「………ふわぁ……ぅ」
あー眠ぃ。
昨日もあんま寝れてないし。
腰いてーし。
一人で登校していると後ろからよく知った声がした。
「黄瀬君、おはよーございます」
「黒子っち!はよっス」
黒子っちはいつ見ても癒されるっス。
小さくて可愛いし、常識人だし。
「…………すごいですね、ソレ」
「?、………っ」
指でさされた所を見ると所有の印。
前のボタンを2、3個開けているため、鎖骨辺りのものまで丸見えだ。
「目のやり場に困るのでボタンをしてください」
「分かったっス!」
言われた通り、ボタンを上まで閉める。
少々堅苦しいが仕方ない。
「もしかして今気付いたんですか?」
「んー………あの人いっつも寝てる間につけるっスから」
「大変ですね」
「あの人独占欲強いっスからね」
苦笑する。
別に嫌なわけではないのだ。
誰でも好きな人に求められれば嬉しいし、独占欲も行き過ぎなければ愛しい。
「部活に響かないようにして下さいね」
「伝えとくっス」
黒子と話した後はそれぞれの教室に向かう。
―昼休み―
「……暇だしボール触りに行こ」
緑間にも声をかけようと思ったが、すでにいなかった。
大方図書室にでもいるのだろう。
「ま、いっか。一人でも」
制服のまま体育館の部室の方に行く。
ふと、鍵を借りていないことに気付いたが手をドアにかけると開いていた。
そのまま中に入る。
「あ」
部室のイスに寝転がり、静かな寝息を立てる青峰がいた。
「…………」
いつから寝ていたのか爆睡している。
多分授業はサボりだろう。
部室を選んだのは他人に見つからないためだ。
「……起きないっスよね」
青峰が転ぶイスの傍に座る。
床がひんやりと冷たい。
「………なんか…」
こうやって青峰っちの寝顔見てたら分かったかも。
なんとなくっスけど、こんな無防備な姿見せられたら痕とか付けたくなるっスよね。
この姿も全部俺のなんだって。
「俺もつけていいっスかねぇ」
元が黒いから多分そんなに目立たないだろうし。
問題は今本当に青峰っちが寝てるのかってことっス。
このパターンは実は起きてて、付け終わった瞬間に、
『寝込み襲うとはいい度胸じゃねぇか』
みたいなこと言われてらこっちが襲われるとかそういうオチ。
が多い。
「まずは確認っスね」
とりあえず青峰の禁止ワードを言ってみるのが一番いいだろうと、それを口に出す。
「ガングロ峰」
「……………」
何の反応もない。
これは本当に寝ているかもしんないっスね。
前言ったときはキレられたし。
じゃあ、まぁ実行ってことで。
「…………」
あーヤベェ。
緊張してきた…………
黄瀬はイスの上に身を乗りだし、青峰の顔を覗きこむ。
規則正しい寝息を確認してから、少しはだけすぎな肩口き顔を近づける。
「…………っ」
舌を少し這わせた後、軽くキスして吸い付いた。
歯を立てないように気をつけながら痕が付いたのを確認し、離れる。
「……………」
さっさと出よう。
起きたら面倒だし。
部室から出てすぐに教室に走った。
何かいけないことをしてしまったように思えたからだ。
しかし、それと同時にワクワクしている。
まるでイタズラを仕掛けた子供のように
「………何て思うっスかね、青峰っち!」
―放課後―
「青峰君、最っ低」
部活に行くために青峰を迎えに来た桃井が最初に言った言葉。
「………何が」
会って早々喧嘩売ってんのか、と桃井を見る。
「しらばっくれるのもいいけど、せめてソレ隠してからにして」
「あ?」
「これで見てみればっ?」
手鏡を渡される。
見ると、はだけた服の間から紅い痕が見つかった。
「朝会った時はなかったのに………、学校で何してるの?」
「はぁっ!?こんなん知るかっ!何もしてねーよ!」
「嘘ばっか。もう先行くからね!」
迎えに来たはずなのに一人でさっさと行ってしまった。
「さっ、さつき!」
「勝手に一人で来れば!」
遠くで叫ばれた。
「………知らねーよ、マジで」
今日は丸一日サボってた。
午後の授業も出てねーし。
朝はさつき以外と話してねーから………
あ。
じゃあ部室で寝てた時か?
寝てるときのことなんか分かるかよ。
とりあえず、
「……黄瀬にバレたらやべぇな」
つーかこの位置、ユニフォームに着替えたら100%分かる。
部活サボるか?
でも後で赤司に何か言われんのもだりーしな……
「……………」
一人悶々と考えていると、一本の電話がかかってきた。
プルルル………………
プルルル………………
発信源:黄瀬涼太
「ヤッベェ!さつきのヤツ黄瀬に言いやがった!?」
これ、出なかったら出なかったでやべぇよな………
とりあえず出るか………
ピッ!
「もしもし………」
声に力が入らない。
「あ、あの「ごめん!青峰っち!」
「は?」
思いっきり黄瀬の声に遮られた。
「青峰っちに痕付けたの、俺なんス!」
「………………は?」
朝はついてなかった。
それは確かだ。
じゃあ、いつ?
「青峰っち部室で寝てたっしょ?俺、昼休みにボール触りに行ったら居て…………」
「そん時か」
「うん」
「あー………まぁ別にいいけど」
黄瀬かよ。
いや別に嫌じゃねーし、むしろ嬉しいけど。
「お前が付けたのって初めてじゃね?」
「う゛っ…………だ、だって!青峰っちだけいっつもいつの間にか俺に付けてるし!俺だって………!」
「バカ!怒ってねーって!つか、怒るわけねぇだろ」
「ホントっスか?」
「おぉ」
当たり前だ。
自分の好きな奴の印が嬉しくないわけがない。
そんなことも分かんねーのか、コイツは。
「……………」
黄瀬が黙る。
電話越しでは相手の表情が読めない。
何を考えているか察せない。
「黄瀬?」
「………俺、は……青峰っちのものっスけど!」
「?」
「青峰っちは俺のものっスから!!」
「っちょっオイ!」
電話を切られた。
多分今頃顔を真っ赤にして座りこんでいるのだろう。
「部活、行くか」
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