悪魔の言葉に顔をしかめ、どういうことだ、と睨み付ける。
俺は男鹿を治すために契約破棄してぇのにふざけんなよ?いや勿論死にたくもないけど!

「お前の願いを叶えるために俺はその『男鹿辰巳』の元へ行った。最初は人為的に無理矢理そうするつもりだったんだが………」

古市と男鹿を交互に眺めてはっ、と馬鹿にしたように笑う。
それに古市同様ムカついた男鹿が殴ろうとするのを止めながら、言葉を待った。
悪魔がふわりと近付き男鹿の額に人差し指を突き立てると、男鹿は何か口を開きかけたがそのまま気を失ってしまった。
力が抜けきった男鹿の体を支えながら悪魔に掴みかかろうとするが避けられる。

「何っ……!」
「ちょっと寝てもらっただけさ」
「…………っ…」
「話の続きだが、俺がソイツの脳に手を加えようとした時見付けたんだよ」
「……何を」
「男鹿のお前に対する恋慕の情を、な?」
「……………………?」

今コイツは何て言ったんだ。あれ、俺って耳悪かったっけ。
そういや最近耳掃除忘れてたかもしれん。だって、じゃなきゃおかしいだろ?
男鹿が、

「俺はただ男鹿に潜在していた情の引き出しを開けただけだ。ソイツがいつも無意識に留めていた欲を吐き出させてみたが、結構面白かったぞ」

男鹿が、本気で俺を好きだなんて。
いつも一緒にいてあんなことしたいって思われてたなんて知って、俺はどうすりゃいいんだよ。
明らかに困惑している古市に悪魔はさらに面白がるように告げる。

「今回のことは記憶から消えているが、少なからず影響は受けると思うからせいぜいガンバレ?」

影響って何?まさかとち狂って告白とか……はないよな!
流石の男鹿も思い留まってくれるはずだ!…………多分。
あ!でも悪魔絡みに関してはこっちはヒルダさんっていうエキスパートがいんじゃん!
ヒルダがいる方へ勢いよく振り返る。

「何とかなりますよね!ヒルダさっ…………」

あるぇええええ!!??なんかいないんだけどおおおおお!!!
そういや途中から声しなくなってたわ!!
ヒルダがいた場所には一枚の紙切れが置いてあった。

「えーと………『話が長くなりそうだから私は坊っちゃまにミルクを差し上げてくる。帰って来なくても気にするな。少しドラマがな……』」

あの人完全べる坊にミルクあげたらドロドロの昼ドラ見るつもりだよ………!!
俺のことなんかやっぱどーでもいいですよねー!!!
心の叫びを他所に悪魔は呑気に背伸びをしながら立ち上がり、窓を開け放った。

「俺はもう行くぞ。あぁ、そうだ………ソイツ、あと数分で起きるぞ。じゃあな」
「え、ちょっ」

逃がすまいと腕を伸ばしたが掴むことは叶わず、逃げられてしまった。
仕方なく窓を閉め、気を失ったままの男鹿の傍に腰掛ける。
顔の力が抜けきった男鹿はいつもより幼く見えて、そう言えば最近はまともにこう言った顔は見てなかったかもしれない。
一緒に居ることや部屋で過ごすことが減ったからだろうか。だから男鹿は………


『お前は俺をどうしたいんだよ』
『俺のにしたい』
『じゃあ、いつからそう思うようになったんだ?』
『お前が近くに居ないとき』

そう答えた男鹿の声が妙に切ない色だったのはそういうことだったのか?
今まで一度だってそんな風なこと言わなかっただろ。
俺がいなくて寂しいとかも言わずにずっと自分の中に溜め込んで………馬鹿だな。

「俺に固執し過ぎだよ、お前は」

男鹿の頭を撫でると目蓋がうっすらと開けられる。

「起きたか?」
「古市………?なんで俺の部屋にいんだ?」
「別に来たかったから来ただけ」

そう言い返すと男鹿はキョトンと数回瞬きすると、嬉しそうに笑った。
久しぶりに男鹿のこんな顔を見たと思うより先にしまった、と口に手を当てる。
駄目だ。男鹿の気持ちを知る前なら一緒に笑えたのに、今は駄目だ。

「古市?顔赤ぇぞ」
「なん、でもな………、っ!」
「熱でもあんのか?」

額に男鹿の手を置かれ、心臓がドクンと音を立て脈拍数を増やした。
男鹿は今どんな気持ちで俺に触ってるんだろう。
いや、でも記憶がないから多分俺のことが『好き』っていう認識はまだしてないはずだ。
……良かったじゃん。まだ分かってないってことはこれから男鹿がソレに気付かないように振る舞えば、今日みたいに迫られることもないし?
俺の貞操が守られて万事解決じゃねーか。そう思うのに、何故か胸に穴が空いたように切ない。
自身の揺れた瞳に気付かないまま男鹿を無意識に上目使いで見つめる。

「…………っ」
「!」

思わず男鹿は古市を抱き締めていた。
これ以上この目を見ていると何かしてしまいそうで、怖い。
理由は分からないが、何となく長く見ていては駄目な気がした。

「…………………」

これくらい今までもよくあった些細な触れ合いのはずなのに、何故か違うもののように思える。
それは男鹿の気持ちを知ったからそうなのか、分からない。
ただ今言えるのは、男鹿が俺に触れてくる意味を知った上でそれを許してしまっていることは事実で、最初に迫られた時より抵抗感がなくなっているということだ。
そして最初の時あんなに抵抗したのは多分、いきなり過ぎたし何より冗談のような気がしたからだ。
けど今は………

「ふるい、ち?」
「……………」

背中に弛く腕を回せば男鹿の体温が急上昇したのが服越しに伝わる。
男鹿に抱き締められると落ち着かない、胸が痛くなる、最悪だ。最悪なのに安心する。
さっきと同じように腕を回し合っているのに男鹿からは戸惑う様子が見受けられるだけで、『好き』という言葉はない。
それでいいはずなのにどうしてこんなに胸が苦しいんだ。俺は男鹿を好きじゃない。
だけど男鹿には『好き』って言って欲しいなんて、そんな馬鹿なことない。
けど、悪魔に関与されてない状態でお前から聞きたい。

「古市」
「…………なんだよ」
「なんか今すげぇ心臓が苦しいんだけど、これなんだ?」
「…………え……うん…なんだろうな」
「あと古市見てたら何か落ち着かねぇんだけど」
「うーん…………」
「くっ付いてたら落ち着くけど落ち着かん」
「…………………」
「古市は知ってんだろ?」

待て男鹿、確かに俺はお前が自分の気持ちに気付いてもう一度言ってくれればいいな、とか思ったけども!
流石に俺から教えるとかねーから!んなハズい真似出来るか!!!
つかそうだよねー、お前分かんねぇことは俺に聞くもんな……
けど知らないとか言ってもし美咲さんとかにでも聞かれたら確実に自覚する。
俺はお前に自力で自覚して欲しいんだよ。

「教えろよ、古市」
「!」

腰に回された腕に力が込められ更に引き寄せられる。
心臓が、煩い。きっと男鹿にも俺の鼓動が伝わってる。
苦しい、苦しい、苦しい。
苦しい…………………


「古市」

熱っぽい声で呼ばれれば体が震え、その声で、その顔で、もう一度俺に告白しろよ、と。
本当は分かってた。最初はムキになってただけだ。嫌だなんて思ったことなんか一度もない。


俺の負けだよ、男鹿。


「……それはな、『――』って言うんだよ」
「……………!」


お前の引き出しが開けられた時、きっと俺の引き出しも開けられてた。
多分俺も男鹿と同じで寂しかった。その理由に気付かない振りをして誤魔化していたのかもしれない。
けどもう俺の負けだ。



「俺も男鹿が好きだから、分かるよ」



だから俺の願いは


「『男鹿に俺を見て欲しい』」


今度はお前が叶えて。







―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

お久しぶりです!!というかこれずっと書いてました。長い、ですよね・・・・はい。
一番無自覚なのは古市です。無駄に長くてまとめられてない。
これがスランプか(〃^ω^〃)←
一番無自覚なのは古市です。
古市がよく分からない子になってしまった。こんなおがふるでも有りですか?
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