを何処か喜ぶ自分がいた。
「………んっ……ン、ん………」
「っ…………最近、余裕が出来たって思ってた筈なんだがな………お前のせいでまたなくなっちまった」
「……………虹村さん……、余裕ねぇの……」
「そりゃー………お前、あんなモン聞かされりゃ余裕もなくなるわ」
やっぱり全部聞かれてたと、ぶわーっと顔を染め上げる灰崎に軽くキスを落とす。
なんでコイツはこんなに可愛いんだか。
こっちはエロい下心なんか見ぬ振りしてるっつーのに、爆弾ばっか落として行きやがって。
ほんとに抑えられなくなったらどうしてくれる。
しきりにキスを繰り返していると、灰崎は既にキスのせいで力が入らなくなった手で虹村の服を掴んだ。
「………今日は……キスだけじゃ、ねーんだよな?」
期待するような眼差しに頭がクラクラする。
お前は俺を殺す気か、と真面目に問いたいくらいだ。
虹村は灰崎の質問に答えるように深く唇を重ね、ゆっくりと片手で器用に制服のボタンを外していく。
普段晒されない、男にしては白い肌に唾を飲み込んだ。
喧嘩のせいで傷はあるが筋肉が程よく引き締まり綺麗な身体をしている。
恐る恐る指を滑らせると灰崎がピクリと反応した。
「大丈夫か?」
もしや嫌だったのでは、と心配したがそれは杞憂に終わった。
甘えるように首に腕を回して、不満そうに灰崎は言う。
「そんなんじゃなくてさ…………もっとちゃんと、触れば………?」
あぁ、コイツは本当に俺をどうしたいんだ。
溢れんばかりの感情を抑えるように深呼吸し、灰崎の頭を一度撫でるとさっきよりも強く触れた。
腹筋をなぞるように手の腹で撫で、鎖骨に舌を這わせる。
それがくすぐったいのか身を捩っていたが、軽く歯を立てると刺激に耐えるようなくぐもった声が聞こえた。
そのまま口を押し付け皮膚を吸うとくっきりと赤い痕が付いた。
「………ん………後で、俺にも付けさせろよ」
「あぁ、分かってる………」
「…………ソコ……」
「ん?」
灰崎の胸の突起を弄る虹村の手に視線を向け、ニッとからかうような顔で笑った。
「男でも触ってたら気持ち良くなるらしいっスよ……………勿論アンタが開発してくれんだよな?」
「おまっ………誘ってんのかよ」
「……………そーだよ……だから、早く。………下、いい加減辛い………」
下半身に視線を移すとそこは存在を主張するように隆起している。
かく言う虹村も下部に熱が集中しているのを我慢していたため、この言葉にほっとする。
「じゃ、ベルト外せよ………俺も外すから」
「……………ん」
ガチャガチャと忙しない音を立てて二人ともベルトを引き抜いた。
男として当然の生理現象ではあるが、それを恋人に見られるということ自体何処か気恥ずかしい。
お互いそう思う気持ちは同じであり、更に言えば相手の欲が見て分かる程興奮は増していく。
灰崎は上体を起こし、虹村の熱源にトランクス越しに触れた。
「なぁ………虹村さんの、触っていい……?」
「いいけど、なんか………はじーな……」
「じゃあ俺のも触れば?」
それならハズいの俺も同じだし。
そう言った灰崎の手は既にトランクスの中に突っ込まれており、やんわりと握りこんでいる。
硬度を増した熱棒は緩い刺激にも反応し、更に嵩を増す。
虹村は熱い吐息を零しながら灰崎の自身に手を伸ばして同じように触った。
少し強めに擦ると気持ちいいのか、身震いした灰崎の色気に当てられ気付かぬ間に唇を合わせていた。
「ん、……んんっ……ふ………ン、は…」
「………は、あー……やべぇ、すげー………イイ、な」
「何が……スか………っふ、く……ぅ」
「気持ちいいってこと、な」
「俺も、スゲっ………イイ、虹村さっ………んぅ」
先走りが滑りを良くし、余計気持ちいい。
流石男同士だからかポイントがよく分かってる。
けど、それだけじゃない。
気持ちいい一番の理由は上手いとは別の、それよりももっと身体を熱くさせてくれるモノだ。
ぐちゃぐちゃに泣かせたくなるような理性を千切られる感覚。
それを灰崎は持っている。
「お前のそのカオ、すげーイイ」
「……は…………」
言われた途端に赤く染まる顔が愛しくて、空いている方の腕で抱き締めた。
やらしい音が響く中、灰崎の腰を更に抱き寄せ下部が触れ合うまで近付けると一緒くたに握りこみ、勢いよく扱く。
時折上がりそうになる声を耐えながら灰崎は虹村の肩に頭を預け、身を任せた。
「はっ……ん………ぅ、ン…………」
「声、出せよ………はっ」
「出すわけねー、だろ………っく、ン」
「聞きたい」
先を親指で刺激してやれば、背中に回された手に力が籠もるのを感じた。
強情な奴だと言うと涙目で何の迫力もない眼で睨まれる。
自分のその態度が煽っているものだと気付いていないらしい。
灰崎は一度目を逸らし、口を閉ざすとそのまま虹村の口に押し付けた。
「…………恥ずかしい…… から、今日は………これで勘弁しろよ、修造サン」
言われた虹村の方が顔に熱が集まる。
どうしようもなく愛しい。
熱く濡れた目が、蒸気した頬が、自分を呼ぶこの声が、ただどうしようもなく大切で愛しい。
「………祥吾……好きだ」
「…………っ…」
飛びきり甘い声で告げられ、胸の奥が疼いた。
じくじくと広がるその疼きは止まることを知らないように、灰崎の思考までを占拠した。
一つの感情が虹村という男で満たされていき、想いが溢れる。
抗いようのない気持ちに涙が零れた。
「俺も…………アンタが、修造さんが………好き……だ」
「……………祥吾」
合わせた唇はやっぱり気持ち良くて、気を抜いている間にあっけなくイかされてしまった。
今日はそれだけで終わったが、多分最後まで行くのはそう遠くない気がする。
俺も虹村さんも、もうお互いを知ってしまったから。
だから、もっと知りたい。
もっと近付きたい。
遠慮はもうしたくない。
そんな俺達は今日も恋人同士です。
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ピュアじゃないけどピュアな灰崎君を目指しました。
灰崎君が可愛くなりすぎないように気をつけたけど………
結果可愛くなってしまった………
楽しかったです、はい
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