俺には前世の記憶ってのがあるらしい。
つってもそんなにはっきり分かるわけじゃねぇし、薄ぼんやりと輪郭が分かるくらいだ。
ただ、初めて会った気がしない奴は大概前世で見知っていた奴が多い。
皆、戦国に共に生き、闘った奴等ばかり。
こうして今世で廻り会えたのも何かの縁だと一緒につるんで、バカやって平和に過ごしてる。
そんな平和の中、子どもの頃からよく同じ夢を見る。
その夢には自分と沢山の兵と………いつも独りの、武将がいた。
オクラみたいな翠の兜を被った武将。
よく分からないがその夢を見る度胸がズキズキと傷み出し、後悔が胸を過る。
一体何に後悔しているのか知らないし、それはきっとその時を生きた俺にしか分からないことだ。
だから今世の俺には関係ない。
教室に行くと真っ先にクラスのムードメーカー、前田慶司が手を振ってきた。
こいつも前世の知り合い。
「元親!おはよーさんっ」
「よぉ前田、政宗はどーした?」
「さぁ?まだ来てないぜ」
「そーか………」
今日は政宗に頼まれていたブツを持ってきたんだが………来たら渡すか。
政宗…………伊達政宗も前世の友達だった。
機械弄りが好きな俺はしょっちゅう政宗にアレの改造を頼むだの、コレの改造を頼むだのと言われる。
今回のは自信作だったから早く見せたかったのに、と長曽我部はがっかりと溜め息をついた。
すると前田が異様に明るい声で話題を持ってきた。
「それより元親聞いたかっ?今日転校生来るんだってよ!」
「ははーん、それでハシャイでんのか。ちなみに女?」
「分かんねぇけど、さっき職員室で見たって奴がすげぇ美人って言ってたぜ?」
「て、転校生でございまするかっ!」
「おぅ真田……つかお前猿飛はどーしたんだ?」
急に食い付いてきた真田幸村に元親はいつも一緒にいる猿飛佐助の姿が見えないことに気付く。
まるで保護者のように幸村に付いているため、いないことに驚いた。
「佐助は教科書を忘れたと春日殿のクラスに…………、そんなことよりも転校生と言っており申したが本当でござるか!」
「あぁ!女の子だったら恋の予感だね!」
「は、破廉恥でござる慶司殿っ」
「たかが恋ぐらいで破廉恥なんて言ってちゃ、この先が思いやられるぜ。な、元親」
「「政宗(殿)!」」
鞄を乱暴にぶら下げて登校してきた政宗は実は幸村のことが好きだ。
それは慶司や元親だけではなく皆が知っていることなのだが………やはりこういったことに疎い幸村本人は気付いていない。
政宗の必死のアプローチを見ていて可哀想と思えるくらいだ。
この手のことに関しては前田が一番首を突っ込んで政宗をよく応援している。
俺は傍観者ってとこか。
「ま、アンタのそーいう初なとこも魅力的だけどな」
「某も政宗殿の気配消しには感服致すっ」
「いや、政宗は別に気配は消してなかったと思うんだけどなー」
「用は存在感がなかったってぇことだろ」
「よっし元親表出やがれ!」
いつもの如く政宗と元親は軽口を叩き合って、それを慶司が止めて幸村が笑っている日常。
そこにはまだあと二人、実は足りない。
その二人は学校近くのアパートに住んでおり、一人は朝が弱いため隣人に起こしてもらい、その隣人といつも朝礼ギリギリの時間に登校してくる。
元親達が話していると教室のドアが勢いよく開いた。
「おはようっ!」
「………………」
「家康、三成、おはよー」
「今日も時間ギリギリでございまするな!」
「たまには早く来いよ?You see?」
「今日は転校生が来るんだとよ!」
「それは本当か元親!早く絆が出来るといいな!」
「…………転校生ぐらいではしゃぐな」
朝が弱いという三成の眉間に皺が寄る。彼等は徳川家康、石田三成とそれぞれいう。
戦国の世では家康を憎んでいた三成も現代では憎しみも薄れたのか、一応は普通に接している。
ちなみに戦国の記憶は皆が皆はっきり覚えているわけではないし、元親のように薄らぼんやりとしか記憶がない奴もいる。
皆胸の内では色々思うところは勿論あるが平和な今となっては個々がそれを胸の中に閉まった。
だから今更掘り起こそうとする者はいない。
「しっかし中途半端な時に転校してくんだな」
「確かにな………もう6月だぜ?」
「急な出張か何かだろう。人が皆貴様等のようにダラダラと生きているわけがない」
三成の言葉に元親はケラケラと笑うが、政宗は明らかに苛立ちを表に出している。
そんな風にいつも通り戯れているとチャイムがなった。
皆楽しい時間を邪魔されたと面倒くさそうに各自席に着くが、教室はザワザワと騒がしい。
担任が入ってきた瞬間、クラスの目が一斉にドアの方へと向いた。
確かに美人であるが女子ではなく、美形の男が立っていた。切れ長の目は気が強そうだと感じる。
担任が転校生の事情を説明するところによると、三成の言う通り急な転勤があったらしい。
名は…………
「毛利元就と申す」
その名を聞いた途端、政宗や家康が俺を振り返った。
首を傾げれば二人とも目を見張ったが直ぐに視線を反らされた。
「毛利君、窓際が空いているだろ?あそこに座って、教科書は隣の長曽我部に見せてもらいなさい」
「はい」
「………………」
教壇から真っ直ぐ進んでくる毛利元就に視線を固定して凝視する。
歩く姿もそうだが、ゆっくりと椅子を引いて座る動作も無駄がなく美しい。
うっかり見とれていると睨まれた。
「何を見ておる」
「いや、キレーな顔してんなと思って…………」
「…………………」
ふぃ、と反らされなんとなく腹が立った…………つーか普通にムカつく。
人が褒めてやったってぇのにその態度はねぇだろ。
だが一度そんな態度を取られたくらいで引けを取るような男ではない。
取り合えず一時間目は社会。教科書を見せようと机を寄せるとかなり嫌そうな顔をされたが、仕方ないとくっつけた。
もう一度毛利を覗き見るとさっきよりも鋭く睨まれた。
「おめぇよ、何もそんなにツンケンするこたぁねーだろ」
「黙れ。口を開くな」
「……………てっめ!」
「それに………そなた等も言いたいことがあれば言えばよかろう」
「?」
長曽我部には誰に対して言っているのか分からなかったが、政宗は小さく舌打ちした。
チャイムがなり、教師が入ってきて授業を始めた。
小首を傾げながら毛利と政宗を交互に眺めるが二人とも何も言わない。
教科書を広げ、黒板を見つめる毛利に視線を固定していると睨まれた。
「何をジロジロ見ている。気分が悪い、下衆が」
米髪に血管が浮き出る音がした。
「んだとぉ?毛利てめぇぇ………」
「我は本当のことを申したまでよ」
第一印象、キレイ。
今の印象、最悪。
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大体のCPは親就・蒼紅・関ヶ原・主従コンビ
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