*大学設定
*ぬるいエロあり
*付き合って半年くらい。
宮地さんは付き合う前は、俺がすること一つ一つに照れてキレたり調子に乗んなってマジ切れしたり、とにかくこっちからのアプローチにはとことんキレてた。
好きだと言えば「死ね」って言われたし、しばかれたし睨まれて全然距離が縮まってるようには見えなかった。
でもこうして今付き合えてるのは宮地さんがちゃんと俺とのことを真剣に考えてくれたからだ。
そういう真面目なトコが宮地さんの良いところだと思う。
付き合うことになってもツンギレ属性はそのままだけど、そこもまた可愛い。
けど、俺の予想と違ったのは付き合うと宮地さんは開き直るというか、多分無意識なんだろうけど俺によく触るようになった。
俺はてっきり付き合ってからも「近寄んな、轢くぞ」って照れながら文句をぶつけてくるかと思ってたのに、実際は何も言われないし、近寄れば向こうから触ってくる。
例えば、昨日の昼。
「……………」
「……………」
雑誌を片手に小太郎の頭を撫で、時折指先を柔らかい髪の毛に絡めながらもう30分は経過している。
視線は雑誌に向いたままで小太郎には一切向かない。
宮地の手は大きくて撫でられれば気持ちいいし安心感があるが、流石に我慢出来なくなったのか、小太郎は宮地におそるおそる声をかけた。
「あの、宮地さん………?」
「……あー……?」
返事は返ってきたが視線は相変わらず雑誌に向けられている。
「なんでずっと頭触ってんの?」
そう訊ねると宮地は初めて雑誌から小太郎に視線を移した。
そして驚いたような顔をして今まで触り続けていた手を一度離し、意地悪そうに笑った。
「悪ぃ、お前の髪触ってっと気持ち良いからついな」
「や、別にいっけど………俺も触ってい?」
「下心ねーならな」
「う………別にない、ヨ」
「ふはっ!お前ほんと嘘つけねぇよな」
「……………」
あと、宮地さんはよく笑うようになった。可愛いし格好良いけど、そのせいで俺は調子を狂わされてばかりだ。
何故か付き合ってからの方が宮地さんはすごく余裕があるし、こういう所が年上らしい。
付き合い始めはまだ余裕なんてなかったのに、二、三ヶ月でもうこうだ。
「何だよ。物言いたげな顔して」
「……何でもないしー」
しかも宮地さんは鈍いようで案外鋭かったりする。
それにはぐらかそうとすれば何の詮索もしようとしない、優しい人だ。まぁ怒らせるとメチャクチャ怖いけど。
つーか付き合う前あんだけキレてただけに今の平穏な日々が恐ろしく怖い。
明日には地球が滅亡しててもいいくらいにはそう思う。
「……あー……もう」
「何だよ」
「何でもないよ、宮地さんは雑誌に集中しといて」
宮地さんが分かんないよ俺は。
小太郎は宮地の真意を探るように、雑誌を眺める宮地を何となく横から見つめていた。
すると視線に気付いたのか、宮地は小太郎を見ると雑誌を閉じた。
え、と体が強張る。見すぎで集中出来ないと怒らしてしまったかもしれない。
宮地さんの腕が伸びてきて、叩かれると思い下を向くと後頭部が手に支えられた。
「え、みや……」
顔を上げると宮地さんの顔が焦点が合わないほど近くて、唇が触れ合ってることにやっと気付いた。
触れるだけの柔らかい感触。
離れていくのが名残惜しいのと突然のキスに驚いたのとで小太郎は中々言葉が出てこない。
「……ぁー………ぇー……?」
「んだよ」
「や、え、だって………宮地さんからって何で……?」
いや、すごい嬉しいんだけどね!!
嬉しいのといきなりであんま味わえなかったのが残念過ぎるよ宮地さん!
あわわ、と口元を押さえて宮地を上目使いで見つめるとまた頭を撫でられた。
「別に、したかったからしただけだろ」
「…………」
あぁ、ほら。宮地さんのこういうとこだよ。俺の調子なんて簡単に崩されてしまう。
そんな、したくなったらするのが当たり前みたいな………すげぇ嬉しいし宮地さんカッケーし。
ほんとにヤバいよ。
「もうヤダ宮地さん………」
「あー?お前が目から何か飛ばしてくるからだろーが」
「飛ばしてるって、何を?」
「宮地さん大好き光線」
「…………~~っ……」
もう、ほんとヤダこの人……!!平然と何言ってくれてんだよ!いや別に違わないんだけどネ!!
でも、もっと恥じらいとかあってもいいと思うんだけどなぁ。なーんでこんな余裕なんだろ。
頭の中で悶々とする小太郎が、いきなりキスしたことに拗ねているように見えたのか、宮地は宥めるように頭を撫でた。
「普通コイビトがそんな目で見てきたらキスくらいしてーって思うだろがよ」
「…………宮地さん」
「ん?」
「俺明日には死ぬかもしれない」
「へいへい」
ほら、もうほんとに顔が熱いし勘弁してよ。
そんな普通に「コイビト」とか、スッゲー嬉し過ぎて死んじゃう。
例えば、昨日の夜。
乱れるベッドシーツの上で声を殺しながら喘ぐ宮地さんに夢中になる。
「…………っは、……ん」
「宮地さん………っ」
口では言えないような所まで触り尽くし、前戯も程々にしているといきなり宮地に引き剥がされた。
え、と声を出す前に体を引き倒され乗っかられた。
「な、………っ……宮地さん?」
「はー………お前、毎度思うけどなげーよ」
前戯長すぎて辛いんだけど、そう暗に言われまた悪い癖が出てしまったと反省した。
いつも宮地さんの反応が楽しくてつい触りすぎてしまう。
その時は自分の下半身が辛いことなんか忘れている。ただ宮地さんを気持ち良くしたい一心だった。
「あとお前いっつも服脱がせねぇだろ」
「………えー、イヤ?着衣エロ宮地さんてスッゲーかわ痛っ!!」
真上から頭をしばかれた。グーで殴られなかっただけマシだけど痛いもんは痛い。
でもほんとに着たまま乱れる宮地さんのチラリズムがエロいんだから仕方ないじゃん?
ぶーっと膨れている小太郎を上から見下ろしながら、宮地は今着ているTシャツに手をかける。
そして勢いよく邪魔なシャツを脱ぎ去った。
「う、わ」
下から眺めるその光景があまりにも格好良くて、髪から散る汗も綺麗で見惚れてしまった。
宮地さんの豪快で躊躇いのない動作だからこそ、こんなにも格好良く見せれるのだろうか。
服の下に隠れていた筋肉はバランス良くしなやかに付いていて美しいとさえ思える。
改めて意識した宮地さんの体に恥ずかしくなり、目を反らすとまたしばかれた。
「痛いよ、宮地さん……」
「何で目ぇ反らすんだよ」
「え………」
「まさか男の体マジマジ見たら萎えた、とかじゃねーだろうな?」
もしそうだったら殴んぞ?と笑顔で訴えてくる宮地に小太郎は慌てて首を横にブンブンと振った。
だってそんなわけない。っていうか宮地さんが男の体とか今更じゃん。
「好きな人の裸だから……」
「……!」
「宮地さんの体だから……何か恥ずかしい、んだヨ」
気まずさにまた視線を反らす小太郎に宮地さんは呆れるでもなく、吹き出すように笑った。
「ふっは!……お前、付き合う前はあんなグイグイ迫って人の体触ってたくせに………!は、ははっ……意味わかんねーっつの!」
「うー………」
「ククッ………まぁでも流石に着たままだと熱ぃから、な?」
このままシようぜ。耳元で囁かれた言葉に全身の鼓動が脈打った。
宮地さん、宮地さん、宮地さん……!
どうしよう、ヤバい……完全に煽られた。
沸騰した衝動に任せ、宮地を組み敷いて貪るようにキスした。
「…………っ」
「っは………ん!んっ」
絡まる舌は熱を持って互いの口内を境目がなくなるまで侵食する。首に回された宮地の手が余計それを煽った。
宮地の熱の塊に触れると、すでに散々焦らされて濡れたそこは後孔まで白濁を垂らしていた。
指で掬い、そぼまった箇所に塗りたくりながらローションを足し、ゆっくりと指を挿し入れる。
宮地から微かに洩れた喘ぎに気を良くすると程好く筋肉の付いた内股に吸い付いた。
「…………っ……は」
「………宮地さん……」
そう言えば、付き合い始めは痕を付けるとキレられていたような気がする。
今は見える所でさえなければそんな事態になることはないけど。
あぁ、でも痕に関しては宮地さんは物凄く理不尽だ。いつも理不尽だけどそれ以上だと思う。
だって……
「……おい」
「どしたの?宮地さん」
「それはもういい、から………」
「えっ」
何が?という小太郎に呆れたように深く溜め息を吐く。
しかも表情は少し怒っているように見えて小太郎は焦るが、宮地は上体を起こすと座っている小太郎の膝に跨がった。
その行動に小太郎は固まった。別に今までそういう体位をしたことがなかったわけではない。
ただ、こういう時の宮地は恥じらいを捨てて楽しそうに乗ってくる。
今日は何故か跨がられたまま抱き締められている。しかも顔が見えないように宮地は呟いた。
「早く……お前の、挿れろよ」
「宮地さん……耳赤いよ?」
「うっせぇな!」
恥ずかしいの?って言ったら怒るんだろうな、と思いながら綺麗な背中を撫で下ろし、尻肉を柔く揉むとゆっくり腰を落とさせる。
自身の屹立を息を詰めた宮地が痛がらないように慎重に呑み込ませた。痛みは無さそうだと腰を緩く動かし始める。
「んっ………は、ぁ………っあ」
「……っは、………あー……気持ち、いい」
「……そっ、かよ……あっ、ぁ!」
耳に馴染んだ聞き心地いい声に夢中になるまま腰を打ち付けた。
結合部から洩れる生々しい音が余計興奮させる。
絡み付く内壁をダイレクトに感じながら見上げた場所にちょうどある唇を貪った。
「ふ、ん………っんん、ぁっ……は!」
「宮地さんっ……はっ、スゲー気持ちい、っん……く」
「…ァ…!……こた、ろ……俺もっ……ぁ……ヤベー、わ」
「……痛…っ……!!」
鋭い痛みの原因は見るまでもなく宮地だ。宮地は少し屈み、小太郎の肩口を思いきり噛んでいた。
肉が裂けるような痛みに涙目になりながら傷口に視線を落とすと、やはり血が滲んでいた。
「痛いよ、宮地さん……つーかそこ見えるよ?」
「ああ?別にいいだろ」
そうだ、宮地は自分が小太郎に痕を付ける分には別に見えても良いと真顔で言うくらい理不尽だった。
ただ小太郎はまさか宮地にそんな独占欲があったとは知らなかったため、嬉しさが勝り嫌がることはない。
だがそんな小太郎でも一つだけ苦手なことがある。
「……ちょ、舐めないで……宮地さ、ぁっ」
傷口を舐められるのだけはいつまで経っても慣れないし、舌先で噛み痕を抉られると痛いものは痛い。
しかも時折傷口に吸い付かれ、血が強制的に宮地に飲み込まれてしまう。
その際に出される小太郎の喘ぎ声が聞きたくて宮地はいつも制止の声を聞こうとしない。
「んっ……痛い、からやめ……ひ、ぁ………あっ、ぅ」
「お前………可愛いわ、やっぱ」
「……もっ…ほんと勘弁し、て………ん、はっ」
「は、……でも嫌じゃねぇだろ……?」
色気たっぷりに耳元で囁かれ背筋を通って下半部がズクリと重くなる。
こっちがリードを取っている時は俺の下で乱れて喘いでめちゃくちゃ可愛いのに、一瞬気を抜いただけですぐ向こうにリードを持っていかれる。
そのくせリード持った時の宮地さんは組み敷かれる側とは思えない程に男前で格好良すぎるのだ。
もうこうなったら後は自分がひたすら喘がされるだけで拒否権はない。
「動く、ぞ……っ」
「んっ………は、ぁっ…く………みやぢ、さ…っ」
「きもちー……だろ?……ん、ぁ」
首から口を離すと今度は耳を甘噛みしながら自ら腰を揺する宮地に小太郎は小さく喘いだ。
耳が弱い小太郎はそこを中心に舌で攻められれば力は抜け、腰を突き上げようにも出来ない状態にされた。
「みみ、は……っだ、め……!ぁっ、や………ふ、ぁ」
「……ぁっ……は、かわいー……ぜ…ん…っあ」
「宮地さんっ……」
小太郎の制止の言葉も虚しく、結局今日は宮地のペースに乗せられたまま行為は最後まで押しきられてしまった。
それでも行為自体は気持ち良くなかったと言えば嘘になるのだが。
付き合う前では想像も出来なかった宮地の性癖(小太郎限定)に未だに戸惑うことはあるが、こんな所も自分が愛されている証拠だと思えて嬉しい。
そんなことを本人に言えばきっと一蹴されるに決まってるけど。
例えば、今もそうかもしれない。
「……………」
朝になり行為の名残が多少あるものの、すっかり落ち着いた体に寒さを感じていると不意に頭に何かが触れた。
目を開けなくても分かる。宮地さんの手だ。
優しい手付きにまた眠気が襲ってくるが、あまり寝てばかりいるとその内鉄拳が降ってくることになる。
「………宮地、さん……」
「おう」
目を開けると、思いの外近い距離に驚いた。
いやそんなことよりも、朝はいつも不機嫌MAXの宮地さんが優しく笑っていることの方が驚きだ。それも自分にだ。
絶対何か裏があるんだと恐ろしく思う反面、滅多に見せない優しい笑みはやっぱり格好良くて、ときめいてしまった。
「……何か良いことでもあったの?」
「んーや?何でだよ」
「だって宮地さんが優しい、から」
「俺はいつだって優しーだろうが」
「いだだっ……!!」
頭を拳骨でグリグリされ、涙目になる小太郎に笑いながら宮地はもう一度頭を撫でた。
確かにこういう所とか、いざって時は何だかんだで結構優しいなんてとっくに知ってる。
それが俺にだけじゃないってことも、知ってる。俺は宮地さんのそんなところが大好き。
「どうした?」
「…………?」
「泣きそうな面してんぞ」
「え…………」
そんなに痛かったか?と困ったように聞いてくる宮地に小太郎は首を横に振った。
違うよ宮地さん。宮地さんが他の人と平等に扱う中でも俺を特別扱いしてくれてるのなんて分かってる。
そのちょっとした『特別』の積み重ねが嬉しくて、もっと、ってなるんだ。
「どうしよう………俺、欲張りになっちゃった」
「欲張り?」
最初は付き合えるだけで嬉しかった。でも宮地さんの優しさや愛情を知る度に欲は深くなるばっかで底がない。
今もこんな風に頭撫でられて一秒前よりもっと好きになる。
我が儘なことだって分かってるし、こんなこと言ったら愛想尽かされるかもしれない。
それでも、
「もっと、宮地さんの『特別』になりたい……」
もっと愛されたい。
もっと傍に居たい。
もっと触れ合いたい。
もっと、もっと、もっと。
そう訴える小太郎に、撫でる手を止めてそっと手を離した。
宮地は小太郎から目を気まずそうに反らすと口元を押さえ、何とも言えない声を出した。
「あー…………おう」
「…………?」
心なしか赤い顔にキョトンとしていると、チラッとこっちを見た宮地と目が合った。
怒らせたわけではない様子にホッとする。宮地の言葉を待っていると今度は体ごと小太郎に向かい合った。
「……なんつーか……あー…」
「?」
「そういうこと言われた後で、とか………スゲー言い辛ぇんだけど……」
「…………!」
言い辛いって、宮地さんなに?まさか違うよね?
重い、とか思われても仕方ないのは分かってるけど……嫌だよ宮地さん。
宮地の言いにくそうな雰囲気に嫌な予感が走る。
彼の口から聞きたくないがために小太郎は弱々しく震える声で呟いた。
「………わ、かれる……とかじゃ……ないよね……?」
「!」
目を見開き驚いた顔をする宮地のそれは図星だったからなのか、等と考える暇も無いくらいのスピードで頭をしばかれた。
「馬鹿か!!なんっっでそうなんだよ!!馬鹿か!!」
「二回も馬鹿って言った!?」
「あぁ言うな!お前は正真正銘の大馬鹿だ!!終いにゃ轢くぞ!!」
「だ、だって………!今の流れ的にそうとしか………!!」
宮地のあまりの勢いに押されて涙目になる小太郎の頭をもう一度叩いた。
突然の暴力に抗議する小太郎に、腹が立ったんだから仕方ねーだろと明らかに怒っている宮地。
「……こんなつもりじゃなかったってのに…………ほんとお前……っぶ!!」
呆れ果てた様子に小太郎は意味が分からず腹が立ってきたのか、手元にあった枕を思いきり投げつけた。
勿論その後のことなんて考えているわけもない。ただ訳も分からないままなんで怒られきゃいけないんだ、と。
俺はただ宮地さんに伝えたかっただけなのに、と。
怒られることを一応覚悟したが、むくれる小太郎を宥めるように宮地はすまなさそうに呟いた。
「いや………まぁ、勘違いさせた俺が悪ぃな……」
「…………?」
「俺も色々計画っつか、順序とか雰囲気?……が考えた通りにいかねーからちょっと苛々しちまったわ」
「………計画って何?」
「ちょい待ってろ」
恨めしそうに上目使いで見てくる小太郎の視線を背に受けながら、棚から何かを取り出した。
手の平に握られたそれはしっかり拳に収まっているため、何かは分からない。
分かるのはとにかく小さい物だということくらいだ。
宮地は黙ったまま硬い表情でベッドに戻ってくると、拳を小太郎に突き出した。
「ん」
「え?なに……」
「手、出せ」
疑問に思いながらも宮地と同じように拳を突き出してみるとまた怒られた。
「違ぇーよ!手ぇ広げて上に向けろ!」
「……こう?」
「おう」
言われた通りに宮地の拳の下に手を広げて構える。
これから何をされるのかと見つめていると宮地は大きく深呼吸をし、小太郎を見つめ返した。
緊張が伝わったのか、小太郎は息を詰めて言葉を待つ。宮地の息を吸う音が鼓膜に響いた。
「俺はこういう性格だから、お前みたいに言葉で表現とかは出来ねぇ」
知ってる。
「だから出来る限り行動で表してきたつもりだ」
それも、知ってる。
「それでもお前が言葉とか欲しいのには気付いてた。………けど俺にはそんなん似合わねぇから他に何がいいか、とか色々考えたし………考えて先を想像したらお前にハマってんのが分かりすぎて……だから、」
ゆっくりと拳の力が解かれる。
「これ、お前にやる」
「…………え、これ…」
現れたモノに小太郎は目を見開いた。
優しく手の平に乗せられたそれが何なのかなんて聞くまでもなく分かってしまったが、それでも聞かずにはいられない。だって、これは。
「ここの合い鍵」
「な、んで…………?」
今まで宮地さんと付き合ってきて、無理矢理押し掛けることは少なくない。
宮地さんが疲れてる時も会える日は我慢出来ずに家に上げてもらっていた。
迷惑だって分かってても、文句を言いつつ入れてくれる優しさに甘えて。
だから、それが欲しくても言えなかった。断られたら、嫌われたらって考えたら怖くて自分からは言えなかった。
「お前だって一々ここまで来るの面倒だろ。どーせほぼ毎日入り浸って…………あー……こういうのがダメなんだよな?」
「えっ?や、十分嬉しい、けど」
宮地はいいから言わせろ、と笑った。
「一度しか言わねぇぞ」
あぁ、駄目だ。これを聞いたら俺はもっと欲張りになる。
聞いたら宮地さんのためにならないと分かっているのに、耳は一言一句聞き逃さないよう神経を集中させている。
「俺がお前を目の届く範囲に置いときてぇ……だから、ここに越してこい。一緒に暮らすぞ」
一緒に暮らす、それは俺がずっと夢見ていた光景で。そうなったらいいな、とそう思うだけだった。
でも今確かにこの人の口から出た言葉なのだと思うと自然と視界がぐしゃぐしゃに歪んだ。
「…………っう…ぇ………」
「な!?泣くなよ!」
「だっで……!ぅっ……あ、あぅっ……うー……っ」
ボロボロと大粒の涙を溢す目を拭ってやるが、一向に止まる気配はない。
あぁ……もうほんとに、可愛い奴だ。涙声で必死に何かを伝えようとする姿に耳を傾けた。
「うぇっ……ひっ…みやぢ…ざんがっぅ…ぢゃんと……俺のっこと!……好きだっだぁ……!!」
なーに言ってんだよコイツは。
可愛い、全身で自分の感情を表して俺の前に居るコイツがどうしようもなく。
それなのに、何で俺がお前と同じじゃねぇとか思えるんだよ。
泣きじゃくる小太郎を抱き締め、背中を擦ってやりながら言ってやった。
「好きに決まってんだろ?付き合ってんだからよ」
「っ……みやっ………っん」
口先に触れるだけのキスをすれば涙は何故か止まり、小太郎は目尻を赤くしたまま笑った。
宮地さんのこういう所が
俺をもっと欲張りにして
夢中にさせて
幸せにしてくれる
そんな君が本当に
「大好き、宮地さん」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
付き合うと普通にデレる男前宮地さん。初めて葉宮書いたので誰おま状態。
こんなハズじゃなかった感しかありませんね・・・・。個人的に小太郎は喘ぐと思ってます
葉宮は百合っぷる。可愛い。難しい。もう書かない。
*ぬるいエロあり
*付き合って半年くらい。
宮地さんは付き合う前は、俺がすること一つ一つに照れてキレたり調子に乗んなってマジ切れしたり、とにかくこっちからのアプローチにはとことんキレてた。
好きだと言えば「死ね」って言われたし、しばかれたし睨まれて全然距離が縮まってるようには見えなかった。
でもこうして今付き合えてるのは宮地さんがちゃんと俺とのことを真剣に考えてくれたからだ。
そういう真面目なトコが宮地さんの良いところだと思う。
付き合うことになってもツンギレ属性はそのままだけど、そこもまた可愛い。
けど、俺の予想と違ったのは付き合うと宮地さんは開き直るというか、多分無意識なんだろうけど俺によく触るようになった。
俺はてっきり付き合ってからも「近寄んな、轢くぞ」って照れながら文句をぶつけてくるかと思ってたのに、実際は何も言われないし、近寄れば向こうから触ってくる。
例えば、昨日の昼。
「……………」
「……………」
雑誌を片手に小太郎の頭を撫で、時折指先を柔らかい髪の毛に絡めながらもう30分は経過している。
視線は雑誌に向いたままで小太郎には一切向かない。
宮地の手は大きくて撫でられれば気持ちいいし安心感があるが、流石に我慢出来なくなったのか、小太郎は宮地におそるおそる声をかけた。
「あの、宮地さん………?」
「……あー……?」
返事は返ってきたが視線は相変わらず雑誌に向けられている。
「なんでずっと頭触ってんの?」
そう訊ねると宮地は初めて雑誌から小太郎に視線を移した。
そして驚いたような顔をして今まで触り続けていた手を一度離し、意地悪そうに笑った。
「悪ぃ、お前の髪触ってっと気持ち良いからついな」
「や、別にいっけど………俺も触ってい?」
「下心ねーならな」
「う………別にない、ヨ」
「ふはっ!お前ほんと嘘つけねぇよな」
「……………」
あと、宮地さんはよく笑うようになった。可愛いし格好良いけど、そのせいで俺は調子を狂わされてばかりだ。
何故か付き合ってからの方が宮地さんはすごく余裕があるし、こういう所が年上らしい。
付き合い始めはまだ余裕なんてなかったのに、二、三ヶ月でもうこうだ。
「何だよ。物言いたげな顔して」
「……何でもないしー」
しかも宮地さんは鈍いようで案外鋭かったりする。
それにはぐらかそうとすれば何の詮索もしようとしない、優しい人だ。まぁ怒らせるとメチャクチャ怖いけど。
つーか付き合う前あんだけキレてただけに今の平穏な日々が恐ろしく怖い。
明日には地球が滅亡しててもいいくらいにはそう思う。
「……あー……もう」
「何だよ」
「何でもないよ、宮地さんは雑誌に集中しといて」
宮地さんが分かんないよ俺は。
小太郎は宮地の真意を探るように、雑誌を眺める宮地を何となく横から見つめていた。
すると視線に気付いたのか、宮地は小太郎を見ると雑誌を閉じた。
え、と体が強張る。見すぎで集中出来ないと怒らしてしまったかもしれない。
宮地さんの腕が伸びてきて、叩かれると思い下を向くと後頭部が手に支えられた。
「え、みや……」
顔を上げると宮地さんの顔が焦点が合わないほど近くて、唇が触れ合ってることにやっと気付いた。
触れるだけの柔らかい感触。
離れていくのが名残惜しいのと突然のキスに驚いたのとで小太郎は中々言葉が出てこない。
「……ぁー………ぇー……?」
「んだよ」
「や、え、だって………宮地さんからって何で……?」
いや、すごい嬉しいんだけどね!!
嬉しいのといきなりであんま味わえなかったのが残念過ぎるよ宮地さん!
あわわ、と口元を押さえて宮地を上目使いで見つめるとまた頭を撫でられた。
「別に、したかったからしただけだろ」
「…………」
あぁ、ほら。宮地さんのこういうとこだよ。俺の調子なんて簡単に崩されてしまう。
そんな、したくなったらするのが当たり前みたいな………すげぇ嬉しいし宮地さんカッケーし。
ほんとにヤバいよ。
「もうヤダ宮地さん………」
「あー?お前が目から何か飛ばしてくるからだろーが」
「飛ばしてるって、何を?」
「宮地さん大好き光線」
「…………~~っ……」
もう、ほんとヤダこの人……!!平然と何言ってくれてんだよ!いや別に違わないんだけどネ!!
でも、もっと恥じらいとかあってもいいと思うんだけどなぁ。なーんでこんな余裕なんだろ。
頭の中で悶々とする小太郎が、いきなりキスしたことに拗ねているように見えたのか、宮地は宥めるように頭を撫でた。
「普通コイビトがそんな目で見てきたらキスくらいしてーって思うだろがよ」
「…………宮地さん」
「ん?」
「俺明日には死ぬかもしれない」
「へいへい」
ほら、もうほんとに顔が熱いし勘弁してよ。
そんな普通に「コイビト」とか、スッゲー嬉し過ぎて死んじゃう。
例えば、昨日の夜。
乱れるベッドシーツの上で声を殺しながら喘ぐ宮地さんに夢中になる。
「…………っは、……ん」
「宮地さん………っ」
口では言えないような所まで触り尽くし、前戯も程々にしているといきなり宮地に引き剥がされた。
え、と声を出す前に体を引き倒され乗っかられた。
「な、………っ……宮地さん?」
「はー………お前、毎度思うけどなげーよ」
前戯長すぎて辛いんだけど、そう暗に言われまた悪い癖が出てしまったと反省した。
いつも宮地さんの反応が楽しくてつい触りすぎてしまう。
その時は自分の下半身が辛いことなんか忘れている。ただ宮地さんを気持ち良くしたい一心だった。
「あとお前いっつも服脱がせねぇだろ」
「………えー、イヤ?着衣エロ宮地さんてスッゲーかわ痛っ!!」
真上から頭をしばかれた。グーで殴られなかっただけマシだけど痛いもんは痛い。
でもほんとに着たまま乱れる宮地さんのチラリズムがエロいんだから仕方ないじゃん?
ぶーっと膨れている小太郎を上から見下ろしながら、宮地は今着ているTシャツに手をかける。
そして勢いよく邪魔なシャツを脱ぎ去った。
「う、わ」
下から眺めるその光景があまりにも格好良くて、髪から散る汗も綺麗で見惚れてしまった。
宮地さんの豪快で躊躇いのない動作だからこそ、こんなにも格好良く見せれるのだろうか。
服の下に隠れていた筋肉はバランス良くしなやかに付いていて美しいとさえ思える。
改めて意識した宮地さんの体に恥ずかしくなり、目を反らすとまたしばかれた。
「痛いよ、宮地さん……」
「何で目ぇ反らすんだよ」
「え………」
「まさか男の体マジマジ見たら萎えた、とかじゃねーだろうな?」
もしそうだったら殴んぞ?と笑顔で訴えてくる宮地に小太郎は慌てて首を横にブンブンと振った。
だってそんなわけない。っていうか宮地さんが男の体とか今更じゃん。
「好きな人の裸だから……」
「……!」
「宮地さんの体だから……何か恥ずかしい、んだヨ」
気まずさにまた視線を反らす小太郎に宮地さんは呆れるでもなく、吹き出すように笑った。
「ふっは!……お前、付き合う前はあんなグイグイ迫って人の体触ってたくせに………!は、ははっ……意味わかんねーっつの!」
「うー………」
「ククッ………まぁでも流石に着たままだと熱ぃから、な?」
このままシようぜ。耳元で囁かれた言葉に全身の鼓動が脈打った。
宮地さん、宮地さん、宮地さん……!
どうしよう、ヤバい……完全に煽られた。
沸騰した衝動に任せ、宮地を組み敷いて貪るようにキスした。
「…………っ」
「っは………ん!んっ」
絡まる舌は熱を持って互いの口内を境目がなくなるまで侵食する。首に回された宮地の手が余計それを煽った。
宮地の熱の塊に触れると、すでに散々焦らされて濡れたそこは後孔まで白濁を垂らしていた。
指で掬い、そぼまった箇所に塗りたくりながらローションを足し、ゆっくりと指を挿し入れる。
宮地から微かに洩れた喘ぎに気を良くすると程好く筋肉の付いた内股に吸い付いた。
「…………っ……は」
「………宮地さん……」
そう言えば、付き合い始めは痕を付けるとキレられていたような気がする。
今は見える所でさえなければそんな事態になることはないけど。
あぁ、でも痕に関しては宮地さんは物凄く理不尽だ。いつも理不尽だけどそれ以上だと思う。
だって……
「……おい」
「どしたの?宮地さん」
「それはもういい、から………」
「えっ」
何が?という小太郎に呆れたように深く溜め息を吐く。
しかも表情は少し怒っているように見えて小太郎は焦るが、宮地は上体を起こすと座っている小太郎の膝に跨がった。
その行動に小太郎は固まった。別に今までそういう体位をしたことがなかったわけではない。
ただ、こういう時の宮地は恥じらいを捨てて楽しそうに乗ってくる。
今日は何故か跨がられたまま抱き締められている。しかも顔が見えないように宮地は呟いた。
「早く……お前の、挿れろよ」
「宮地さん……耳赤いよ?」
「うっせぇな!」
恥ずかしいの?って言ったら怒るんだろうな、と思いながら綺麗な背中を撫で下ろし、尻肉を柔く揉むとゆっくり腰を落とさせる。
自身の屹立を息を詰めた宮地が痛がらないように慎重に呑み込ませた。痛みは無さそうだと腰を緩く動かし始める。
「んっ………は、ぁ………っあ」
「……っは、………あー……気持ち、いい」
「……そっ、かよ……あっ、ぁ!」
耳に馴染んだ聞き心地いい声に夢中になるまま腰を打ち付けた。
結合部から洩れる生々しい音が余計興奮させる。
絡み付く内壁をダイレクトに感じながら見上げた場所にちょうどある唇を貪った。
「ふ、ん………っんん、ぁっ……は!」
「宮地さんっ……はっ、スゲー気持ちい、っん……く」
「…ァ…!……こた、ろ……俺もっ……ぁ……ヤベー、わ」
「……痛…っ……!!」
鋭い痛みの原因は見るまでもなく宮地だ。宮地は少し屈み、小太郎の肩口を思いきり噛んでいた。
肉が裂けるような痛みに涙目になりながら傷口に視線を落とすと、やはり血が滲んでいた。
「痛いよ、宮地さん……つーかそこ見えるよ?」
「ああ?別にいいだろ」
そうだ、宮地は自分が小太郎に痕を付ける分には別に見えても良いと真顔で言うくらい理不尽だった。
ただ小太郎はまさか宮地にそんな独占欲があったとは知らなかったため、嬉しさが勝り嫌がることはない。
だがそんな小太郎でも一つだけ苦手なことがある。
「……ちょ、舐めないで……宮地さ、ぁっ」
傷口を舐められるのだけはいつまで経っても慣れないし、舌先で噛み痕を抉られると痛いものは痛い。
しかも時折傷口に吸い付かれ、血が強制的に宮地に飲み込まれてしまう。
その際に出される小太郎の喘ぎ声が聞きたくて宮地はいつも制止の声を聞こうとしない。
「んっ……痛い、からやめ……ひ、ぁ………あっ、ぅ」
「お前………可愛いわ、やっぱ」
「……もっ…ほんと勘弁し、て………ん、はっ」
「は、……でも嫌じゃねぇだろ……?」
色気たっぷりに耳元で囁かれ背筋を通って下半部がズクリと重くなる。
こっちがリードを取っている時は俺の下で乱れて喘いでめちゃくちゃ可愛いのに、一瞬気を抜いただけですぐ向こうにリードを持っていかれる。
そのくせリード持った時の宮地さんは組み敷かれる側とは思えない程に男前で格好良すぎるのだ。
もうこうなったら後は自分がひたすら喘がされるだけで拒否権はない。
「動く、ぞ……っ」
「んっ………は、ぁっ…く………みやぢ、さ…っ」
「きもちー……だろ?……ん、ぁ」
首から口を離すと今度は耳を甘噛みしながら自ら腰を揺する宮地に小太郎は小さく喘いだ。
耳が弱い小太郎はそこを中心に舌で攻められれば力は抜け、腰を突き上げようにも出来ない状態にされた。
「みみ、は……っだ、め……!ぁっ、や………ふ、ぁ」
「……ぁっ……は、かわいー……ぜ…ん…っあ」
「宮地さんっ……」
小太郎の制止の言葉も虚しく、結局今日は宮地のペースに乗せられたまま行為は最後まで押しきられてしまった。
それでも行為自体は気持ち良くなかったと言えば嘘になるのだが。
付き合う前では想像も出来なかった宮地の性癖(小太郎限定)に未だに戸惑うことはあるが、こんな所も自分が愛されている証拠だと思えて嬉しい。
そんなことを本人に言えばきっと一蹴されるに決まってるけど。
例えば、今もそうかもしれない。
「……………」
朝になり行為の名残が多少あるものの、すっかり落ち着いた体に寒さを感じていると不意に頭に何かが触れた。
目を開けなくても分かる。宮地さんの手だ。
優しい手付きにまた眠気が襲ってくるが、あまり寝てばかりいるとその内鉄拳が降ってくることになる。
「………宮地、さん……」
「おう」
目を開けると、思いの外近い距離に驚いた。
いやそんなことよりも、朝はいつも不機嫌MAXの宮地さんが優しく笑っていることの方が驚きだ。それも自分にだ。
絶対何か裏があるんだと恐ろしく思う反面、滅多に見せない優しい笑みはやっぱり格好良くて、ときめいてしまった。
「……何か良いことでもあったの?」
「んーや?何でだよ」
「だって宮地さんが優しい、から」
「俺はいつだって優しーだろうが」
「いだだっ……!!」
頭を拳骨でグリグリされ、涙目になる小太郎に笑いながら宮地はもう一度頭を撫でた。
確かにこういう所とか、いざって時は何だかんだで結構優しいなんてとっくに知ってる。
それが俺にだけじゃないってことも、知ってる。俺は宮地さんのそんなところが大好き。
「どうした?」
「…………?」
「泣きそうな面してんぞ」
「え…………」
そんなに痛かったか?と困ったように聞いてくる宮地に小太郎は首を横に振った。
違うよ宮地さん。宮地さんが他の人と平等に扱う中でも俺を特別扱いしてくれてるのなんて分かってる。
そのちょっとした『特別』の積み重ねが嬉しくて、もっと、ってなるんだ。
「どうしよう………俺、欲張りになっちゃった」
「欲張り?」
最初は付き合えるだけで嬉しかった。でも宮地さんの優しさや愛情を知る度に欲は深くなるばっかで底がない。
今もこんな風に頭撫でられて一秒前よりもっと好きになる。
我が儘なことだって分かってるし、こんなこと言ったら愛想尽かされるかもしれない。
それでも、
「もっと、宮地さんの『特別』になりたい……」
もっと愛されたい。
もっと傍に居たい。
もっと触れ合いたい。
もっと、もっと、もっと。
そう訴える小太郎に、撫でる手を止めてそっと手を離した。
宮地は小太郎から目を気まずそうに反らすと口元を押さえ、何とも言えない声を出した。
「あー…………おう」
「…………?」
心なしか赤い顔にキョトンとしていると、チラッとこっちを見た宮地と目が合った。
怒らせたわけではない様子にホッとする。宮地の言葉を待っていると今度は体ごと小太郎に向かい合った。
「……なんつーか……あー…」
「?」
「そういうこと言われた後で、とか………スゲー言い辛ぇんだけど……」
「…………!」
言い辛いって、宮地さんなに?まさか違うよね?
重い、とか思われても仕方ないのは分かってるけど……嫌だよ宮地さん。
宮地の言いにくそうな雰囲気に嫌な予感が走る。
彼の口から聞きたくないがために小太郎は弱々しく震える声で呟いた。
「………わ、かれる……とかじゃ……ないよね……?」
「!」
目を見開き驚いた顔をする宮地のそれは図星だったからなのか、等と考える暇も無いくらいのスピードで頭をしばかれた。
「馬鹿か!!なんっっでそうなんだよ!!馬鹿か!!」
「二回も馬鹿って言った!?」
「あぁ言うな!お前は正真正銘の大馬鹿だ!!終いにゃ轢くぞ!!」
「だ、だって………!今の流れ的にそうとしか………!!」
宮地のあまりの勢いに押されて涙目になる小太郎の頭をもう一度叩いた。
突然の暴力に抗議する小太郎に、腹が立ったんだから仕方ねーだろと明らかに怒っている宮地。
「……こんなつもりじゃなかったってのに…………ほんとお前……っぶ!!」
呆れ果てた様子に小太郎は意味が分からず腹が立ってきたのか、手元にあった枕を思いきり投げつけた。
勿論その後のことなんて考えているわけもない。ただ訳も分からないままなんで怒られきゃいけないんだ、と。
俺はただ宮地さんに伝えたかっただけなのに、と。
怒られることを一応覚悟したが、むくれる小太郎を宥めるように宮地はすまなさそうに呟いた。
「いや………まぁ、勘違いさせた俺が悪ぃな……」
「…………?」
「俺も色々計画っつか、順序とか雰囲気?……が考えた通りにいかねーからちょっと苛々しちまったわ」
「………計画って何?」
「ちょい待ってろ」
恨めしそうに上目使いで見てくる小太郎の視線を背に受けながら、棚から何かを取り出した。
手の平に握られたそれはしっかり拳に収まっているため、何かは分からない。
分かるのはとにかく小さい物だということくらいだ。
宮地は黙ったまま硬い表情でベッドに戻ってくると、拳を小太郎に突き出した。
「ん」
「え?なに……」
「手、出せ」
疑問に思いながらも宮地と同じように拳を突き出してみるとまた怒られた。
「違ぇーよ!手ぇ広げて上に向けろ!」
「……こう?」
「おう」
言われた通りに宮地の拳の下に手を広げて構える。
これから何をされるのかと見つめていると宮地は大きく深呼吸をし、小太郎を見つめ返した。
緊張が伝わったのか、小太郎は息を詰めて言葉を待つ。宮地の息を吸う音が鼓膜に響いた。
「俺はこういう性格だから、お前みたいに言葉で表現とかは出来ねぇ」
知ってる。
「だから出来る限り行動で表してきたつもりだ」
それも、知ってる。
「それでもお前が言葉とか欲しいのには気付いてた。………けど俺にはそんなん似合わねぇから他に何がいいか、とか色々考えたし………考えて先を想像したらお前にハマってんのが分かりすぎて……だから、」
ゆっくりと拳の力が解かれる。
「これ、お前にやる」
「…………え、これ…」
現れたモノに小太郎は目を見開いた。
優しく手の平に乗せられたそれが何なのかなんて聞くまでもなく分かってしまったが、それでも聞かずにはいられない。だって、これは。
「ここの合い鍵」
「な、んで…………?」
今まで宮地さんと付き合ってきて、無理矢理押し掛けることは少なくない。
宮地さんが疲れてる時も会える日は我慢出来ずに家に上げてもらっていた。
迷惑だって分かってても、文句を言いつつ入れてくれる優しさに甘えて。
だから、それが欲しくても言えなかった。断られたら、嫌われたらって考えたら怖くて自分からは言えなかった。
「お前だって一々ここまで来るの面倒だろ。どーせほぼ毎日入り浸って…………あー……こういうのがダメなんだよな?」
「えっ?や、十分嬉しい、けど」
宮地はいいから言わせろ、と笑った。
「一度しか言わねぇぞ」
あぁ、駄目だ。これを聞いたら俺はもっと欲張りになる。
聞いたら宮地さんのためにならないと分かっているのに、耳は一言一句聞き逃さないよう神経を集中させている。
「俺がお前を目の届く範囲に置いときてぇ……だから、ここに越してこい。一緒に暮らすぞ」
一緒に暮らす、それは俺がずっと夢見ていた光景で。そうなったらいいな、とそう思うだけだった。
でも今確かにこの人の口から出た言葉なのだと思うと自然と視界がぐしゃぐしゃに歪んだ。
「…………っう…ぇ………」
「な!?泣くなよ!」
「だっで……!ぅっ……あ、あぅっ……うー……っ」
ボロボロと大粒の涙を溢す目を拭ってやるが、一向に止まる気配はない。
あぁ……もうほんとに、可愛い奴だ。涙声で必死に何かを伝えようとする姿に耳を傾けた。
「うぇっ……ひっ…みやぢ…ざんがっぅ…ぢゃんと……俺のっこと!……好きだっだぁ……!!」
なーに言ってんだよコイツは。
可愛い、全身で自分の感情を表して俺の前に居るコイツがどうしようもなく。
それなのに、何で俺がお前と同じじゃねぇとか思えるんだよ。
泣きじゃくる小太郎を抱き締め、背中を擦ってやりながら言ってやった。
「好きに決まってんだろ?付き合ってんだからよ」
「っ……みやっ………っん」
口先に触れるだけのキスをすれば涙は何故か止まり、小太郎は目尻を赤くしたまま笑った。
宮地さんのこういう所が
俺をもっと欲張りにして
夢中にさせて
幸せにしてくれる
そんな君が本当に
「大好き、宮地さん」
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付き合うと普通にデレる男前宮地さん。初めて葉宮書いたので誰おま状態。
こんなハズじゃなかった感しかありませんね・・・・。個人的に小太郎は喘ぐと思ってます
葉宮は百合っぷる。可愛い。難しい。もう書かない。
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