青峰の家の前。何の断りもなしに来た。
家にはいないらしい。



IHで負けた俺は悔しさからもう一度挑みに来たわけでも、ましてや遊びに来たわけでもない。









「何やってんだ。人ん家の前で」

低い声。

「中で話したい」

俺のただならぬ空気に気付いたのか、あっさり入れてくれた。




俺と青峰っちは付き合っていた。中学のときの話だ。一年ちょっと付き合って、俺は振られた。
振られてからは俺と青峰っちは何事もなかったように普通に振る舞った。
俺も寄りを戻そうとは考えなかったし。





「ほら、入れ」
「ありがと」

付き合っていた頃以来だ。この部屋に入ったのは。
青峰の匂いがする。



「何のようだよ」

「あのさ、…………………すっごい今更だけど………何で振ったんスか」
「なに、それ聞くためにわざわざ来たのか」



あぁ、やっぱなんか冷たい。俺はアンタに嫌われるようなことしたっけ?
ウザくない程度に距離を大切にしてたはずだし、ワガママも多少は言ったけどそれもアンタが許せる範囲だったはずだ。



「聞きたい」

「…………………………」



何か言えよ。

なんで?俺が嫌いだから?




「あんた………俺の気持ち考えたことあんのかよ」
「は?」



前日まではキスしたり抱き締め合ってたのに………、なんの前触れもなくいきなり別れを切り出された俺の気持ち考えたことないだろ。
泣きそうになるのを表情に出さないようにどれだけ頑張ったか知らないだろ。



「知りたい。それだけ聞いたら帰るし、もうアンタに関わらないようにする」

「……………お前は何でだと思う?」
「俺が嫌いになったから。………もしくは他に好きな人が出来たから」



頼むから前者だけは嫌だ。後者であって欲しい。嫌われるのだけは嫌なんだ。
あんたが今でも俺の一番だから。振られて、理由を知るのが怖くて聞けなかったほど好きだから。





「嫌いなんだよ、お前」



そう言われた瞬間何かが割れる音がした。


嫌われてた………?

あんなに好きだって言ってくれてたのに、嫌われた。
なんで?



「っ…………理由知れて良かった、帰るっス」


声が震えないように慎重に喋った。帰ろうと体の向きを変え、青峰を背にする。
駄目だ、足が震える。涙が止まらない。


「じゃ………っバイバイ、………っ!?」


後ろから腕を掴まれ、体を反転させられた。
顔の真横に青峰の横顔。自分の腰と背中に回る手。


「な、んでっ?」
「………………」



なんで青峰は嫌いな自分を抱き締めてる?



「やっ、……はなっせ、ん、ぅんっ、んっや………」

口に噛み付くようなキス。抵抗すれば強引に舌が割り込んできた。



いや、だ………こんなの…………嫌だ!


ドンッと思いきり突き飛ばしてしまった。その衝撃で青峰は壁に激突。



「っつ………、黄瀬、行くな」
「ご、ごめっ!大丈夫っスか?」

壁にもたれてしゃがんだままの青峰に近寄った。するとそのまま頭を胸板に押しつけられる。


「黄瀬……‥何で泣いてんだ」
「あ、ちがっ!違う………!!」
「じゃあ顔見せろ」

「…………っ」

ゆっくりと顔を上げると、眉を八の字にして笑っている青峰がいた。
そのまま近付いてきて黄瀬の涙を舐めとる。

「ん、や………」
「泣くな」
「なんっ………」

顔を離した青峰の表情は酷く切なく、嬉しそうだった。

「嫌いなくせに、そんなっ………顔、すんな!」


自分から離そうともがいても今度は逃れられなかった。勿論、黄瀬が本気で逃げようとすれば逃げられる。
そしてそれをしない訳は至極簡単なことだ。





「嫌い………なわけねぇだろ」


「………は?でも、さっき」
「嘘だ、バーカ」
「んなっ!?さ、最低!嫌い!」
「ふーん?……………嫌い、な?」

青峰の全て見透かした表情にグッと押し黙る。


「うそ………………、好き」

青峰の首に腕を回して抱きつくと青峰もそれを受け入れてくれた。




「青峰っちが好き。もう離れたくないっス」
「何か…………久し振りだな、こういうの」
「アンタが振ったからっスよ」
「勘弁しろよ」



「……………青峰っちは俺のことどう思ってんの……?」

「……………………」


ここまできてだんまりかよ。

青峰は気まずそうに黄瀬に手を伸ばした。


「俺は…………」
「無理に言わなくてもいいっスよ」
「あ?」

膝立をして今度は青峰の頭を自分の胸に抱き締めた。

「俺、分かってるっスから」
「…………黄瀬、泣いてんのか」
「うん………、青峰っちが好きだから」


顔を上げると、目尻いっぱいに涙を溜めて青峰を見下ろしていた。

「キス、したい…………ダメっスか?」
「……俺もしてぇよ」

どちらからともなく唇を重ねた。

「ん、んぅ………ん、ッハ……」

久し振りにした何度目かのキスはしょっぱい味がした。






俺を抱きしめる腕から、体温から分かる。
重なった唇から伝わってくる。






俺が好きだって言ってくれてる。






「青峰っちが、俺に本当の気持ち言えるようになったら……」

「あぁ、絶対に」









もう一度愛してくれますか?
(一生離さねぇよ)




――――――――――――――――――――――――――――――――――


多分赤司に青峰が何か言われたんだと思う。

それで仕方なく別れたんだよ。

黄瀬君のこと本当は大好きなんだよ。



シリアスって・・・・・・・・・・難しいね。




いつか二人が幸せに暮らせますように。

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