*②のことは忘れて①の続きと思って読んで下さると嬉しいです;





あれから三日経った。カイエンからの連絡は一度もない。
責任感の強い彼なら電話ででも謝ってくるのかと思っていたのに何もない。
カイエンにキスされてからの間……この三日間ずっとそのことばかりを考えていた。

……考えざるを得なかった、の方が正しいだろうか。何をしていてもあのときのことが頭に浮かんでくる。
触れ合う直前の彼の閉じられた目、迫ってくる薄く開いた形の良い唇。
焦点の合わない距離もその感触も鮮明に思い出せれる。その度に心の弦が激しく弾かれたように揺れ、身を震わせる。

「……こんな感覚は初めて、かな」

ピアノをいくら弾いても心が落ち着かず、自然と奏でられる音色も比例してそわそわとした落ち着きのないものになる。
鍵盤を走らせる指に集中したいのに脳に焼き付いて離れない。

「君も……俺と同じだろうか」
同じように何度も思い出しては落ち着かない気持ちで過ごしているのだろうか。
どうしてかな……、彼のことが気になって仕方ない。今何を考えて、何をしているのか………
冷静になろうとすればするほど、意識してしまうこの気持ちは一体何なのか。
教えてほしい。


シュレードは鍵盤を叩くのを止め、お湯をポットで沸かし始めた。
コーヒーを飲むと不思議と気分が落ち着くためによく飲むが、カイエンのために淹れてあげたことを思い出してしまった。
シュレードの中で三日前の出来事は永遠のループでカイエンを嫌でも思い出させ、意識させる。
胸が痛くてたまらない。発作などとはまた違う痛みにはクセになりそうな甘味があって。

「君に会いたくてたまらないよ………親友」

掻き回される心を嫌とは思わない、むしろ初めて知ることで興味をそそられる。
ソファーに座りながら淹れたコーヒーに口を付け、液体に映る顔を見た。
カイエンに会えばこんな顔もしなくて済むのだろうか。

ソファーに横になり身を預け、静かに目を閉じた。



眠り始めて小一時間ほど 経った頃、音が近づいてきた。
眠りの浅いシュレードは無意識下で目を覚ましたが瞼は重く、持ち上がらない。
近付いてくる音は騒がしく、乱れていてまるで今の自分のようだと感じた。

………………

扉が開いた、音楽室に入ってくる。あぁ、これは彼の音色だ。
カイエンの音色だ。


「シュレード」

髪にカイエンの手が触れる感触に眉が反応する。優しい手付きに流されていると髪から手が離れ、眼鏡に触れた。
そういえば寝る前に外していなかったと思っているとカチャ、と音を立てて外される。
特に何かされるわけでもなさそうだったため、好きにさせる。誰にでも、じゃない。カイエンだから気を許すのだ。

「………シュレード」
「…………」
眼鏡を外すと眼鏡の縁に掛かっていた髪の毛が瞼に落ちたため、それを払い除けた。
綺麗に閉じられている二つの眼。
まるで永遠の眠りに着いているかのような表情に、体温があるのを確かめるように手で触れた。

輪郭をなぞるように下に手を下げていくと、指は唇をなぞった。カイエンと比べて少し柔らかい。
形の整ったそこに目が奪われる。いけないと分かっているのに目が離せられない。

「………………」

顎を軽く持ち上げ、自然な動きで唇が重ねられた。
この前よりは少し長めに合わされる。
ゆっくりと離れていくのと同時にシュレードの瞳がカイエンを捕えた。
「………………」
「…………………すまん」

若干の焦りを感じるカイエンを他所に、焦点が合うか合わないか、ギリギリの距離でシュレードは一度笑みを溢した。
そしてカイエンの両頬に手を伸ばし引き寄せる。

「シュ、レー…………っ」
再度交わった唇は先程よりも熱を帯びていて。
シュレードに柔く食まれ、思わず身を後ろに引く。驚きを表情に映し出す彼に苦笑した。

「君からしてきたのに」
「それは………」

口ごもるカイエンの首を絡めとり耳元で静かに言った。

「………………いいよ」
「…………」
「謝りに来たんだろう?別に怒ってるわけじゃない」

だから謝る必要なんてない。
カイエンにそう伝えると予想外の言葉が返ってきた。

「………………貴様は」


「貴様は誰とでも出来るのか」
「……誰とでもってわけじゃないけど……………、そうだな。君とだからかも、ね」
「………そうか」

ソファーに座り直し、シュレードの飲み差しらしきコーヒーに口をつけると、少し温かったが美味しい。
カイエンに続き、シュレードも身を起こすとカイエンの肩に頭を乗せた。引き離そうかとも思ったが出来ない。
こんな風に近付いてくる彼を見るのは初めてだったために動くことが出来ない。

「親友……、君にキスされてからずっと君のことを考えてた。会いたくて、仕方なかった」

思ったままを口にするシュレードの音は心地よくて、カイエンは耳を傾ける。
会いたかったのは自分も同じだと言うことは気恥ずかしくて出来ないが、きっとシュレードには分かっているのだろう。

「誰かに会いたくて堪らなかったり、ずっとその人のことばかりを考えてしまって他に手がつかなくなる。…………胸が痛いのに甘い、これは何なんだろうね」

それはつまり、そういうことじゃないのか。


「それは…………好きってことだろう」
「……そうなると俺は君に恋してることになるけど?」

違うのか?と疑問を浮かべる。だってそうだろう。
キスは嫌がらず、むしろ自分からしてきた。しかも平気で密着してくる。
それを嫌だと思わない………思えない自分もそうなのか。

「なら俺も……お前が好きなのか?」
「それを俺に聞くのかい」
そう言われ黙り込んだカイエンの無防備になっている左手に右手を重ねた。

「俺のこの気持ちが恋なら……俺がこんなに騒がしい音を奏でてしまうのはそれのせいなのかな
「…………………」

カイエンの近くにいるだけで胸が苦しくて切ない。今まで彼に対してそんなことを思ったことはなかった。
いや、元々好きだったのかもしれない。
彼の行動のおかげで自分の気持ちがクリアーに見えるようになっただけで、好きだったのかもしれない。

そうでなければ恋に発展することも、こんな気持ちになることもなかった。
あの日カイエンの首に腕を絡めたのはほんのイタズラだった。初な彼がどうするのか興味があった。
それだけだったのにきっかけを与えられただけでいとも容易く落ちた。
だからこそまだ知らない音を聞けた。


「恋は澄んだ綺麗な音色だ。君も、そう」
「俺も…………か」
「相思相愛ってやつかな………、親友」
「だが男同士だぞ。いいのかお前は」

「俺は君とは違ってそういう偏見はないつもりだけど?」
「ぐ…………っ」

シュレードが言うようにカイエンは好きだ。
それを男同士だからという理由で何も進まないのは頂けない。

「君だって俺に会いたかった、違う?」
「………否定はしない」
「素直じゃないね」

「…………黙れ」
「……君が黙らせてよ」

妖艶に笑みを浮かべる男の思い通りにはしたくないが、それを受けないのも男としてどうかと思った、それだけだ。
そう言い聞かせながら手を伸ばした。ゆっくりと目を閉じるシュレードの輪郭に手を滑らせる。
「…………ん、」
啄むように唇が合わされ、少しして離された。

「これは恋人になるっていうことで良いのかな……?」
「好きに受け取ればいいだろうが」


「本当、素直じゃないね」


――――――――――――――――――――――――――――――――――

本編でカイエン様のキャラが若干行方不明なので(例:見えた!見えたぞ!)
何処にキャラを定めればいいのか分からない私←

一応カイシュレがくっつく話はこれで完結ですが、これを基盤としたカイシュレの短編を書いていけたらと思いますw 
カイシュレの需要が増えたみたいで嬉しいので頑張りたい!
大人な二人ですがフレンチキスしかしないのはただの俺得。
ちゅっちゅしてるの好きなんだよ!
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