*今更男鹿誕書きました
*20歳前の二人







男鹿の感情には気付いていた。多分、男鹿が自覚するより早く。
だけど俺は男鹿を突き放すことも、男鹿の気持ちを汲んでやることもしなかった。




「なあ古市」
「何」
「今日泊まんの」
「ん―……明日バイト昼からだから別に大丈夫だけど」
「じゃメシ作れ」
「………お前ほんと我儘な」

そう言いながら夕飯作る準備する俺も俺だけど。
俺は大学生になったけど相変わらず男鹿とは一緒にいる。
勿論男鹿は高卒で働いてるため以前より格段にその時間は減っているが。
男鹿が大学近くで働いていて、そこで一人暮らししているから俺にとっては都合がいいのだ。

「にしてもお前俺がメシ作んねーとろくなもん食わねーだろ。いい加減自分の食生活くらい自分で管理しやがれ」
「別に古市が作るからよくね?」
「いやだから自分でしろっつの」
「俺は古市がいい」
「…………あっそ」

男鹿は天然タラシだ。
でも気持ちを自覚してからは意識して言葉を選んでいる時もある。
まぁ流石に最初は見分けつかなかったけど、今ではそれも分かるようになった。

「男鹿ってさー……、あー……やっぱなんでもないわ」
「あ?気になんだろーが、言えよ」
「や、別にいいよ」
「言え」

あ、これ言わないといけないやつだ。
夕飯の準備で洗い物が終わると手を拭きながら男鹿の座るソファーに振り向いた。

「…………結構奥手だよなって話だよ」
「誰が」
「お前だよお前」
「は?」

だってそうだろ。
アプローチはめちゃくちゃしてくるくせに核心的な告白は絶対しない。
男鹿らしくない。もう何年経ってると思ってんだよ。
古市は男鹿の隣に腰掛けると男鹿の手に自分の手を重ねた。
ビクリとあからさまに反応する男鹿に思わず笑う。

「ふ、古市君?」
「奥手でしかも鈍い」
「は?」
「俺等何年目の付き合いだよ。9年だぞ9年」
「お、おう」
「そこで男鹿君にクイズです。なぜ俺は高校に入ってから一度も彼女を作らなかったのでしょーか。今日の10時までに答え考えとけよ」
「はあ?んだそれ……」
「正解したら………お前の一番欲しい物やるよ」
「一番…………?」
「おう」

自惚れなんかじゃない。男鹿が一番欲しいモノはきっと俺しか与えられないモノ。
簡単に自分から差し出すほど安くない。だからこれが俺から仕掛ける最初で最後のチャンスだ。
いい加減けじめつけようぜ、男鹿。お前だってもうこんな関係我慢出来ないだろ?
怪訝な顔をする男鹿を放置してキッチンに向かい、夕食を作り始めた。

「…………これで答えに気付かねーなら……マジただの馬鹿だけどな」

一人言を呟き、男鹿をチラ、と見ると額に人差し指を当て真剣に考えていた。
うんうん唸る様子からしてなんとなく、あ、これ無理かもな、と悟るがまだ希望は捨てない。
あと4時間もあれば足りるだろう。
流石の男鹿でもそこまで鈍くないはず………でもアイツ変なトコで自惚れない奴だから。
無理かもなぁ………

「メシ出来たぞー、取りに来ーい」
「へいへい」

食べる時、男鹿は何も聞いてこなかった。
今まで通り普通に下らねーこと喋って、食べ終わるとまた一人で唸っていた。
先に風呂に入ってみたがあの様子じゃ無理だな。俺から手ぇ触ったんだぞ?
普通それだけで分かるだろ、俺が高校入って彼女作らなかった理由なんて。

「………分かれよ、男鹿」

拗ねた声はシャワーの音に掻き消された。風呂から上がり、男鹿が入れ違いに入っていく。
何かムカついたから思い切り睨みつけたら殴られた。
リビングに行くと空だったゴミ箱にクシャクシャにして捨てられた紙切れが入っている。
いつもは気にならないが、明らかに男鹿が使ったであろうペンが机に出ていたため、ついそれを拾い上げてしまった。

「なんだこれ……」

何やら走り書きのようにデカデカと『古市が彼女作らなかった理由!!』と書いてある。
その下には理由候補らしきものも。
なんだかんだ男鹿が可愛く思えるのはこういう所があるからだろうか。

「えーと………『理由①モテなかったから』………コロス」

理由②以降も同じようなことばかり書いてあり、やっぱり男鹿は何処までいっても男鹿だ。
流し見していた古市の目が一点で止まる。


『好きだから』


誰、とは書かれていないがきっと『俺を』と書きたかったのだろう。
そしてその文の上から大きく×がつけられていた。
一応答えには辿り着いてるのにまさか、とかそんなわけない、とか否定の言葉ばかり出てきて自信が持てないわけね………

「…ヘタレっつか………とんだチキン野郎だな」

風呂を上がる音が聞こえたため紙をゴミ箱に戻し、テレビのチャンネルを変える。

「古市ー、酒出しとけ」
「今日買ってきてねーよ」




あれから4時間弱。10時まであと数分。様子を見る限り結局分からなかったっぽい。バカだ。
古市は男鹿の隣に座るとソファの上で向き直る。それに気付いた男鹿が釣られて古市の方へ向いた。
明らかに困った顔をする男鹿に指を指す。

「ヒント………いるか?」
「…………む」

男鹿は黙って頷いた。

「……高校の時、ほんとは何回か告白されたことあったんだ。けど俺は全部断った。モテなかったわけじゃねぇ」
「うそつけ」
「マジだっつの………で、これヒントなんだけど分かるか?」

モテないわけじゃなかった。
告白してくれた子もそこそこ可愛かったしいい子みたいだった。
一度はOKしようかとも思ったけど、いつも直前で男鹿の顔がチラついてしまう。
半信半疑の男鹿はそれでも分からないようで………さらに深く溜め息を吐いた。
二つ目のヒントは核心だからあまり言いたくないがこれも仕方ないのかもしれない。
最初から俺が意地になってなかったら、こんなに長く焦れることもなかったわけで。

「男鹿。流石のお前でもこのヒントなら絶対分かるけど……いるか?」
「おう」
「お前が一番欲しい物を俺は知ってる。そんで、もし答えが分かったらそれをやるって言ったよな?」
「……………?」
「意味、分かるか?」

古市の言葉に目を見開いた。
今まで欲しいと思えば傍若無人に無理矢理手に入れてきた。
でもどう足掻いても手に入れることの出来なかったモノがある。
温かくて傍にいるだけで嬉しくなるモノ。それを古市は知っていると言った。
答えが分かればくれると。それはなんでだ?

「古市は………」
「うん」
「いや、古市も……?……俺と同じ?とか……」

はっきりしねぇな……けど、まぁいいか。

「答え合わせ、するか?」

男鹿の気持ちと俺の気持ちが同じかどうか。
そう笑った途端男鹿は隠すように右手で顔を覆った。期待と羞恥が過る。
そして古市の腕を引き寄せると耳元で再度確認する。

「いい、のか?」
「………ん」

男鹿が俺を好きになって、俺も男鹿を好きになって。
俺を諦めれないくせに我慢しようとする男鹿が愛しくて、その癖俺からきっかけを作ることも今より近寄ることもしなかった。
でもまさか我慢比べで男鹿に負けるなんて思わなかったけどな。

男鹿が息を吸い込む音が聞こえた。

「古市、ずっと中学の時から……いや、多分ダチになった時からずっと………ずっと……」
「…………うん」
「守りてぇし、誰にもやりたくねぇ。俺がお前の一番じゃねぇと嫌だ」

後頭部に大きな手を回し男鹿の肩口に押し付けられ、空いた腕で腰を抱きすくめられる。


「………好きだ、古市」
「………………お、」
「俺だけ見てろ、危ねぇから首突っ込むな、お前はへらへら笑っとけ、俺の前から消えるな、他の奴に近付くな、傍に居ろ。…………ずっと言えなかった」
「…………」

最初は気のせいだと思ってた。
男鹿の俺を見る眼に確かな熱が籠っていることを見ぬ振りをして、気のせいだと自分に言い続けた。
でもそうしている内に想いは伝染し始めていて。男鹿にあてられて好きになったようなものだった。
けどそれが悔しくて、男鹿が自覚するよりも早く俺の方が好きになって、だから俺からは絶対に動きたくなかった。
そんなしょーもない理由のせいで、馬鹿みたいに想い合ってもうお互い20歳が来ようとしている。
好きだ、と伝えたくて仕方なかった。
今も………

何故か泣きそうになる。
男鹿の肩口を濡らしてしまうかもしれない、けど耐えれなくて結局泣いた。


「………男鹿が好きだよ」
「古市……」
「俺も、男鹿が好きだ」
「………あんま言うな、どうにかしちまいそう」
「……いいぜ?……好きだから、な」
「……………っ…この……馬鹿っ」

衝動のままソファの上に押し倒し、唇を重ねた。
一度目は触れるだけの、二度目は深く互いに貪るように行為に没頭する。
純粋に気持ちいい。

「……ん……ふ、ぁ……はっ」
「………もっと、いいか?」
「ん………いい、けど…………何でそんな遠慮がちなわけ?」
「………雑に扱いたくねぇ」

らしくねーの、と笑うと照れ隠しで殴られた。痛くはなかった。

「言ったろ?正解したらお前の一番欲しいモノやるって。俺はもうお前のモノだから好きにしろよ」

優しいお前気持ち悪いし、と言うとやっぱり殴られた。痛くはなかった。

「じゃあ俺のモノをどう扱おうが俺の勝手だろうが」
「………ふはっ……お前らしいな」

言葉だけ見れば乱暴なのに、合間に落とされたキスは優しくて笑ってしまう。
やっぱり男鹿は男鹿だ。いつまで経っても根本的なものは何一つ変わらない。
きっとそれはこれからも変わらないんだろう。俺はそんな男鹿が、そんな男鹿だから、


「好きだよ」


目一杯抱き締めて祝福の言葉を君に。




「誕生日おめでとう、男鹿」




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今更男鹿誕。二人が20歳手前の未来捏造。
一度書くの止めたんですが・・・・やっぱり書きました。
楽しかった・・・・おがふる充したい。
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