*ヒルダ視点
大分傷も癒え、魔力も半分回復した。
ドブ男の匂いにも飽きた、外の空気を吸いたい。
「少し外に出てみるか…………」
男鹿はどうやら坊ちゃまと一緒に修行に行っているらしい。
さすが坊ちゃま…………
早く帰ってきてご成長なさった姿をお見せください。
ヒルダはいつまでも待っております。
「……………あれは」
屋根を飛び移っていると古市を見つけた。
動きを止め、古市を観察してみるがやはり奴隷を見ても何も楽しくない。
全く冴えない男だ。 それにどこか意識は遠く、何やら考え事をしているようだ。
「そういえば男鹿の修行には置いていかれたのだったな」
それでへこんでいるのか? だが男鹿が古市を置いていくところなど今まで何度も見ている。
何故今更気にする必要があるのだ。
「………………あぁ、そうか」
邦枝が一緒だからか。
人間の男と女。 自然の摂理ではこの二種は一緒になるのが普通だからな。
あのアホは心配なのだろう。
男鹿が邦枝に取られるかもしれない、と。
「………いや、少し違うか?」
男鹿の心が自分から邦枝に移るのではないか、そう思っているのであろうな。
あやつ等は好き合っておるらしい。それは見ていれば分かる。
だが付き合ってはいない。互いに素直になれていないだけかと最初は思っていたがそれもどうやら違うようだ。
それにあやつ等は互いが好き合っていることも知っていた。
では何故付き合わないのか………
一度聞いたことがある。
『あ?あー…………分からん。古市が言わねぇから、かもしんねぇ』
『どういうことだ』
『古市が言わねぇのは意味があるからだろ?だから俺は古市が良いって思うときまで言わねぇ』
『古市はいい。貴様は………』
『別にコイビトになんなくたって古市は俺のだし、俺は古市以外いらねぇ。古市もそれ分かってんだからそれでいーんだよ。
つかてめぇにゃ関係ねーだろ』
何とも馬鹿な奴等だ。 見ていてイライラする。
男鹿は自分の欲に従順な割に古市の言葉には反応を示す。
他の者の指図は受けぬくせに古市の言葉には一応耳を傾ける。
今は無駄に古市の感情を読み取り、それに従おうとしているが……
「こういうときこそ自分に従えば良いものを………」
あのドブ男め。
いや、古市共々腹が立つ。
「……………何をしているのだあいつは」
古市を暫く観察していると不良に絡まれている姿が目に入った。
…………面白い。 もう少し様子を見るか。
軟弱な古市が一人で一体どうやって切り抜けるのか。
「………………」
壁に追い詰められた古市は必死だがどこか諦めているように見える。
まぁいざとなれば助けてやるが……
今の奴は見ていてつまらん。相手を殴り返すことはせんのか。
男鹿をダシにやられそうになっている古市の前に一人の男が立ちはだかった。
「ほぉ」
男鹿が一度負けた相手。
「東条と古市、か」
何とも可笑しい組み合わせだ。どうして東条は古市を助ける?
一体私が休養している間に何があったのだろうか。
東条の古市に対する態度や雰囲気は恋慕によるものというのは何となく分かるが、何故東条が古市に惹かれている?
古市は…………何故あやつに向かってそんな表情をしている?
それではまるで貴様が東条を好きなように見えるぞ
「これがリアル昼ドラか」
最近見たものでもこんなシーンがあった気がする。
所謂三角関係でさしずめこの状況は不倫現場、というやつだな。
……………もう少し見ていたいものだが男鹿の姉に居ないことがバレては少々面倒だ。
「帰るか」
スカートを翻し、ヒルダは来た道を戻っていく。
「……………男鹿」
貴様、早く帰って来ぬと取り返しのつかないことになるぞ………?
今のところ古市はまだ完全には東条が好きなわけではなかろう。
ただ、あのアホがしかと捕まえておらんから古市は東条のような奴に流れる。
男鹿と古市がどれほど好き合っているかは知らんが…………
「好きならきちんと捕まえておけ、馬鹿者」
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ヒルダさん視点です!
もう・・・・・・・・疲れました
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