「おい。貴様今日が誕生日らしいな」
「あ?何で知ってんだ?」
「ダァ?」
ヒルダにいきなりそう言われた。
まぁ大方、男鹿の家族に聞いた所だろうが。
「この私からプレゼントをやろう」
「いや人の話し聞けよ」
「だ」
ヒルダは男鹿を無視してある小瓶を取り出した。
中には何か透明な怪しい液体が入っている。
「さて、アランドロン」
「はい」
「?」
「う?」
アランドロンがヒルダの後ろから現れた。
もうお馴染みのパカッという効果音がした途端、中から人が飛び出してきた。
「う、わぁ!っんだよ!?またこれ!?」
中から出てきたのは銀髪の幼馴染み。
「古市?」
「おい、貴様これを飲め」
「へ、男鹿にヒルダさん?男鹿の部屋?」
「では私はこれで」
アランドロンは古市だけを残してさっていってしまった。
「つか飲めって………なんスかこれ」
差し出された小瓶を受け取り中身を見る。
とりあえずヒルダが渡してくることから魔界のものであることは分かる。
「いいから飲め、飲めば分かる。ちなみに人体に影響はないから安心しろ」
「古市やめとけ。ろくなことになんねーぞ」
「言ったであろう。これはプレゼントだ。貴様が損をすることはないぞ」
「えぇーっと、出来れば飲みたくないです………」
「飲・め」
ヒルダの鋭い眼に負ける。
仕方がないと小瓶に口をつけた。
えぇい!
こうならやけだ!
グイッと喉に謎の液体を流し込む。
味は少し甘く、予想に反してそんな激物ではないようだ。
そして飲んでいる間、妙にヒルダさんがニヤニヤしているのが気になる。
「の、みましたけど…………これなんなんですか?」
「素直薬だ」
「は?」
「まぁ後で嫌でも効果が分かると思うぞ」
「なんでもいいけど早くでてけよ。古市、ゲームしようぜ」
「おぉ………」
ヒルダは口角を上げながら古市に部屋を出るさいに言った。
「知っているとは思うが……今日は其奴の誕生日らしい」
「あ、はい」
その確認だけするとヒルダはすぐに立ち去った。もちろんべる坊を抱えて。
男鹿はゲームの準備をしながら古市にコントローラを投げた。
「なぁ、プレゼントねーの」
「は?誕生日のか?」
「それ以外ねーだろ」
「……………何がいい?」
「えー………」
まさか希望を聞かれるとは思わなかった。
てっきり『んなもんあるわけねーだろボケェ!』と言われるかと思った。
少し悩んでから古市がしてくれそうにないことを言ってみる。
「キス………。古市からキス」
「!」
絶対ヤダ!つか俺からキス?
いや、でもプレゼントがキスで良いって……………マジでか。
いやいやいや!それでも恥ずかしい!
なんて一人で葛藤していたはずなのに。
気づけば体が勝手に動いていた。
「ん………ん、ん」
「っ!!」
男鹿の上唇を食んだり、角度を変えて啄む。勿論古市の意思ではない。
古市本人も驚いている、そして当然男鹿もその行動に驚いていた。
自分から言っておきながら絶対に拒否られると分かっていたから。
しかも古市の手は男鹿の両頬包み、離さない。
「どうだ?私からのプレゼントは」
さっき下に降りていったはずのヒルダがドアにもたれてこちらを見ていた。
「ちょ、古市離れろ」
「……………」
古市の体を押しやると、キスは諦めたのか抱き着いてきた。
「ヒルダ…………これ何?」
口が引きつる。
「古市が素直になったらこういう感じになるというだけだ。口では嫌がっていても本心ではないということだろう」
「…………っヒルダさん!?これどうやったら元に戻るんですか!?」
さっきから黙っていたようだが、どうやら自分の行動に硬直していたらしい。
「今日が終われば薬の効果は切れる」
「そんなぁ…………それまでこのままって!!」
「古市が………素直なの、新鮮だな」
「そうであろう?今日一日だけ坊っちゃまは私が預かっていてやる」
「サンキュ」
男鹿はくっついて離れない古市を抱き締めた。
「最悪………」
「そうは言ってても腕はちゃんと背中に回ってっけどな」
「うっさい」
確かに男鹿にこうされんのは好きだ。キスだって本当はしてやりたい。
男鹿はなんか嬉しそうだし。
そりゃあ………いつもはこんなの許さないしキスだって俺からしない。
今の状況に男鹿は万々歳なわけだけど。
「なぁ古市」
「………んだよ」
「考えてることと体が別のことすんの嫌なんだろ………?」
「嫌に決まってんだろ」
「なら、今日だけお前の意思で素直になりゃ薬も意味ねんじゃね?」
「それ俺が結局恥ずかしい思いしなきゃだめだろ」
古市に頭を叩かれた。
どうやらその行動は本心だったようだ。
「なら俺のプレゼントは素直な古市がいい」
「マジ?それ以外いらねーの?」
「たまには素直な古市堪能してぇ」
極稀に素直なときがあるがそんなの滅多にない。
「あと、好きって言えよ」
「う……………」
勝手に口が開くのかと思い歯を食いしばるがなんともない。
どうやらあの薬は体が正直になるだけのようだ。
「…………?」
男鹿は多分それを知らない。
なら今ここで好きと言ってしまっても気付かれないかもしれない。
「好き」
「っ」
男鹿が唾を飲み込むと喉が僅かに動いた。
「男鹿が好き…………だから、お前も言えよ?」
「好き」
「うん」
「好き好き、好きだ古市。好きだ」
「待て待て待てっ、怖いっつーの」
そうは言っても古市の顔は照れ臭そうに笑っている。
男鹿は古市に甘えるように顔を肩に預けた。
「あとはー」
「まだあんのかよ」
「んじゃあ俺の好きなとこ言え」
「……………」
うぇぇええええええ!!??マジか!?
素直に言わないと駄目かこれ!!
……………せっかくの誕生日だしな
さっきの同様、俺からのプレゼントってことでいいのか?
そうこう考えてる内に体はまた勝手に男鹿に擦りよって甘えている。
「……普段はただのアホのくせに、俺が危険なときは男前なトコとか………?その喧嘩してるときの目も好き、かな……」
「……………」
男鹿は黙って古市の言葉を聞き漏らさないようにしている。
古市からしたら食い付きすぎだろ………という感じだが。
「俺より逞しいっつーか……男らしい腕も、胸板も大きい手も好きだ。…………あとは声、も」
「声?」
「お前は意識してないかもだけどなっ、たまに二人きりのときの甘い声が……………俺的にはヤバイ。………それに耳元で低く声出されんのも弱い、かな」
あれ?今なんで俺は自分の弱いことカミングアウトしたわけ?
え、オイオイ男鹿クンよ。
目が無駄にキラッキラしてんぞ?
「そうか、古市は耳元で低い声出されんのがイイのか」
「………っ!」
あああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!
墓穴掘ったあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!
男鹿は古市の耳元に口を近づけて囁いた。
「…………愛してる、今日はこのままお前貰ってもいいか」
「っっぁ/////////」
微かに耳を舐められ体がピクンと震えた。
古市の顔を覗くと目にはうっすらと涙。
「襲うなって言うほうが無理だろ」
「べ、別にダメとか言ってないっ/////」
それに、拒否してもこの体は勝手に動いて男鹿を誘ってしまうのだろう。
なら自分の意思でしたい。
「古市…………」
「……………////」
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古市はこの後、体が素直になるということの本当の怖さを知った。
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「で、古市はどうだった?」
「さいっこうに可愛いかったぜ」
「ふざけんなバカ男鹿―――――!!!!!!!」
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男鹿誕でしたあ!!
素直な古市きゃっっほおおおおおおおおおおおおいwwww
押し倒したいね☆
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