1月1日。その日にすることと言えば一つだ。
上機嫌の古市が深夜に訪れたのは勿論男鹿家。
顔パスで玄関を通るとそのまま軽い足取りで男鹿の部屋に直行した。

「男鹿ー、入るぞー!」
「おー」
「今から初詣行こうぜ!」

唐突な誘いに男鹿はげんなりする。
古市が上機嫌で自分から積極的に誘ってくる理由なんて大抵決まっているからだ。
どうせ今回も女絡みだろう。そんな男鹿の経験則はズバリ当たった。

「これから可愛い女の子ナンパしに行かね?」
「行かねーよ。めんどくせぇ」
「たまには俺の方にも付き合えよ」

いっつもお前の喧嘩に付き合ってやってんのは誰だよ、と文句を言い始めた古市を黙らすのは簡単だが、後がまた面倒くさい。
溜め息を吐きながらゲームの電源を切り、上着に手をかけた。

「………りんご飴奢れよ」
「おお!さっすが男鹿!分かってるな!」

お前はやっぱり俺のダチだぜ!と肩をバシバシ叩く古市を無視して階段を降りていく。
TVを見て爆笑する家族をよそに玄関を開けると冷風が吹き付けてきた。
それだけでもう行く気なんて失せたが古市はそんなことはお構い無しに進んでいく。

「あー、さみぃ」
「神社着いたら甘酒でも買ってやっから我慢しろ」
「着くまでが寒ぃ。何とかしろ古市」

何とかって何だよ。チラと男鹿を見てギョッとした。
この男はこの真冬に手袋もマフラーもしていないのだ。
子供は風邪の子を未だに地でいっているとはいえいくらなんでもこれはない。
寒がりの古市からしたらあり得ないことだ。

「お前………その格好で寒いとか言われてもさぁ……」

自業自得じゃね?
なんて言えば鉄拳が飛んできそうなため言わないが、このまま放っておくのも可哀想な気がする。
鼻の頭赤くなってるし。古市は手袋を一つ外すと男鹿に渡した。

「ほら」
「おう」

差し出された手袋を当然のようにはめる男鹿はいつものことだが、古市は古市でそれが当たり前だった。
手袋をはめてない方の手はどちらもポケットに収める。

「着いたらさ、くじ引きしよーぜ」
「古市の奢りな」
「へーへー………うおっ!?」

雪に足を滑らせるが男鹿の腕に支えられ何事もない。
やっぱ女子はこういう男が良いんだろうか、と純粋に男鹿が格好良く見えた。
男の俺から見ても背、腕力、腹筋目、足のどれもが男らしくて憧れる。

「男鹿ってさ」
「ん?」
「そんな強くなってどーすんの」
「どーもしねぇよ。強いとカッコイイだろうが」
「……あ、そ」

まぁ間違ったことじゃねーから反論出来ない………
二人で雑談をしながら初詣目当ての人だかりに紛れて歩いているとあっという間に神社に着いた。
真っ先に飛び込んできたのは浴衣姿の女の子達だ。声を掛けようと近寄ると男鹿に腕を引っ張られる。

「?なんだよ」
「寒ぃ」
「………!……はー………分かったよ」

男鹿の腕を掴み、屋台を見回すと古市は目当ての物を見つけたのか、歩き出す。
甘酒と大きく書かれた店に着くとお金を手早く払い、受け取った物を男鹿に渡した。

「ん」
「おう………熱っ!」
「ふはっ!かしてみろよ」

男鹿から甘酒を貰うとカップに息を吹きかけ慎重に口を付けた。一口飲めば内側から熱が広がる。
寒空の下で飲むからこその旨さってあるよなー、と浸っているとカップを奪われる。
男鹿は一口飲むと目を輝かせた。

「旨いだろ?」
「あったけー……あ、古市りんご飴!」
「覚えてたのかよ………」
「この俺を誤魔化そうなんざ100年早いぜ」

無駄に良い顔で言う男鹿に呆れながら今度はりんご飴の列に並んだ。
男鹿は強面のくせにりんご飴とか綿菓子とか子供っぽいモノが好きだ。
あれか?こういうのがギャップ萌えなんか?正直どこが良いのかさっぱり分からん。

「古市金出せ!」
「へいへい」

お金とりんご飴を交換すると嬉しそうにそれを頬張った。
体がでかくなっただけで中身は小学生の時とさして変わらない。
今思えばあの時の方が可愛げがあったけど。

「古市は何か食わねーの?」
「んー、金あんま使いたくねーからなー」

つかあんま持ってきてない、そう男鹿を振り返るとさっきまでそこに居たはずの姿が見えない。
まさか迷子か?この歳にもなって?
あんまり騒ぐと恥ずかしいため不自然ではない程度に辺りを見回すが、人が多すぎて分からない。
俺今日携帯持ってきてないんだけど………どうすんだよバカ男鹿!
取り合えず人だかりを抜けようとすると背後から肩を掴まれた。

「何っ……お、男鹿……!」

いきなり現れた男鹿に、お前どこ行ってたんだよと文句を垂れる間もなく、綿菓子を突き出された。

「え、なに」
「やる」
「……なんで?」
「甘いの好きだろ」

どうしよう、男鹿の思考回路が今一理解出来ない。
まさか奢らせることに今更罪悪感なんてものを感じたんだろうか、あの男鹿が。
いや、違うな。多分罪悪感とかじゃなくて、単純に一緒に祭り気分になりたかった、っていう方が近い気がする。
差し出されるまま綿菓子をつい受け取ってしまったが、古市はそれを半分に割った。

「こんな食えねーから、半分こな」
「!」
「いらねーの?」
「いる」

綿菓子を口に入れるとやっぱり甘くて自然と笑みが零れた。
甘いと幸せになる気分ってこんなんか。
結局男鹿と一緒に居る内に楽しさが勝って当初の目的であったナンパはどうでもよくなっていた。

「次賽銭行こうぜ!」
「古市の金な」
「おまっ……賽銭くらい自分で出せよ!お願い叶わねーぞ?」
「えー」
「えーじゃない!」

賽銭に並ぶ長蛇の列に怯まず参加する。驚くことに男鹿はこの列を見ても帰ろうと言わなかった。
古市の予想では絶対に嫌がられると思っていたため、かなり意外だ。つーかコイツは何をお願いしたいのか。
賽銭に並ぶということは男鹿なりに願いがあるということであり、興味が湧いた。

「男鹿は何願うんだよ」
「別に言うほどのもんじゃねーぞ」
「えっ!気になるだろ」

いつもならそのまま流して、自分の願いは~と勝手に語り出していたかもしれない。
でも今日は初詣でお祭り気分だった古市は珍しく食い付いた。
古市から貰った綿菓子をもさもさ頬張りながら、男鹿はぶっきらぼうに答える。

「普通に、古市が今年も俺に巻き込まれますよーに、とか。今年も古市が俺のせいで可哀想な目に会いますよーに、とか?」
「…おまっ………おいっ!」

お前なんつーこと神様に頼む気だよ!んなもん叶える神様は絶対ろくな神様じゃねーぞ!?
男鹿は文句ありありに睨んでくる古市を横目に食べ掛けのりんご飴を噛んだ。

「だってお前、今年も俺と一緒に居んならそうなんだろ」
「………そ、うなんのか?」

え?お前は俺に迷惑かけない努力はしないの?マジで?
いや、別にいんだけどさ……もっとこう……違くね?まぁいいけど……
普通ならここで何かしらの抵抗をしそうなものだが、男鹿と一緒にいることに慣れすぎた古市は結局納得してしまった。

「去年もその前も、同じこと願ったら叶ったぞ。だから今年も俺と一緒に居ることになんだろ」

……この神社ろくな神様いねーよ。それにそんなの神頼みにしなくても良くないか?
他に頼み事がないって、ほんと頭が幸せな奴だよな。

「つーか、こーいう時の願いって人に言ったら叶わないんじゃなかったっけ?」
「は!?マジでか!」
「マジ」
「は、嵌めやがったな古市……!」
「いや毎年俺を影で嵌めるような願い事してたの誰だよ」

何故か真面目にショックを受ける男鹿にこっちの方がショックだ。どんだけ人を落としめたいんだよ。
つかそんな願いしなくても俺はどうせお前から離れねぇから結局迷惑かけられることになるだろ。
分かるだろ普通。
腕の袖が引っ張られ男鹿が振り返ると、古市は視線を反らすように遠くを見て言った。

「別に俺が叶えてやれば良くね?神頼みじゃなくてもさ」
「!」
「どーせ腐れ縁は切れねぇだろうし、お前には一生迷惑かけられそうだし」

正直男鹿の願い事を聞くまではなんとなく一生つるんでいるようなイメージだった。
けど、確かに一生なんて関係はないのかもしれない。
それでも今考える限りでは何となく、一生この腐れ縁は切れない気がする。
それは言葉にするまでもない、普通のことだと思ってた。

「!」

男鹿に急に腕を掴まれ引っ張られるまま列を抜けた。
どうしたのかと聞くとただ一言。

「帰るぞ」
「え?賽銭しなくていいのか?」

古市の質問に男鹿は年に一度見れるか見れないかというくらい、優しい目で笑って言った。

「必要ねぇ」
「…………あ、そ」

驚いた。本当に、俺と一緒に居る以外の願いがないことに。
いや、正しくは迷惑をかける以外にだ。どうやら男鹿は生粋の最低ヤローらしい。
でもそれを聞いて、何となく喜んでしまった自分はおかしいのかもしれない。


とりあえず、

「今年も男鹿と、賑やかな年になりますように」





そして一生の腐れ縁を星に願った。


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付き合ってないけどおがふるしてるおがふる。
ナチュラルなおがふるを目指したのに・・・難しい。
原作は何でくっついてないのにナチュラルにおがふるしてるんだろう。本誌萌える。
おがふるはくっついてないからこそ萌えるものだ、と最近より一層思うようになりました。
まさに夫婦以上恋人未満。
私的に萌えるのは、男鹿の方が古市が離れてくこと心配してるけど、
当の古市は全く離れるとかそういう考えが頭になくて『え!死ぬまで一緒に居んのかと思ってたわ(笑)』みたいな(笑)
そういう余裕のある古市が好き!付き合って!(男鹿と!)

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