「黄瀬っ、」
「っ!」

後ろから呼ばれる。
この声は青峰。

「ちょっ、待てよ!逃げんな黄瀬!!」

無意識に動き始めた足。
止まらない。

「……ハァッ……ハァッ…」

階段を駆け上がる。
早く、早く……!
逃げないと…!

「待てって!」

腕を掴まれた。もう逃げれない。

「何か最近俺のこと避けてるよな?」

壁に追い詰められ、両側を腕で遮られた。
後ろには壁、前にはお前。

「……別に、避けてないっスよ」
「嘘つけ。じゃあ何で顔合わせようとしねーんだ」
「っ………」

なんとなくムカついて、顔を上げる。

「…あ…………」

鋭い瞳で射抜かれた。

「なぁ、何で?理由ぐらいあんだろ?」
「ちっ……近い近い!近いっスよ、青峰っち……!」

顔と顔の間に10㎝あるかないかの距離。

「なぁ、理由は?」
「……人の話聞けよ。近いって……」

青峰の中学生にしては逞しい身体を手で押し返す。

「……1on1もしようって言わなくなった」
「そ、れは…最近モデルの仕事の方が忙しくて……」
「俺が話しかけても素っ気ないし、顔も合わせようとしねぇ」
「………それは…………」

言えない。
言いたくない。

「言いたいことがあんなら言ったらどうだ」
「別に……何も」

ふーん、そう返ってきたかと思えば青峰の右手が伸びてくる。

「…………っ、」

殴られるのかと思ってギュッと目を瞑った。
が、予想は外れ優しく頬を触られた。

「?、なに……、っ!」

右手はそのまま下に降りてきて、俺の顎を上に傾かせ固定した。
少し身じろぐが動けない。

「言わねーなら、このままキスすんぞ」
「は?」

ふざけんな、と頬がひきつる。

「言うのか、言わねーのか」
「うっ…………」

言いたくない!
でもキスされんのも嫌だ!

「はい、タイムアウトー」

青峰の顔が迫ってくる。

「えっ、や、まじでっ………?」
「大マジ」

押し返していた手も、青峰によって壁に縫いつけられた。

「ちょっ、……タンマっ!っ………………く、そっ……」

あと1㎝というところで観念し、目を瞑る。

「……っん………っ、」

てっきり激しく貪られるのかと思っていたが、軽く啄んでくるだけで優しいものだ。

「……ん…」

そっと離れる。
ぼー、と青峰を見ていると頬にキスされた。

「で?結局なんだったわけ?」

今度は優しく聞かれる。

「……キスさせてあげたんスから、教えないっスよ……」

気恥ずかしくて顔を反らす。

「ま、別にいーけど!」

最初とはうって変わって上機嫌だ。

「……あ、そっスか…………」

なんか………可愛いとか思っちまった……
あの青峰っちに……、ありえねー。

「でも、もう避けたりすんなよ?」
「え、あ、うん」

青峰が階段を下りていくので後を追って自分も下りる。
すると、くるっとこっちを振り返ったからなんとなく立ち止まる。
「?」




「言い忘れてたけど俺、お前のこと好きだから」



「っばっ、ばっかじゃないっスかっ!!?!!」
「ははっ!じゃーな!」
そのまま階段を下りて行ってしまった。



「っっ…………」



俺はといえば、真っ赤になった顔を隠すように階段に座り込んだ。


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きーちゃんが青峰っちを避けてた理由は不明
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