キレーだと思った。

ただ、それだけ。




「お、おいっ……何すんだ!髪グシャグシャじゃねぇか!」
「撫でた」
「いやいやいや今のは撫でてねぇよ!完ぺき混ぜたろーが!」

つか仮に撫でてたとしても気色悪いことこの上ない。
なんで男に撫でられなきゃならんのだ。
しかもなんでちょっとお前嬉しそうなの、なんでそれ手ぇワキワキさせてんの、何しようとしてんのお前。

古市が身構えた直後男鹿が飛び付いてきた。

「うおおっ!?こらっ!離れろ!!」
「嫌だ」
「匂いを嗅ぐなあああああああ!!!!!」

制止しようとしても首筋に鼻を押し付け、離れようとせず古市を堪能する。
犬のように匂いを嗅ぐ男鹿を古市は止めることは出来ない。
ここが部屋であることが唯一の救いだ。
男鹿の腕に閉じ込められるのは嫌いじゃないが、さすがに匂いまで嗅がれていては落ち着かない。

「男鹿………?取り合えず離れ……」

大分落ち着いた様子の男鹿を宥め、解放してもらおうとすると今度は髪に指を絡められる。

「キレイになったよな」

「は?」
「お前、キレイになったっつか…………何か前と違ぇ」

「そう、か?あんま分かんねーけど……………」
「高校入ってからキレイになった。中学のときまでは可愛かったけど」


そういえば確かに……最近男鹿から可愛いと言われることが減った気がする。
前はこっちが死にたくなるくらい言ってきていたのに。
だから高校に入って美人な女子と触れ合ったことで漸く正常な目になったかと思っていた。
そして今度は「キレイ」だと。

「俺、前々から思ってたけどさ………お前美的センスおかしくね?ヒルダさんとか邦枝先輩にキレイなら分かる。俺って……おかしくね」
「…………照れてんのか」

「アホ、真面目にだ」
「俺はお前以外可愛いとかキレイとか思ったことねーし」

「……………………」

もし俺が女の子だったならきっと死ぬほど嬉しいんだと思う。
世界で一番大好きな人にそんな台詞を言われてみたいと思う子はたくさんいるけど、俺は男だ。
贅沢だって思われるかもだけど、本当は「可愛い」「キレイ」なんて言葉はいらない。
その代わり、もっと………いや、たまにでいいから「好き」って言って欲しい。

男は軽々しく「好き」なんて言うもんじゃねぇって前、聞いた。
だけどせめて二人が繋がってる最中くらいには言ってほしい。



「古市」
「っ、」

軽く口先だけ触れ合った。

「も、いっかい」

自ら目を瞑って唇を差し出す古市の顔はキレイだ。
少し長めの銀の睫毛がキレイに見せさせているのかもしれないが、目にかかる前髪も結ばれた唇もキレイで目を奪われる。
白い肌に指を滑らせ、頬に口付けた。


「…………意地悪ぃ」
「口のが良かったって?」

「べっつにぃ」
「そーゆートコは相変わらず可愛いな」

「死ね」
「照れんなって」


照れてねぇ。むしろ怒ってる、な。

キスは好きだ。
安心出来るし、………なんつーか……………甘いから。


「おい」
「ん?…………!」

自分からキスしてやれば男鹿はぽーっとなったまま固まっている。

「おがくーん?だいじょーぶー?」

からかうように声をかけたら頭を叩かれた。


「いてー………好きな相手叩くかよフツー」
「何、優しくしてほしいってか」

「気味悪いからヤメロ」
「だろ?」


男鹿に優しくされたくないわけじゃないけど、甘やかして欲しくはある…………なんて、意地っぱりな俺は言えない。
「可愛い」はあまり嬉しくなかったけど「キレイ」は少しだけ嬉しいから。
だから男鹿が「キレイ」だと言ってくれるなら言いたい。

男鹿が一番好きだと言ってくれた顔で。



「ありがとう」



柔らかく笑みを浮かべた表情に男鹿もまた笑って頭を撫でて言った。


「綺麗だ」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

男鹿ちゃんにキレイって言わせたかっただけ。
最近スランプってヤツに遭遇したんだが・・・・・・・どうも勝てそうにない。
これはもうビッグバンカメハメ派くらい出さないと勝てないんじゃないかな・・・・・
頑張ります。
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