例えば人混みの中。

「何やってんだ、ちゃんと掴まっとけ」
俺をリードしてくれる。
手を引っ張ってくれる。
それが当然のように。


例えば女の子に振られたとき。

「お前には俺がいんだろ?ちっせぇこと気にしてんじゃねーよ」
優しく接してくれる。
頭を撫でて慰めてくれる。


例えば不良に絡まれたとき。

「俺のモンに手ぇ出すんじゃねぇ」それが当たり前のように護ってくれる。

「ありがと」
そう言えば笑ってくれる。



例えば泣いたとき。

「大丈夫か?」
そっと抱き締めてくれる。



普段はアホみたいなこと言い合ってアイツに頭を叩かれたり。
全然優しくない。

それなのにふとした時にちょっとした優しさがある。
俺にはそれが分からない。

男鹿に何て言えば良いのか分からなくなる。


「古市?」
「……………」

今だってそう。
俺に元気がないからか髪をすいてくる。
俺は抵抗しない。

「何でもねぇよ」
「ふーん。なぁ、今日俺ん家寄らねぇか?」
「今日も、の間違いだろ」
「おぉ」


期待してしまう。
アイツの態度に。

「男鹿のせいだ」
「何が」
「別に!!それより今日もゲーム?」
「いや、今日は………」

男鹿の顔がほのかに赤くなった気がした。
夕陽の当たり具合でそう見えただけかもしれない。

「…………」
「……………」

この無言の空間に何か意味があるような気がして。
俺は男鹿の横顔をチラ見する。



男鹿の家でこれから何を言われるのかなんて想像もしなかった。


まさか、この期待があながち間違っていたわけじゃないなんて。

思っていなかったから。
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