虹村さんのキスは上手い。
この人と付き合うようになるまで、キスでここまで腰砕けになるなんて知らなかった。
「………っ……ん…」
「お前力抜けすぎ…………座るか?」
「別に…………平気、だっつの」
「嘘つけ、足震えてんぞ」
虹村に腰を支えられているとは言え、確かに灰崎の足はもう限界だった。
腰を支えられていなければとっくに床に座りこんでいるだろう。
長いキスで呼吸があまり出来てなかったのか、荒く息を吸う灰崎を支えながら一緒に床に腰を下ろした。
「息、ちょっとは落ち着いたか?」
「頭撫でんな………うぜぇ…痛っ!」
「先輩に向かってうぜぇとはなんだ、うぜぇとは」
「だからって一々殴んな!」
結局頭を撫で続ける手は止まることなく、灰崎は小さく舌打ちをした。勿論殴られたが。
虹村は灰崎に対して割りと暴力的だが、その分二人きりになると優しさと甘さが増す。
所謂アメとムチだが、灰崎はいつもこの落差についていけない。
虹村が元来後輩に対して優しいことは知っているが、自分にそれが向けられることに慣れないのだ。
「おい………どこ触ってんだ」
「ん?腰だろ」
「そりゃ分かってんだよ。変な触り方すんじゃねっ………ん、っ」
「キスする時、お前可愛いよな」
「はぁ?アンタ目ぇおかしいんじゃねーの………っふ……ぅ」
再度唇を重ねられ、まともな抵抗も出来ないまま舌を絡め取られる。
口内をゆっくりと荒らしていく熱い舌に息が奪われ、すがり付くように虹村のシャツを握り締める。
舌同士が擦り合わされ、吸われると気持ち良過ぎて体が震えてしまう。
「ぅ……っ…ぁ………は…っ」
「やっぱお前、可愛いな」
「うる、せ………ん、ぅ……」
後頭部を掴まれて逃げることも出来ないまま虹村のキスを受け入れた。
どちらのものとも分からない唾液が灰崎の口元を伝い、制服に落ちる。
灰崎が申し訳程度の力で虹村の胸を押すと、意外とすんなり離してくれた。
「あ、んた………しつこ過ぎ、っは」
「お前が体力なさすぎなんだろ。息切れ早ぇよ」
「それはアンタが………」
キス上手くて気持ち良すぎるから、とか言えねぇ………言ったら俺のプライドが死ぬ。
つかさっきから腰撫でくり回してるこの手はなんなんだよ。
「俺が何?」
「や、何でもねーです」
「ふーん?言わねーと此処で最後までヤッちまうぞ?」
「ちょっ……ここ部室だぞ!?」
もう誰も残ってないとは言え、流石に明日も人が使うこの場所は嫌だ。
つか赤司とかにはバレる、多分。そしたら殺される。
とか何だかんだ考えてる間にボタン外してやがるし……!
「待てって……!虹村さ、っん!?」
視界が反転し床に押し倒されると見上げた先にいた虹村は不敵に笑った。
「待たない」
「……お…、い………!」
服の中に手を差し入れる虹村に制止の声を掛けるが聞く気は微塵もない。
このままでは本当にヤられてしまう。
「言う!言うから待てって!」
「……仕方ねーな………んで?俺がどうしたって?」
渋々手を止め、顔を赤くして目を反らしている灰崎の顔を覗き込む。
あぁ、やっぱりコイツは可愛い。
「アンタが………虹村さんのキスが………上手い、から………それですぐ息が……」
「………………」
「虹村さん?」
片手で顔を覆っている虹村を覗くと若干赤くなった耳が見えた。
これはもしかしなくても……照れてる?あの虹村さんが?
「お前は俺を殺す気か……あとスマン」
「え?何が?」
「ちょっと我慢出来ねぇわ」
「……な、ん…!……んんっ」
今日何度目のキスか分からないが、口内を遠慮なしになぞる舌先が熱いせいで息が持っていかれる。
口から洩れる音が恥ずかしい。
舌に吸い付かれる度、上顎を舐められる度に脳が気持ち良さに痺れて生理的な涙が零れる。
「はっ………ん、んんっ…ぁ……」
指の腹で灰崎の目尻を拭うが、虹村にはキスから解放してやる気なんて更々ない。
執拗に灰崎の口内を貪りながら、さっきボタンを外しておいて正解だったと呑気に思う。
服の中に手を入れ、肌の上をゆっくり撫でながら滑らせていく。
そして胸の尖りに触れれば灰崎の肩がビクッと反応した。
「こ、こ……部室だって……言って……、はっ……っ……」
「どーせ後片付けすんの俺じゃねーか。それに赤司にだってもうバレてるし問題ねーよ」
「問題ある……って……ちょ、ん……っ」
駄目だ、キスされると何も考えれなくなる。力が入んねー……クソ……
仕方なく灰崎は虹村を力の入らない両手で押し返し、キスされないよう虹村の口を手の平で緩く覆った。
「…………?」
「……キス、今日はもうしない」
「何で」
「力入んなくなっから……」
「何で?」
ニヤ、と嫌な笑みを浮かべる目の前の男の何処が良いのか分からない。
どうせ言わないとまたセクハラされる。諦めて言うしか選択肢はないんだ。
しかし顔を見て言うなんてこっ恥ずかしいことが出来る訳がないため、虹村の首に腕を回して耳元でボソボソと告げた。
「虹村さんのキス……気持ち……良いから……だろ……?言わせんな……」
「………………」
耳元でダイレクトに伝わる吐息といつもより色気のある声に、虹村は言わせたことを後悔した。
本当なら最後までヤるつもりなんてなかったのに。
駄目だ、完全にスイッチ入っちまった。
「灰崎……すまん……」
「何が……?」
「抱いてもいいか?」
「…!………っ…」
膝に熱く誇張したモノをズボン越しに擦り付けられ、灰崎はみるみる赤くなっていく。
ぶわわっと赤を散らし、あーだのうーだの言っている。可愛い、可愛くて仕方ない。
灰崎を抱き締め耳元で低く熱を持たせて呟いた。
「祥吾、抱きたい……」
名前を呼ばれてこんなに好きな人に求められて、嫌だなんて言える人は居るんだろうか。
少なくとも俺には無理だ。
「………虹村さんが……家まで送ってくれるなら、いい………かもデス」
「了解。責任持って連れて帰ってやるよ」
「ぁ………っ」
前を全部開けられ、肩口に吸い付かれた。
普段は見える所には絶対に付けないくせに……明日部活どうすんだよ。
そんな灰崎の心中を察してか、虹村が笑った。
「痕くらい見せ付けとけよ」
「………バカだろ」
「うっせ。咬み痕付けないだけありがたいと思え」
「咬み痕って………」
どんなバイオレンスな関係だよ。
そんな性癖持った恋人いるとか知られたくねーし、つか知りたくなかったよ。
「…………っぁ」
不意に胸の突起を擦られ上擦った声を上げてしまった。
得意げに笑う虹村を睨み付けても意味がないことなんて自分が一番分かってる。
それでも男なのに声を上げさせられていることに慣れないのだから仕方ない。
「……っ…ふ……、ぅ……く」
「ちょっと赤くなってるな」
誰のせいだよ、と言いたいが言えばまた問い返される。
お前をこんなにしたの誰か教えてくれよ、なんて意地悪な顔をして問い詰めてくるに決まってる。
言葉攻めをするのは好きだが、されるのは苦手だ。というか恥ずかしい。
考えごとをしていたせいか、虹村の顔が胸部に下がっていたことに気付かなかった。
「ぁっ……く……ぅ、ん」
突然尖りを口に含まれ、舌先で転がされれば体は素直に反応する。
時折立てられる歯が絶妙な強さで食んでくるため、その度に上がりそうになる声を抑えるように手で覆う。
「おい、手」
「え………」
虹村は手を引くとさっきまで灰崎の口が触れていた部分、手の平に自分の唇を押し付けた。
「声、抑えなくていい。出せよ」
「……い……嫌、だ」
「あー?何お前、先輩の言うこと聞けねーわけ?」
「ちげーよ………俺ばっかこんなんされて……フェアじゃねーだろ」
チッと舌打ちする灰崎に愛しさが込み上げ、もうどうすればいいのか分からない。
抑えきれない衝動に任せて灰崎のベルトを雑に抜き取った。
「あっ、ちょっ……」
あらわになった熱に触れながら、灰崎の声を無視して用意していたローションを取り出して指に絡める。
早急な行為に焦った灰崎は虹村の黒髪に手を伸ばし、たどたどしく撫でた。
「っ……修造さん……焦んなくていいから、もっとゆっくり……っふ、く」
「すまん………、でも今日はあんまゆっくり触ってやれる余裕、ねぇから」
優しく出来ねぇかも。
そう優しく笑った虹村は灰崎の熱を握り込みながら後孔に指を差し入れた。
「あっ………は、ん……んんっ」
「祥吾………」
ぬるついた先端を親指の腹で意地悪く刺激するとさらに虹村の手を汚していく。
入れた指は二本に増やし、中を掻き回して徐々に広げる。
敢えて前立腺には触れずにローションを足して指を三本まで増やすと、灰崎の腰は自然と揺れ始めていた。
「はっ……はっ……、んぁ…」
「腰、揺れてんぞ」
「ちがっ………ぁ…ぁ、あっ」
「ココ、だろ?」
「あっ…………ん、ぁっ……く」
この甘い喚声を上げているのが灰崎で、上げさせているのが自分かと思うと優越感が凄まじい。
自分だけが知っている灰崎。
生理的な涙を流す頬に口を落とし、挿れるぞ、と囁けば灰崎の瞳は溶けたように揺れた。
狭いそこに自身を押し当て、切れないようにゆっくりと沈めていく。
「っ…………っ…」
「……大丈夫か?」
まだ挿入する時の違和感に慣れないのか歯を食い縛る灰崎の頭を撫で、優しく声を掛けた。
灰崎は小さく頷くと虹村の後頭部に手を回して引き寄せ、触れるだけのキスをする。
萎えることなく勃ったままの熱を緩く握って刺激すると、じれったそうに灰崎が急かす。
「早く、動けよ………修造さ、っんぁ!」
「……このバカが……っ…」
腰を打ち付け始めれば灰崎は堪らないとでも言うように断続的に喘ぎ出した。
灰崎が名前を呼ぶ度その口を塞ぐように唇を重ね、身体に痕を付けていく。
「祥吾………っ」
「ん……ぅあ、……修造…さ…あっあ!……んんっ」
「はっ……すげ………」
腰を引く度に強く絡み付いてくる内壁に持っていかれそうになるのを耐えながら、白濁を溢し続ける灰崎の熱を上下にしごいた。
それもまだ慣れないのか、灰崎は表情を隠すように両腕を顔の上でクロスさせる。
だがそれを虹村が許す筈もなかった。灰崎の両手を頭の上で一まとめにし、片手で押さえ付ける。
「なっ………離せよ!」
「嫌だ。顔、見えねぇだろが」
「ぁっ……ん、……あっ……」
「もっと声出せよ」
「手っ……離せって……!…ぁ」
虹村は灰崎の両腕を持ち上げると自分の背中に回した。
まるで自分から抱き締めているかのような格好に灰崎は視線を反らす。
しなやかな背筋に触れ、どうしても意識してしまう。虹村という男を。
「掴まっとけ」
「…………っ……」
普段は滅多にそんな風に優しく笑ったりしないくせに、こんな時ばっかり惜しみ無くその顔を晒している。
熱のこもった目が、触れ合う体温がこの人はこんなにも格好良いんだと自覚させる。
「クソッ………アンタ、本当ずりぃ……」
「何がだよ」
本当にズルい。虚勢を張った素直になれない自分を暴いて、こんな風に体を繋げるようになって。
それでもまだ素直には程遠い自分を甘やかして、抱き締めているこの男がどうしようもなく好きだ。
構われれば構われる程落ちていくのは早かった。
「…なんで………そんなに格好良いんだよ……」
「…………灰崎……?」
灰崎はゆっくりと上体を起こし、引き結んだ唇を虹村の口に押し付けた。
触れるだけのキス。けれど、それは灰崎からした初めてのキスだった。
唇を離すと虹村の背中に回していた腕に力を込め、肩口に顔を押し当てて小さく呟いた。
「…………………好き……」
「………はい、ざき………?」
「………………」
羞恥で動かなくなった灰崎に虹村は言われたことを漸く理解した。
ぶわーっと柄にもなく赤くなっていることは分かっているが、今は灰崎の顔が見たくて仕方ない。
灰崎の頬に手を滑らせ、特に抵抗されることなく上を向かせると、溶けきった目と視線がぶつかった。
「おっまえ……なんつー顔してんだよ……」
「……どーせ、気色悪ぃとか思ってんだろ」
今度は拗ねるようにそっぽを向くが、虹村はそれさえも愛しくて堪らない。
「んなわけねぇだろ。……逆だ逆、普段とギャップ有りすぎて死ぬ。つか可愛い」
「……可愛い言うな」
「何で」
「………………ハズい、だろ」
お前は本当に俺を殺す気か、そう虹村が呟いたことに反応する暇もなく押し倒され、腰の律動が再開された。
不意打ちのせいで上擦った声がいつもより大きく出てしまう。
結合部がたてる卑猥な音に耳を塞ぎたくなる。
「あ、ぁ………あっ…ちょ、……っぁ……あ、っは……」
「…すげ……エロいな…」
一つ年下の可愛くない後輩。クソ生意気で敬語も使えないようなクソガキなのにバスケだけは上手い。
自業自得で周りからは厳しい目で見られるばかりのコイツを好きになったのは些細なことだった。
可愛くない後輩を可愛いと思ってしまった、それだけ。
虚勢張って生きてるコイツの中の脆い部分を知って、構いたくなって。
鬱陶しがる中に嬉しさを見せるから、素直じゃねーなってその頭に触りたくなって。
甘やかされることに慣れないコイツが可愛く見えた。
「……修造さ、ん……ぁ…名前、呼べよ……んっ…く」
あぁほら、こういう所がどうしようもなく可愛くて仕方ないんだ。
「祥吾」
「あっ……あ、あ……ひ、ぅっ…」
灰崎の頭を抱え込むように抱き締め、腰を打ち続ける。
キスを落とせばそれに反応しているのか、内壁が収縮して気持ち良い。
さっきから辛そうな熱を強く擦りながら、腰の律動を早めていく。
もうイキそうなのだろう、灰崎が虹村を抱き締める腕に力が籠り爪が肩に食い込んでいる。
それに対して虹村が笑ったことを灰崎は気付いていない。
「なぁ祥吾………はっ…」
「……ぁっ…あ、く……な、に……ぅあっ…」
「どうしたら好きって気持ち全部お前に伝わんだろーな」
「え………ん、んんっ…」
唇の隙間から入り込んできた舌のせいで灰崎はまともに答えることが出来ない。
そんなん、俺だっていつも思ってる。好きって言っても全然伝わってる気にならない。
多分どんだけ想ってる言葉を口にしてもそれは変わらない。
言葉に出来ない想いをどうしたら相手に伝えられるのかなんてこっちが知りてぇよ。
けど今は仕方ないから、その方法が見つかるまでは言い続けてやるよ。
「俺のがアンタより、ずっと好き、だ」
「ふはっ、そーかよ!」
嬉しそうに笑った虹村さんの腕の中は温かかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
甘い虹灰書いてみました。エロ度低めにしてみましたがどうでしょうか。
灰崎くんも虹村さんも誰おまw状態です。
普段クソ生意気な不良が照れるとか顔赤くするってだけでね、もうお腹いっぱいですよ。
灰崎君本当可愛い。虹村さんとの絡みを本誌でもう一度見たい。ボコリ愛うまい。
スポンサードリンク
コメントフォーム