毛利元就。冷酷卑劣な中国の知将。
ずっと対立してきた相手。
俺の大嫌いな、アイツ。
「……………殺せ」
「……………………」
幾度となく闘いを重ねて今日、毛利元就は西海の鬼、長曽我部元親に敗れた。
長かった闘いにようやく終止符が打たれるというのに、この態度はなんだ。一武将として潔く死ぬというのなら分かる。
彼等は皆、潔さの中に死ぬ直前、今世に対する様々な想いを瞳に映してから死んでいったというのに、違う。
毛利元就は、違う。
長曽我部は毛利を好敵手として闘うことを少なからず楽しんでいたし、こんな日が来ることも覚悟していた。
だからこそ好敵手である長曽我部に敗したということに関して何かあるはずだと思っていた。
長曽我部自身、あの毛利元就を屈服し、何を言われるのか少し期待していた。
好敵手として見ていたのは自分だけではなかった、と。
なのに、『殺せ』と紡いだ音には何もない。
この世に対する想いも冥界へ行くことへの恐怖も何もない。
瞳すら総ての理を自身とは切り離しているような、そんな色をしている。
この男は何もないのだ。後世へ残したいものも、自身の証も。
総てを客観的に捉えて。
長曽我部は言い表しようのない空虚な感情を沸々と沸き上がらせた。
「テメェは………俺を本気でなんとも思ってねぇんだな」
「…………………」
「何か言えよ………毛利」
好敵手だと思っていたのは自分だけだと、理解はしていた。
それでも闘ってきた中で多少は変化したのではないかと、対等に闘える相手として見られているのではないかと思っていた。
それも勘違いに終わってしまった。毛利元就はその自身すらも捨て駒と称していると、以前聞いたことがある。
毛利の繁栄、安芸の安泰のためであれば自身すら捨てられる、と。
そんな馬鹿なとその時は思ってたが事実、自身の命にすら無頓着であることは眼を見れば分かる。
そんな相手を今まで好敵手だと信じてきたやりきれなさが胸を締め付ける。
「毛利よぉ………、ここで死んじまっていいのか…?」
「……………………」
口を開かない毛利と視線を合わせるために目の前で腰を下ろし、手を伸ばした。
首元まで伸ばされた男の手に毛利は静かに瞼を閉じ、待つ。
首を折られるのだと認識していた毛利は急に気配が上昇したことに気が付いたが、碇槍で斬られるのであろうと気にしなかった。
しかし、何時まで経っても痛みは来ない。ふと目を開けようとした時、頭が軽くなった。
「………………?」
「いや………えー……と」
兜を取られたと知った毛利は怪訝な顔で長曽我部を睨んだ。
長曽我部は頭をガリガリと掻いて言い訳を考えているようだった。
「………俺、あんまアンタの顔見たことねぇなって、よ。死ぬ前に一回、見ときたかった」
「…………下らぬ」
急に口を開いた毛利に長曽我部は驚きながらも手に取った兜を地面に置いた。
兜を脱いだ毛利は今までの認識を改めさせられるもので、随分と小柄に見える。
そして何よりも端整な顔立ちをしている。
細かな髪が風に流れる姿は美麗で、切れ長の瞳には惹き付けられるものがある。
「アンタ………そんな面してたのか。兜取った姿は初めて見らぁ」
「下らぬ、と申しておる」
「下らなくねぇよ。俺にとっちゃあ、好敵の顔だ」
「……………我は」
「そんなこと思ってねぇってか?そんなお前の事情なんか知らねぇよ。俺はお前以外に好敵手なんぞと呼べる奴ぁいねぇ」
そうだ、結局………奥州の独眼竜達のような強者ではなく、自身には毛利元就しかいない。
彼以外にも確かに好敵と言える武将はいる。だが、毛利元就なのだ。
後にも先にも好敵手は彼以外にありえない。
「……もう良かろう、早く殺せ」
「…テメェは………………」
「何ぞ」
「………いや、なんでもねぇ」
長曽我部は何かを言いかけて躊躇い、止めた。きっと毛利はもう答えてはくれないと感じたからだ。
二人の間を舐めるように風が通り、海が波を静かに立たせる音が耳元で聞こえるようだった。
「あばよ。中国の智将、毛利元就」
海風がもう一度二人を駆け抜けた瞬間、碇が降ろされた。
海岸沿いに腰をどっかりと下ろした海賊の、日が海に沈んでいく様をぼんやりと眺めるその瞳は釈然としておらず、何処か空虚な色で橙に染まる海を捉えた。
「……………なぁ、毛利よぉ」
アンタは
一度でも人間に生まれてきて良かった、と
そう思ったことはあったのかぃ。
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雰囲気が伝わってくだされば嬉しいんですが・・・・分かりませんよね。
3のゲームとは全く関係ありません。私の勝手な妄想です。
この話からの転生ですが、全く何も考えていないので長編にするなよって感じですが、
ぼちぼち書いていくかもしれないので一応。
このときはまだお互い好きとかそういうのはありません。
転生してから色々あってまあどうにかなるんじゃないかなあ・・・・・・・・・・
殺すことにものすごく躊躇いがありましたがあっさりめに書かせて頂きました。
次からは転生話です。
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