学校が終わりのチャイムを鳴らし解散、それと同時に古市は自宅に電話をかけた。
出たのはほのか。


「うん………今日も泊まって来るって母さんに言っといて」
『えーまたぁ?お兄ちゃんが居ない間、あたしが全部手伝いしなきゃいけないんだよ?』
「分かってるって。今度欲しがってた雑誌買ってやるから」
『え!本当?』
「本当」
『絶対だからね!!』


渋々といった感じだったが雑誌のことに関しては嬉しそうだった。
自分の我儘でほのかに迷惑は掛けたくないが、一日二日の間で俺は東条といることが増えた。
男鹿がいない今、東条の傍は確かに俺の心が置ける場所になっている。

俺は普段から男鹿へ恨みを持っている奴等から憂さ晴らしの対象として狙われているから、東条の傍が最も安全だと踏んでる。
実際問題すでに何度か狙われたが何れも東条に助けられている。
…………こんな言い方じゃ、東条を男鹿の代わりにしているようなものだ。

でも、それはちょっと違う。
身代わりとかそんなのじゃない。




「古市もう電話いいのか?」
「あ、はい。大丈夫です」

「じゃ行くか。庄司、かおる」
「あ、東条さん俺等寄るとこあるんで先帰ってて下さい」

「そうなのか?」
「………本をちょっとな」


相沢と陣野の二人に促されて東条と古市は鞄を持って学校を出た。
古市は東条の半歩後ろを歩き、広い背中を見つめながら男鹿を思い出した。
今アイツはどんなことをしていて何を邦枝先輩に話しているんだろう、きっと怪我してるよな……ちゃんと手当てしてんのかな、とか。

男鹿のことを考えれば考えるほど気分が下降していく。

そんな古市に気付いたのか、東条が他愛のない話を振ってくれた。
今日朝、可愛い猫を見ただとか犬が触らせてくれた、なんて無邪気に話す東条は子供みたいで可愛い。
見ているこっちも元気を貰っているような気がする。
それを伝えたくて笑顔で言った。



「東条さんと居るの心地好いです」
「そうか?」

「はいっ、ありがとうございます」
「………お前もっと笑え」

「え」
「この間から沈んだ顔ばっかしてたろ?今みたいに笑え。古市は笑ってるほうが可愛い」
「………可愛いくないです」
「そーかそーか」


照れて若干頬が赤みを差す。
言えばきっと怒るだろうから自分の中だけで可愛いと思うことにした。


東条の家に入るのはこれで二度目だが、間取りはだいたい覚えている。
肌寒いためストーブをつけ、暖を取ろうとするが東条にのし掛かられるように抱き締められた。


「重いです」
「そうか?気にすんな。暖けぇだろ?」
「…………まぁ、暖かいですけど」
「古市は冷てぇな」

冷え症の古市にとって子供体温の東条からは離れがたく、抵抗もしない。
体が冷えており唇も冷たくなっていたが急に温かいと感じたときにはキスされていた。
啄まれるだけで満たされる古市は東条のキスを受けて答えるように手を添える。


綺麗に閉じられた銀の瞳が見れないのは残念だが淡い桃色に染まった目元が愛しい。

本人は否定していたがおそらく自分は男鹿の代わりのようなものだ。
無意識に自分を癒してくれる、慰めになる相手を探していた。
そこで辿り着いた答えが俺。



今だけだ。

俺も古市も。



古市は今の現状に耐えれねぇとかグダグダ言ってたが解決法なんか簡単だろ?
要は男鹿と古市が腹割って全部話しゃいい話だ。

まぁ多分変に頭の良い古市のことだからな…………、色々俺とか男鹿には分かんねぇ難しいこと考えてんのかもしれねぇけど。
…………なんにせよ、男鹿が帰ってきたら帰さなきゃいけねぇ。

アイツの元に




「…………帰したく、ねぇ……な」
「?、今日も泊まりですよ?」
「ん?あぁ、そうだな」


そういう意味じゃねぇよ、と小突いてやろうかと思ったが止めた。
なるべく古市に男鹿のことを考えさせない方が良いような気がしたからだ。

古市は男鹿のことになったら面倒なことばっか考えてる。
俺と居るときぐらい忘れて楽にしてほしい。


「そろそろ風呂入ってこい」
「あ、はい。お言葉に甘えて行ってきます」
「飯作っといてやるからな」
「楽しみですっ」


笑顔で応えると着替えを持って風呂場に入った。
脱衣を済ませて風呂に入り、シャワーを捻ると温かいお湯が出てきて気持ち良い。
体を手早く洗って湯船に浸かった。



「…………男鹿も風呂入ってんのかな」

どんな修行してんだろ…………強くなること以外のこと考えてねんだろうなぁ…………
俺のことちょっとくらいは考えてねぇのか………?

考えるわけねーか。

俺のこと好きなくせに放置だし。電話くらいくれりゃいいのに…………
俺が好きだっつってもどうせ

コロッケ>喧嘩>>>>越えられない壁>>>>古市

だろ。



「男鹿のぶぁーか…………」

早く帰って来ないと俺、冗談抜きで東条についちまうぞ………?
一日たって大分落ち着いた。

でもやっぱ……………お前が邦枝先輩と一緒に居んのは嫌だ。
お前のこと信じたいけど……

裏切られたような気持ちのまま信じられない。

他の誰でもない、邦枝先輩だから。
男鹿の俺しか知らなかった優しさを知っている邦枝先輩だから、
絶対に揺らがなかった男鹿を信じる気持ちが不安定に揺れてるんだ。

他の人なら気にしなかった。
でも邦枝先輩にはべる坊だって懐いてて強いし美人でお似合いじゃんか。
俺が不安にならないってどうして男鹿は思うんだろう。

いや、本当はもう邦枝先輩が男鹿に告ってて二人は今頃…………






「古市ー?早く上がって来ねぇと冷めちまうぞっ」

ドアの向こうから聞こえた。

「今上がりまーす!」








東条の手作り料理を食べて、今日はもう寝ることになった。


一枚の大きい布団に転んだ東条が古市を手招きで呼ぶ。
隙間に入れば東条の腕に抱き締められ、胸がドキドキした。






「俺…………男鹿のことばかり考えるんです」

暗くした部屋の中に古市の声が小さく聞こえた。
東条は何も言わずただ耳を傾ける。



「東条さんと居ることで忘れさせてもらえるような気がしてたんスけど………… 無理で。
東条さんと居ると気分も軽くなるし、楽しいです。でも…………俺、男鹿が邦枝先輩と一緒に居ても………
 
俺と強くなるんじゃなくて邦枝先輩と強くなろうとしてても、男鹿のことがやっぱり好きなんです。
昨日の夜はそれがどうしようもなく嫌で、考えれば考えるほど頭が痛くなるし………

耐えられなくて東条さんにすがりました。
胸の中が苦しくて、なんか黒いのが渦巻いてて。

そんなとき、貴方なら………東条さんなら俺の中の黒いものを取り除いてくれそうな気がして……
実際、東条さんは男鹿がいない今の俺の居場所で、安心出来ます。

…………俺に付き合ってくれてありがとうございました。

もう大丈夫ですから…………明日からは一人で頑張ります。
俺から東条さんに頼んでおきながらこんなこと言う資格ないと思うけど……………

やっぱり一時の感情で逃げたのは間違いだから……………んっ……」


唇に一瞬だけ触れた。



「……………これが最後のキス、な」
「……………はい」


男鹿に裏切られた気がして哀しくて虚しくなって逃げてきたのに。
東条は俺自身をごまかすために利用しただけなのに。

そう思うのにどうして俺は東条と触れ合うだけでこんなドキドキしてんだろう。




「古市」



ギュッと強く抱き締めて、掠れた声で古市の耳元で呟いた。






「それでも、俺がお前を好きだっつーのは忘れんな………。また何か困ったことがあったら来い。俺が助けてやる」







「…………っ」


20111218-182459.jpg




胸が妙にムズムズして、落ち着かなくて顔が熱くなるのが自分で感じられた。


俺はこの感覚を知ってる。
いつも身近に感じてた。


いけない。

早くこの人から離れないと



そのことに気付いたから今日東条に話して離れようと思ってたのに

本当はまだどうしようもない気持ちでいっぱいだし、一緒に居たい。


だけど







早く帰って来い男鹿………





じゃないと










俺は墜ちてしまう


―――――――――――――――――――――――――――――――――

東古要素強めでした。
古市は一途以外ありえない!!の方に怒られそうです・・・・;

しかも古市結構酷いよこの子。

古市君も人間だからこんなときだってあるさ!!
うんうん

■追記 
   
久しぶりに絵が描きたくなったのでなんとなく挿絵書いたんだけどうわあああ・・・・・・
入れないほうが良かったね・・・・・
色塗りは嫌いだから塗ってないww真っ白ですけど何かああああああああああああ
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