「古市………落ち着いたか?」
「はい……ありがとうございます東条さん」
東条から渡されたコーヒーを飲みながら東条には少し狭い部屋に座る。
東条はアパートに住んでいて独り暮らし。 東条の図体からしたら少し小さいが居心地はいい。
「にしてもいきなり家来たからビックリした。何かあったのか?」
チャイムが鳴ったときは午後8時くらいでちょうどバイトから帰ったところだった。
玄関を開けると古市が酷い顔をしていて一体何なんだと思うのと同時に古市は俺に体を預けるように身を寄せてきた。
今思えば涙が滲んでいたかもしれない。
しかも口を開いたかと思えば開口一番に
『今日泊めてくれませんか……?』
だ。
取り合えず話だけ聞こうと中に入れた。
「東条さん……………俺のこと好きですよね」
「ん?おぉ」
古市は可愛いし素直だし触り心地も良いから好きだ。
一体それが何だというのか。
「なら
抱いてください」
「…………………こうか?」
古市を正面から抱き締める東条に古市は苦笑すると首を横に振った。 さすが天然な東条だ。
古市は分かりやすく東条の逞しい体のラインに手を添えて撫でながら色気を含む声を発する。
「体を繋げたいんです………俺と東条さんの……」
「……………」
驚いて目を丸めている東条は何となく可愛らしい。
でも直ぐに表情は元に戻って酷く真面目な顔をされ体を離される。
東条はあやすように古市の頭を軽く撫でて、ことの元凶である男の名前を口にした。
「男鹿はどうした」
「……………知りません」
「お前男鹿のこと好きなんじゃなかったのか」
「…………知りません」
「………確かに俺は古市が好きだ。でもな、こればっかりは無理だ」
「…………何でですか」
「男鹿に怒られるだろ」
いや、実際そんなことをしたら怒られるなんてものでは済まされない。
きっとぶちギレて悪魔の力を使い、東条だけではなく周りも巻き込まれてこの辺り一体黒焦げになってしまう。
そんなこと古市だって分かっている。
でも古市は分かっていて尚、東条に抱けと言った。
「男鹿はどうした」
「………………邦枝先輩と修行」
「嫉妬してんのか」
「嫉妬………?するに決まってるじゃないですか」
「腹いせに俺とすんのは違うだろ」
「………腹いせとかでこんなこと言うほど落ちぶれてませんよ」
「ふる「東条さん」
言葉を遮り、古市は目一杯力と体重を込めて東条を押し倒した。
東条が力を入れていたらきっと後ろに倒れてはくれなかっただろう。
東条は古市に手を伸ばし自分の胸板に押し付けるように抱き締めた。
「男鹿とはしたのか」
「……………」
ふる、と首を振って否定する。
サラ……と流れる銀髪に指を差し入れながら、そうか、と。
武骨な手に似合わず触る手つきは優しくてやはり男鹿に似ている。
「ならなおさら無理だ」
「なんでですか………?」
「初めてを俺にって…………、絶対後悔すんぞ。お前のためにも俺はやらねぇよ」
「別にそんなの…………俺の問題じゃないすか」
「お前が好きだから言ってんだ」
「……………」
東条さんのヘタレ………………
「じゃあキスだけ。キスなら男鹿としたことあります」
中学のときに。
俺が寝てたときに男鹿がしてきたのと、男鹿が寝てたときに俺がしたのとで二回。
そのときはどっちも本当は起きてたし、起きてることに気付いてた。
でも互いに秘密にして今まで過ごしてきたから指摘することも出来なくて。
「古市は俺と男鹿を重ねてるだけだろ?男鹿が帰ってくるまで待て」
「そりゃあ………待てないわけじゃないですよ。だけど…………もう…………」
きっと男鹿が一人で修行に行っていたなら待てた。
でも実際男鹿は邦枝先輩と一緒にいて…………
「何で俺を呼んでくれなかった?
どうして置いてった?
そればかりが頭の中にあって………」
今にも泣き出しそうに顔を歪める古市に東条は見るに堪えかねてそっと唇を重ねた。
乾燥していてかさついていたが古市は柔らかく、ずっとその感触を感じていたいくらいだ。
東条は古市から名残惜しげに離れた。
「泣くな」
「何言ってるんですか……泣いてません」
「涙出してなくても顔が泣いてんだ」
「……意味分からないです」
だって涙は出ていない。 顔が泣いてるってなんだよ。
やっぱり男鹿と東条はこういうわけの分からないことを言うとこも似てる。
東条の二度目の温かい温度を唇に感じながら、
男鹿に会いたい
そう思った。
―――――――――――――――――――――――――
東古要素強めですがそれでも男鹿古は深く愛し合ってます。
一体これは何処に向かうのでしょう・・・・・・・。
というか古市が不安定な子すぎる・・・・
こんな感じの古市に耐えられない方はここから先は見ちゃだめ!
次は男鹿独白
スポンサードリンク
コメントフォーム