「……………」

たまに、本当にたまに気が向いたときだけシュレードのいるこの音楽室に足を運ぶ。
シュレードの出す音色は何処にいても聴こえる。
アイツは人の精神を奏でることが出来るが普段は綺麗な音を奏でている。
その音に釣られて足がここに来てしまうのは癪だが、シュレードのピアノの音だけは好きじゃないこともない。


「やぁ、君からこっちに来るなんて珍しいね」
「……………暇だっただけだ」
「へぇ………?せっかく来たんだ。コーヒーでも淹れようか」
「いらん」

「そう言わずに。すぐ出来るよ」


顔を見たら直ぐに帰るつもりだった。なのにシュレードに引き留められれば何故か足が動かない。
音楽室にコーヒーの香りが漂い、カイエンの鼻孔に吸い込まれていく。
シュレードの作るコーヒーは繊細で、細やかな味をしていて本当に美味しい。
それもここに来る目的の一部だということは、きっとこの男も気付いているから毎回コーヒーを出してくれる。

「はい、どうぞ」
「…………」

カイエンにカップを渡し、シュレードもカイエンの隣に腰掛けた。
二口ほど口に含み、カップをテーブルに置いてカイエンがコーヒーに口つける所を見やる。

「どう?美味しい?」
「………………うまい」
「なら良かった」
「……………」

サラ………、と揺れる髪と綺麗に笑う口元に体が熱くなるのを感じた。
シュレードが………、例えばカップをとる仕草だったりとか、振り向くときだったり、とにかく些細な動作にも透けるように細い髪が揺れる。
そして髪から香るシャンプーの匂い。
思わず手を伸ばしてしまいたくなるような………それ。


「えーっと…………なに、かな…」
「え?」

シュレードの視線はカイエンの腕に注がれている。
カイエンの腕はシュレードの髪に触れていた。

「なっ……!違う!手が滑っただけだ!!」
「……………ふぅん?」
「なんだその目はっ!」
「別に………?」

シュレードに意味深な流し目で見られ、カイエンはフンッと顔を反らし、手を引っ込める。
いや、引っ込めようとした。

「おいっ」
引っ込める前にシュレードに手首を掴まれた。
病に犯されているのに手首に込められる力は強く、振りほどけない。
カイエンの手にシュレードのすぐに折れてしまいそうなほどに細く、整った綺麗な指が絡ませられる。

「ねぇ………親友」
「なんだ」
「前ここに来たの、いつだったか覚えてる?」
「…………二週間前?か」

そうだ。今日は二週間振りに会う。
前はアブダクターを追い払った後、寮に帰ったときにコイツのピアノの音が聞こえてきたんだ。
そして会いたくなった。

それから二週間経つ。


シュレードは頷いた。
「独りって………退屈なんだ。だから君が来てくれるのは素直に嬉しい」

「…………アンディだって来んだろ」
「それでも、君が一番……かな」

カイエンと居るときが一番心が安らぐ。
シュレードは結ばれた手を振り払わないカイエンに笑みを溢した。
そして自ら指を離し、油断しているカイエンの首に腕を回してそのまま後ろに倒れた。

ソファーがギシ、と音を立てる。


「シュレードてめぇ……離せ」
「手が滑っただけだよ」

端から見ればカイエンがシュレードを押し倒しているような図にカイエンは退けようとするが、シュレードが離さない。
シュレードは顔のサイドにつかれたカイエンの腕ごと抱き締めた。
頬に当たるシュレードの柔らかい、色素の薄い髪がくすぐったい。

「緊張、してる……?」
「馬鹿か、するわけねぇだろ」
「嘘だ。君の心臓の音、凄い」
「お前に言われたくねぇ」

だいたい、自分からこんなことしてきておいて、シュレードの心臓は布越しでも分かるくらい鼓動が速い。
冷静な表情で余裕ぶっているこの男が取り乱す所を見てみたい。
カイエンはシュレードの腕を外すと手をついたまま体ごと乗り出し、触れたか触れないか分からないほど微かに唇を重ねた。

「……………」
一瞬で離れ、真上から見下ろしてくるカイエンに目を見張った。
呆然としているシュレードにジリジリと、自分のしたことの重大さに気付いたカイエンは直ぐ様ソファーから飛び退けた。
何を言えばいいのかと言葉を探すが見つからない。

「……………帰る」
「…………あぁ」

カイエンが出ていった扉を見つめていると一時停止しついた頭の中がようやく正常に起動された。
そしてさっきの出来事が脳内リピートされる。


「……………っ」

さっき、の………っ、口が…………



カイエンにキスされた。
一瞬ではあったがあれは確かにキスだ。

「…………………顔、熱い」



また独りになったシュレードの、いつもの冷静な表情は消え、頬には赤みが差していた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

カイシュレくっつく未満。

私はカイシュレ派ですw なのにシュレカイ派が多いという。
あの余裕いっぱいで攻め攻めしい鬼畜眼鏡が下で乱れるってのがいいんじゃんね。
pixivとわたしの趣向は異なるらしい・・・・・ショック。

この話はもしかしたら長編のほうに持ってくる・・・・かも?未定です。
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